著者
澁谷 弘利
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-14, 2016-11-30 (Released:2017-07-04)
参考文献数
29

1990年代以降,多くの事例が加工組立型産業における原価企画として研究されている。しかし,原価企画による目標原価から標準原価へそして量産への流れのため,都度設計を伴うような個別受注生産型企業や中小企業においては不向きと考えられる。本論文では上記のような個別受注生産型企業においても総合的原価管理の中で原価企画を実施している状況と原価企画がもたらす疲弊を回避し,企業経営に積極的に効果をもたらす方法について述べる。
著者
足立 洋 篠原 巨司馬 潮 清孝
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-12, 2011 (Released:2015-11-17)
参考文献数
32
被引用文献数
3

近年,日本企業の管理会計実践事例として,ライン部門に利益責任を与えるケースが多数報告されている。本稿は,セーレン株式会社の事例検討を通じて,プロフィットセンター(PC)化されたライン部門における利益創出のメカニズムを考察するものである。考察の結果,製造部門が利益責任を負うことにより販売部門の振替価格交渉での交渉力が強化されていると同時に,製品の競争優位の源泉となる生産管理システムの存在が製造部門にも強い交渉力を与えており,これら2つの力の間の緊張関係が利益創出に強く関わっていることが明らかになった。
著者
尻無濱 芳崇
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.39-51, 2014 (Released:2015-05-29)
参考文献数
32
被引用文献数
1

介護事業を営む組織を対象に,組織が公共の福祉への貢献を重視する程度(公益志向)によって業績測定尺度の利用を変えるかどうかを調査した。本研究では2つの仮説の検証を試みた。第1に,公益志向が強い組織では組織の社会的使命の達成を測定する尺度(アウトカム尺度)の利用確率が高まる。第2に,公益志向の強い組織では財務的業績尺度の重視度が低下する。千葉県の介護事業者を対象にした質問票調査から得たデータをもとに仮説を検証した結果,公益志向の強さがアウトカム尺度の利用に与える影響は限定的であり,公益志向の強い組織ほど財務的業績測定尺度を重視していない傾向が観察された。
著者
鈴木 新
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.13-22, 2011

社会の視点からわが国の管理会計を考察するため「新しい会計史」のアプローチを採用し,原価企画の中でも特にVE(Value Engineering)がいかに普及したのかという問いを立て,社会学における制度概念によりこれを解釈する。定性的資料の分析から,VEは「近代化」および購買職務の権限強化の正統性により購買部門から組織内外に拡散したこと,およびその中で各種管理技術との区別が曖昧なまま伝播したことにより,管理技術との相互浸透において柔軟に正統性を変えながらそれら技術の中に浸透したことの可能性を指摘する。
著者
青木 章通 佐々木 郁子
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.3-16, 2011

本研究は,日本の小売業者267社に対する質問票調査の回答結果に基づき,プロモーション手法であるポイント制度と値引き販売が顧客の年間購入額の増加および取引の長期化に及ぼす影響について分析した。本研究の目的は,回答結果の分析を通じて,プロモーション手法の費用対効果の測定やレベニュードライバーの解明に貢献する事項を導き出すことである。その結果,両プロモーション手法が顧客の年間購入額の増加および取引の長期化に貢献するための条件には違いがあること,両プロモーション手法の併用が顧客の年間購入金額の増加および取引の長期化に正の影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
足立 洋 篠原 巨司馬
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.73-80, 2008 (Released:2015-11-17)
参考文献数
3
被引用文献数
2
著者
足立 洋 篠原 巨司馬
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-41, 2016-11-30 (Released:2017-07-04)
参考文献数
58
被引用文献数
1

本稿では,ケース・スタディの方法を用い,部門における固定的な予算目標の達成と,事業環境の変化に柔軟に対応するための予算修正がどのように両立されうるのかについて,業績評価上の問題がいかにして克服されうるかという点とあわせて考察した。本稿で考察したケースでは,予算目標は期中固定されていたが,一方で予算と行動計画は月単位で修正されていた。そこでは,この修正に限度が存在することによる管理者のモラール低下のリスクを抑制するため,主観的業績評価が採用されていた。
著者
近藤 大輔
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.35-44, 2017-07-10 (Released:2018-02-22)
参考文献数
14

近年,原価企画がサービス業でも利用されていることが指摘されている。製造業で生成・発展してきた原価企画が,本当に,サービス業で機能するのであろうか。そこで,本研究ではサービス業としての性質を持つ株式会社ぶどうの木のレストラン事業部を考察した。その結果,レストランサービスにおいても源流管理,職能横断的チーム活動,原価削減方法としてのVE,原価企画のフォローアップが効果的に機能していることが分かった。さらに,製造業と比較して,サービス業では原価企画のフォローアップとコンセプト一貫性のある原価企画活動がより重要になる可能性があることが明らかになった。
著者
丸田 起大 市原 勇一 澤邉 紀生
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.95-106, 2018

<p>不動産再生事業を営むサンフロンティア不動産株式会社におけるアメーバ経営をとりあげ,業種の特性や経営者の考え方がアメーバ経営の仕組みや実践にどのように反映されているか紹介する。歩合給のようなインセンティブ報酬が支配的な不動産業において,「利他」の精神を基盤とする経営実践がアメーバ経営によってどう実現しているのかを示すことで,アメーバ経営の類型のバリエーション増大に貢献する。また,サンフロンティア不動産の部門別採算制度では,社内ファンドのような仕組みを活用して,努力せずとも得られる固定的な収益(埋没収益)を部門の業績評価から除外するような工夫が行われていることを紹介する。</p>
著者
李 燕
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.23-40, 2011 (Released:2015-11-17)
参考文献数
33

本論文では,一企業における新事業ドメインの展開に関する事例に基づいて,管理会計が戦略にどのような役割を果たすかを明らかにすることを目的とする。伝統的に,管理会計は戦略策定においては代替案の評価や,決定された戦略の有効かつ効率的な実行を支援するものとして考えられ,管理会計は戦略に対して受動的な役割を果たすと認識されてきた。しかし,近年における研究では,「戦略化」という名のもとに,管理会計が戦略的決定を引き起こしたり,戦略の具体的展開を導くような,管理会計のより能動的な役割が主張されている。本研究における事例においても,管理会計のこのような側面が観察された。管理会計は,外部環境の変化が生じたときに,それを組織員に意識させ,戦略的活動を引き起こす文脈として作用し,また,戦略の具体的展開のための枠組みを提供していた。さらに,本研究は戦略化と管理会計の関係を考察する際に,エネーブリング・コントロール(Adler and Borys, 1996)の枠組みが,有用な視点を提供してくれることを明らかにした。
著者
澤邉 紀生 飛田 努
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-67, 2009 (Released:2015-11-17)
参考文献数
17

マネジメントコントロールシステム(MCS)は,経営目的を達成するために利用されている情報ベースの仕組みであり,管理会計システムに基づく会計コントロールはその中軸に位置し,経営理念を基礎とした理念コントロールや人間関係に基づく社会コントロールとともに組織の行動パターンに影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,日本企業におけるMCS の利用実態を明らかにするためにサーベイ調査を実施し,組織文化によってMCS がどのように組み合わされて利用されているのか,MCS が組織成員の心理的状態に及ぼす影響を手がかりにその実態を分析した。分析の結果,組織文化の違いによって,組織成員の心理的状態や企業業績に影響を及ぼしているMCS の組み合わせが異なることが明らかになった。具体的には,柔軟性を重視する組織文化を有する企業群では,理念コントロールや社会コントロールの役割が大きく,安定や統制を重視する組織文化を持つ企業群では,理念コントロールや社会コントロールに加えて会計コントロールも重要であることが示された。
著者
関 利恵子 安城 泰雄
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.35-47, 2016 (Released:2016-12-08)
参考文献数
22

本稿では,株式会社駒ヶ根電化におけるMFCA 社内研修会でのヒアリング調査及びMFCA 成果発表会での報告をもとにMFCA の継続的導入の要因とMFCA をマネジメントツールとして展開する可能性について検討した。本稿の考察から,MFCA の継続的導入要因としては,MFCA の有用性をトップが認識していた点,従業員が一般的な活動としてMFCA を実施する素地ができていた点などが示された。また,MFCA の継続的な導入が,従業員の作業モチベーションを向上させたり,MFCAの一連の活動が組織の結束力を高めるといった効果があることも明らかになった。こうした効果にも着目し,本稿ではMFCA の新たな展開として,バランスト・スコアカードで記述した戦略マップとMFCA を関連づけて,マネジメントツールとしての可能性を検討した。
著者
西居 豪 近藤 隆史
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.47-60, 2015 (Released:2015-11-27)
参考文献数
39

本稿はイネーブリング(enabling)概念を分析枠組みに適用した管理会計領域の経験的研究の動向を紹介したものである。具体的には,同概念を用いて解明の試みられている現象と得られている知見を整理するとともに,今後の検討課題を試論的にまとめている。
著者
佐々木 郁子 岡野 知子
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-23, 2013

東日本大震災後,BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)/BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)の有効性が注目されている。一方,被災した企業は多大な労力と資金を費やし事業再開を果たしている。本稿では,BCPを利用して事業継続を成功させた事例と,政府の被災企業支援の補助金の枠を越えて将来の発展に向けた設備投資と減災のための設備投資によって事業再開を果たした事例を取り上げる。これらの事例から事業継続・事業再開には,BCP/BCMのような危機管理システムは限定的ではあるが有効であること,事業再開までの従業員のモチベーション維持と危機を見据えた企業間の協力関係,設備投資のための資金計画・融資協力をしておくことが重要であることが明らかになった。
著者
頼 誠 淺田 孝幸 塘 誠
出版者
公益財団法人 メルコ学術振興財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-30, 2012

純粋持株会社(以下HDと略す)制をとったものの業績の上がらない企業がある。その原因は,本社の統治のための経営力としてのパワーが弱く事業会社が本社の意図しない行動をとることに起因する可能性がある。本稿のテーマは,事例研究を通じて得られた結果をもとに,各事業会社がその事業内容に応じて自主的にかつ事業最適をねらって行う事業力としての遠心力に対抗できるグループ全体を統治する力としての求心力をどのように強化すればよいかを提案することである。HD制を採用している企業グループを観察すると,事業間での関連性が少なく事業毎に別々の意思決定をする方が合理的な多角化企業,M&Aなど組織再編を行う必要性の高い企業,さらにはグローバル企業で各地域や国を単位に事業構造を切り分けている企業において採用している場合が多いように思われる。しかし,それらのグループ全体を統括するHDは,一方では,人,モノ,カネ,情報などの経営資源を,必要に応じてHDの支配下に置けるようなマネジメント・コントロールの仕組み(戦略に対応した方針設定・業績モニター・業績評価・目標整合的動機づけ)が必要である。 <BR>本稿では,小売業のHDであるイオンとセブン&アイHDの事例から,なぜHD化の必要があったのかを明らかにすると共に,分権化の行きすぎが企業の業績に負の影響を与える危険性のあることを説明したい。そして,その弊害を緩和するために,事業会社間に横串を刺す仕組みや,管理機能の重複を共通化する仕組み等について検討する。さらに,「選択と集中」のためには本社が統治能力をもつことや,人の異動と資金調達力をHDが握ることが重要であること等,いくつかの事例から得られた知見をまとめることにしたい。