著者
岡田 智 田邊 李江 飯利 知恵子 小林 玄 鳥居 深雪
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-35, 2015-03-25

本研究では、WISC-IVの解釈にかかわる実践的課題を概観し、検査の測定値の解釈を裏付けるため、そして、検査の測定値にあらわれない特性や状態を把握するための検査行動のアセスメントの構築が必要であることを示した。これまで作成されたアセスメントツールを参考にしつつ、さらに、発達障害の特性の把握の視点も新たに取り入れ、検査行動チェックリストを作成した。事例研究では、2事例のみであったので一般化することには限界があるが、検査行動アセスメントの臨床的有用性について確認ができた。しかし、検査行動チェックリストを臨床適用するためには、その尺度自体の精度について検討する必要がある。今後の課題として、臨床的有用性を重要な観点としつつ、「セッション内妥当性」「セッション外妥当性」を検証していくことが挙げられた。
著者
飯利 知恵子 岡田 智
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.31-34, 2014-03-25

2011年に国際的に最も頻繁に活用されている心理検査であるWISCの第4版(以下WISC-IV)が出版された。本稿では、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders:以下ASD)のWISC-IVプロフィールをADHDの重複の有無に焦点を当てて検討した。結果、本研究では従来報告されていたものとは異なるプロフィールが得られた。データ収集の際のASD判断基準の曖昧さなどいくつか課題も見られ、今後追って検討していくことが必要であった。また、ASDをはじめとする発達障害のある子どもを理解するためには、検査における各臨床群に特徴的な認知プロフィールとともに、日常場面や検査場面での行動観察や聞き取り等、質的なアセスメントも含めて幅広い観点から捉えること、WISC-IVの解釈システムの構築が必要であることが議論された。
著者
岡田 智 小林 玄 辻 義人 鳥居 深雪 飯利 知恵子 田邊 李江
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,日本版WISC-Ⅳの解釈システムの構築のために,発達障害の子どもにWISC-Ⅳを実施し,検査中の行動観察,日常生活における生態学的情報についても収集した。統計解析と事例研究を用いて分析した結果,ASD及びADHD特性をWISC-Ⅳ測定値で判断することには限界があり,ワーキングメモリー指標がADHDの不注意を反映しにくいことなど解釈上での留意点が明らかになった。また,解釈の際には,WISC-Ⅳの測定値だけでなく,CHCモデルによる分析,また,ASD特性やADHD特性を踏まえた生態学的観点,検査中の行動や課題解決などの質的情報も含めた総合的解釈が重要であることが示唆された。
著者
岡田 智 飯利 知恵子 安住 ゆう子 大谷 和大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.254-267, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
43
被引用文献数
3

本研究ではASDのある子ども116名のWISC-IVのデータを収集し,従来のWISC-IVの4因子モデルとCHC理論に準拠した5因子モデルを想定した確認的因子分析を行い,その適合度及び下位検査構成を検証した。どのモデルも高い適合度を示したが,「結晶性能力」「視覚空間」「流動性推理」「短期記憶」「処理速度」で構成されるCHCモデルが最も当てはまりがよかった。下位検査構成では「行列推理」が「視覚空間」に負荷する結果となり,海外における因子分析の結果とは異なるものであったが,日本における先行研究と一致した。また,5つのCHCモデルによる合成得点を用いて,クラスター分析を行い5つのクラスターを抽出した。言語能力-視覚空間能力の優位性と処理速度の低さに特徴がある自閉性障害及びアスペルガー障害で従来から報告されてきたプロフィールが確認されたものの,「短期記憶」や「処理速度」に強みがあるクラスターも同定された。また,「視覚空間」と「流動性推理」の得点に乖離があるクラスターもあり,WISCモデルよりもCHCモデルでASDのある子どもの個人内差をより詳細に把握できることを示した。