著者
澤邉 紀生 飛田 努
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-67, 2009 (Released:2015-11-17)
参考文献数
17

マネジメントコントロールシステム(MCS)は,経営目的を達成するために利用されている情報ベースの仕組みであり,管理会計システムに基づく会計コントロールはその中軸に位置し,経営理念を基礎とした理念コントロールや人間関係に基づく社会コントロールとともに組織の行動パターンに影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,日本企業におけるMCS の利用実態を明らかにするためにサーベイ調査を実施し,組織文化によってMCS がどのように組み合わされて利用されているのか,MCS が組織成員の心理的状態に及ぼす影響を手がかりにその実態を分析した。分析の結果,組織文化の違いによって,組織成員の心理的状態や企業業績に影響を及ぼしているMCS の組み合わせが異なることが明らかになった。具体的には,柔軟性を重視する組織文化を有する企業群では,理念コントロールや社会コントロールの役割が大きく,安定や統制を重視する組織文化を持つ企業群では,理念コントロールや社会コントロールに加えて会計コントロールも重要であることが示された。
著者
飛田 努 松村 勝弘 篠田 朝也 田中 伸
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-17, 2014

本稿は,2010年夏に東京証券取引所第1部上場企業を対象として実施したアンケート調査から得られた結果をもとに,日本企業の経営管理システムと企業業績との因果関係を分析したものである。その結果,以下の点が明らかになった。(1)企業価値や利益を重視することは人事制度や業績連動給与に正の影響を及ぼす。(2)人事制度や業績連動給与といった評価システムが組織成員のコミュニケーションに正の影響を及ぼす。(3)社員のコミュニケーションがそのモチベーションに正の影響を及ぼす。(4)これらのシステムとは独立して,価値観を共有することは組織成員のモチベーションに正の影響を及ぼす。(5)サンプル全体ではモチベーションの向上により,業績(ROA)に正の影響を及ぼす。
著者
戸田 龍介 井原 理代 鵜池 幸雄 浦崎 直浩 金子 友裕 岸保 宏 工藤 栄一郎 佐藤 信彦 飛田 努 仲尾次 洋子 成川 正晃 丸山 佳久 姚 小佳
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本の農業の真の発展のためには,農協に全面依存し記録へのインセンティブが働いていない小規模兼業農家にかわって,農業法人や6次産業化を目指す事業体,さらには農業関連上場企業がそれぞれ農業を中心的に担っていく必要がある。この中でも,地域振興への貢献可能性からは,6次産業体が最も期待される。そして,このような事業体に,従来のような補助金ではなく,投資効果が厳しく問われる農業ファンドの資金が投入されれば,投資効果の説明のためにも,複式簿記に基づく財務諸表の作成・報告が必須となる。本研究では、このような関係においてこそ,農業発展のために複式簿記が果たし得る現代的役割が存することを明らかにした。