著者
和田 治 飛山 義憲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.163-167, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
30

人工膝関節全置換術のリハビリテーションは術前期,急性期,回復期,維持期に分けることが出来る.これまで諸外国を中心に各々の時期のリハビリテーションに関するエビデンスが蓄積されてきている.具体的には術前からの患者教育を含めたリハビリテーションが術後の期待値調整や不安の軽減に有効であることが示唆されている.急性期から回復期では低周波刺激装置を用いた筋力トレーニングが術後の筋力回復に効果的であることが報告されている.一方,回復期から維持期では,身体活動量の向上が目標の1つとなるが,身体活動量向上のための介入方法に関するエビデンスは極めて少ない.当院ではこれらのエビデンスを元に,術前患者教育を含めた介入,術後翌日からの低周波刺激を併用した筋力トレーニング,回復期から維持期での身体活動量向上を目的としたウォーキングプログラムを実施してきた.本論文ではシンポジウムにて発表した内容をまとめることとする.
著者
飛山 義憲 藤野 雄次 高橋 哲也 藤原 俊之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.353-361, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
24

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)前後のリハビリテーションプロトコル(以下,プロトコル)の実施状況およびその内容を調査することを目的とした。【方法】対象はTKA 前後のリハビリテーションを実施している442 施設とし,TKA 前後のプロトコルの有無とその内容を問う自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。回答の記述に加え,手術件数および地方区分によるプロトコルの実施割合の違いを検討した。【結果】術前のプロトコルの実施割合(45.4%)は術後(87.6%)に比べ低く,術後プロトコルは手術件数の四分位範囲でもっとも少ない群に比べもっとも多い群,次いで多い群が有意に高い実施割合を示した。術前後ともに地方区分による有意な違いは認めなかった。【結論】術後に比べ術前のプロトコルを実施している施設は少なく,術後は手術件数によるプロトコルの実施割合の違いがあることが示された。
著者
和田 治 赤山 僚輔 飛山 義憲 北河 朗 丸野 英人 岩崎 安伸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101867-48101867, 2013

【はじめに,目的】前十字靭帯(ACL)損傷は,スポーツ膝傷害の中でも頻度が高い.ACL再建術後の目標は受傷前の運動レベルに復帰し,復帰したスポーツにおいて全力でプレー出来ることである.ACL再建術後の運動復帰および復帰後の全力プレーには,再建された膝機能に加え,再受傷に対する恐怖心やスポーツに対する自信などの心理的要因が重要であると考えられるが,これらの項目とスポーツ復帰の関連性を包括的に検討した研究は見当たらない.そこで本研究はACL再建術患者を対象とし,膝の機能面と再受傷に対する恐怖心,スポーツに対する自信とACL再建術患者のスポーツ復帰状況との関連性を明らかにし,さらにこれらの要素がスポーツ復帰後の全力プレーに与える影響を検討することを目的とした.【方法】対象は当院にてACL再建術を施行された患者のうちアンケート調査に同意の得られた156名とした.まず,受傷前,術後の活動レベルの指標としてTegner Activity Scoreを使用した.また,膝機能の評価としてIKDC Subjective Scoreを用いた.心理的要因に関しては,再受傷に対する恐怖心,スポーツに対する自信,全力プレーを評価するため,Mohtabi ,Websterらの質問紙を日本語訳・引用しVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価した.Tegner Activity Scoreに関しては受傷前/術後の両方を,IKDC Subjective Score,恐怖心,自信,全力プレーのVASは術後の状態のみ聴取した.復帰の基準は,受傷前,術後のTegner Activity Scoreを用い,対象者を復帰可能群と復帰不可能群に分けた.次にIKDC Subjective Score,再受傷に対する恐怖心のVAS,スポーツに対する自信のVAS,全力プレーのVASを対応のないt検定を用いて各群で比較した.さらに,復帰可能群を対象とし,従属変数を全力プレーのVAS,独立変数をIKDC Subjective Score,再受傷に対する恐怖心のVAS,スポーツに対する自信のVASとした重回帰分析を行った.なお,手術時の年齢,性別,術後の経過期間,受傷前Tegner Activity Scoreを調整変数として投入した.有意水準はすべて5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,対象者には本研究の主旨,目的,測定の内容および方法,安全管理,プライバシーの保護に関して書面および口頭にて十分な説明を行い,署名にて同意を得た.【結果】アンケートに協力の得られた156名のうち,受傷前のTegner Activity Scoreが4以下の者および社会的な理由により活動レベルが低下した者を対象から除外した結果,分析を行った対象者は140名となった(年齢25.8±12.0歳,男性57名/女性83名,身長165.2±8.6cm,体重61.1±12.9kg).対象者全体の復帰率は82.1%であり,復帰可能群115名,復帰不可能群25名であった. IKDC Subjective scoreに関しては,復帰可能群で有意に高い数値を示した(p<0.01).一方で,再受傷に対する恐怖心およびスポーツに対する自信では,両群の間に有意な差は認められなかった.また重回帰分析の結果,IKDC Subjective Score,再受傷に対する恐怖心のVAS,スポーツに対する自信のVAS全てが有意な項目として抽出され(p<0.01),全力プレーのVASにはスポーツに対する自信のVASが最も影響を与える結果となった.【考察】IKDC Subjective Scoreを復帰可能群と復帰不可能群と比較すると,復帰可能群で有意に高い結果となった.したがって,復帰可能群では復帰不可能群よりも優れた膝機能を獲得していることが明らかとなり,ACL再建術後のスポーツ復帰には膝機能の獲得が重要であると予想される.一方で,再受傷に対する恐怖心およびスポーツに対する自信に関しては復帰可能群と復帰不可能群では有意な差は認められず,これらの項目はACL再建術後のスポーツ復帰には影響を与えないことが示唆される結果となった.さらに,復帰可能群を対象とした重回帰分析の結果,スポーツ復帰後の全力プレーには,膝機能,再受傷に対する恐怖心,スポーツに対する自信の全てが影響を与えることが明らかとなり,さらに膝機能よりもスポーツに対する自信が重要となることが示唆された.スポーツに対する自信の低下はスポーツ時の消極的なプレーにつながり,全力プレーを阻害していると予想される.本研究結果より,ACL術後のスポーツ復帰にはまず膝機能が重要となるが,復帰後に全力プレーを可能にし,プレーの質を向上させるには,膝機能に加え自信を高めていく必要があることが示された.【理学療法学研究としての意義】現在まで,ACL再建術後の膝機能および心理的要因を包括的に検討した研究は認められない.本研究は今まで明らかにされていなかった,ACL再建術後の膝機能および心理的要因がスポーツ復帰におけるどの段階で重要となるかを示した点において,臨床におけるリハビリテーションを行う上で1つの示唆を与えるものであると考える.
著者
飛山 義憲 谷口 匡史 紙谷 司 和田 治 水野 清典
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.263-271, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
29

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)後運動機能について標準的な入院期間のプログラム(Standard Program;以下,SP)に対する早期退院プログラム(Early-discharge Program;以下,EP)の非劣性の検証を目的とした。【方法】二施設間前向きコホート研究とし,対象は初回TKA を行うSP 施設59 名,EP 施設45 名とした。主要アウトカムは術後6 ヵ月のTimed Up & Go test(以下,TUG),副次アウトカムは同時点の膝関節可動域,膝関節伸展筋力,患者立脚型膝機能とした。TUG は非劣性の検証を,副次アウトカムは施設間の差の検証を行った。【結果】傾向スコア・マッチングにより患者背景を調整した43 ペアにおいて,EP 施設のTUG の非劣性が示され,副次アウトカムはいずれも有意差を認めなかった。【結論】TKA 後早期退院プログラムは標準的な入院期間のプログラムに対して,術後運動機能の回復は劣らないことが示された。