著者
今西 純一 奥川 裕子 金 鉉〓 飯田 義彦 森本 幸裕 山中 勝次 小島 玉雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-14, 2011-08-31
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

サクラ類は全国に広く植栽され,地域の重要な景観資源となっている。サクラ類を適切に管理するために,活力度の評価が必要となるが,開花期の着花状況に基づく活力度評価の方法は定まっていない。そこで,本研究は,奈良県吉野山のヤマザクラを対象として,着花状況に関する 4 つの評価項目の検討を行った。その結果,樹頂部の頂枝における芽の数や,葉芽と花芽の比率は,栄養成長と関連を持ち,活力度の評価項目として適切であることが明らかとなった。一方,1 つの花芽から出る花数は,様々な生育段階を含む集団の活力度評価には適さなかった。個体全体の満開時の着花量は,活力度評価には適さないと考えられた。
著者
手代木 功基 藤岡 悠一郎 飯田 義彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.431-450, 2015-09-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
52
被引用文献数
1 1

滋賀県高島市朽木地域に成立するトチノキ巨木林の立地環境を,自然環境と人為環境の双方に着目して明らかにした.調査谷には230個体のトチノキが生育し,そのうち47個体が巨木であった.トチノキの巨木は,下部谷壁斜面と上部谷壁斜面の境界をなす遷急線の直上,および谷頭凹地の斜面上部に多く分布し,小・中径木と比べて谷の上流側に分布が偏って樹林を形成していた.すなわち,トチノキ巨木は安定した地形面に生育していると考えられる.また,朽木地域のトチノキ巨木林は,炭焼きや刈敷の採集などの人為攪乱が頻繁に及ぶ山林の中に成立していた.トチノキは伐採が制限され選択的に保全されてきたが,巨木林の成立には個人の選択が強く関わり,巨木林が成立する谷としない谷が分かれてきた.以上により,本地域のトチノキ巨木林は,地形面の安定性と選択的な保全,他樹種に対する定期的な伐採が維持される環境下で成立したものと考えられる.
著者
手代木 功基 藤岡 悠一郎 飯田 義彦
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.100-114, 2016 (Released:2016-09-15)
参考文献数
36
被引用文献数
1

トチノミ食文化に関する研究では,これまでトチノミの加工技術やトチノミ加工食品の地域的な差異が明らかにされてきた。一方で,トチノミ加工食品は都市住民も含めた観光客の需要に応えるなかで商品化が進み,自家消費を中心とした利用形態から変容している。本稿では,地域の特産品などを販売し,全国の山間地域に数多く分布する道の駅に注目し,トチノミ食の地域的な分布状況を明らかにした。道の駅販売所への電話調査およびアンケート調査の結果,従来から全国的に利用が知られるトチモチが広範囲で販売されていることが明らかとなった。また,トチノミセンベイやトチノミカリントウ,トチノミアメといった多様な商品が販売されていた。生産者に注目すると,トチモチが個人や組合による生産が多い一方,他の製品は企業による販売が多い傾向がみられた。そして,トチノミ加工食品はトチノミ食文化が根付いていた地域で販売される傾向があったが,食文化が根付いていない地域においても販売されていた。