著者
岡田 智 水野 薫 鳥居 深雪 岡田 智
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本版WISC-IIIの練習効果について調べたが、1年以内の再検査では(N=27)、各IQで7.5~10.2ポイントの上昇が見られた。1年以上2年以内では(N=71)、動作性IQと全検査IQが4.0、5.0ポイント上昇した。しかし、2年以上間隔が開くと(N=39)、検査結果に変動は見られなかった。再検査間隔と得点上昇には相関関係も見られ、1、2年以内の再検査は練習効果が生じるのは明らかであった。また、広汎性発達障害におけるDN-CASとWISC-IIIとの関連を調べ合成得点間の関係や因子構造を明らかにしたが、WISC-IIIとDN-CASとの関係が分かり、バッテリーの際の解釈の指針が得られた。
著者
岡田 智 田邊 李江 飯利 知恵子 小林 玄 鳥居 深雪
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-35, 2015-03-25

本研究では、WISC-IVの解釈にかかわる実践的課題を概観し、検査の測定値の解釈を裏付けるため、そして、検査の測定値にあらわれない特性や状態を把握するための検査行動のアセスメントの構築が必要であることを示した。これまで作成されたアセスメントツールを参考にしつつ、さらに、発達障害の特性の把握の視点も新たに取り入れ、検査行動チェックリストを作成した。事例研究では、2事例のみであったので一般化することには限界があるが、検査行動アセスメントの臨床的有用性について確認ができた。しかし、検査行動チェックリストを臨床適用するためには、その尺度自体の精度について検討する必要がある。今後の課題として、臨床的有用性を重要な観点としつつ、「セッション内妥当性」「セッション外妥当性」を検証していくことが挙げられた。
著者
米田 英嗣 鳥居 深雪 神尾 陽子 Just Marcel Adam
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、小説などの物語を用いて自閉スペクトラム症(ASD)をもつ成人および児童における日常生活スキルプログラムを開発することを目的とした。紙面上で、AQ、対人応答性尺度(SRS-2)、現代文の評論文と小説文に解答した。PC上で、言語を用いた心の理論課題(White et al., 2011)、図形を用いた心の理論課題(Castelli et al., 2000)に回答をした。その結果、プログラムの実施前後でパフォーマンスを比較した結果、図形の動きに対して心的状態を帰属する傾向が高くなることがわかった。言語を用いたトレーニング効果が非言語性の心の理論課題に転移し、成績の向上が認められた。
著者
岡田 智 小林 玄 辻 義人 鳥居 深雪 飯利 知恵子 田邊 李江
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,日本版WISC-Ⅳの解釈システムの構築のために,発達障害の子どもにWISC-Ⅳを実施し,検査中の行動観察,日常生活における生態学的情報についても収集した。統計解析と事例研究を用いて分析した結果,ASD及びADHD特性をWISC-Ⅳ測定値で判断することには限界があり,ワーキングメモリー指標がADHDの不注意を反映しにくいことなど解釈上での留意点が明らかになった。また,解釈の際には,WISC-Ⅳの測定値だけでなく,CHCモデルによる分析,また,ASD特性やADHD特性を踏まえた生態学的観点,検査中の行動や課題解決などの質的情報も含めた総合的解釈が重要であることが示唆された。
著者
鳥居 深雪 杉田 克生
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.160, pp.124-133, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第160集『発達障害児における脳機能解析』杉田克生 編"Analysis of Brain Function in Children with Developmental Disorders" Report on Research Projects No.160学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害等の発達障害の一群は、状態像が多様である。DSM-Ⅳに基づく診断名が、必ずしも子どもの状態を的確に示していない。そこで、認知機能の視点から子どもたちの困難さを検討した。実行機能(executive functions)は、意志決定や抽象的思考、合目的的な活動を円滑に進めるためのさまざまな高次機能を包括的にとらえる概念である。LD、ADHD、高機能広汎性発達障害等では、実行機能に障害が認められることが指摘されている。LD、ADHD、高機能広汎性発達障害等の診断を受けた4人の男児(小学校4~5年生)について、実行機能の構成要素の一つであるワーキングメモリの状態を分析した結果、不注意の症状があると、ワーキングメモリの状態は安定しないこと、読字障害の症状があると有意味と無意味でワーキングメモリに差が出ることが判明した。