- 著者
-
曲 剛健
高 建十
田崎 洋佑
伊藤 朗
- 出版者
- 一般社団法人日本体力医学会
- 雑誌
- 体力科学 (ISSN:0039906X)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.3, pp.263-271, 1997-06-01 (Released:2010-09-30)
- 参考文献数
- 25
本研究は, ラットを去勢し, 睾丸から分泌される男性ホルモンの影響を除外した条件下において, 杜仲樹皮エキスの投与がアナボリックに及ぼす影響について非運動時と運動時を比較検討することを目的とした.実験は32匹, 4週齢Wistar系雄ラットに去勢手術を実施し, 杜仲樹皮エキス投与非運動群 (n=8) , 杜仲樹皮エキス投与運動群 (n=8) , 対照非運動群 (n=8) , 対照運動群 (n=8) の4群に分類した.杜仲樹皮エキスの投与は1g/kg体重の割合で1日1回, 週7回, 4週間にわたって経口投与した.対照群には同じ方法で蒸留水を投与した.運動負荷は, 小動物用トレッドミルを用い, 20m/minのスピードからスタートし, 1週間毎に10m/minのスピードを増加させ, 1日30分間, 4週間にわたって休まずに強制トレッドミル走行を実施した3結果は次のようであった.1.副腎比重量において, 杜仲樹皮エキス投与非運動群は, 対照非運動群に比し有意な高値 (p<0.001) を示した.また, 杜仲樹皮エキス投与運動群は, 対照運動群および杜仲樹皮エキス投与非運動群に比し有意な高値 (いずれもp<0.001) を示した.2.腎臓比重量において, 杜仲樹皮エキス投与非運動群は, 対照非運動群に比し有意 (p<0.001) に増大した.また, 杜仲樹皮エキス投与運動群は対照運動群に比し, 増加傾向が見られたが, 有意な差は認められなかった.3.肛門挙筋比重量において, 杜仲樹皮エキス投与非運動群は, 対照非運動群に比し有意な (p<0.001) 高値を示した.杜仲樹皮エキス投与運動群は対照運動群に比し有意な (p<0.001) 高値を示した.4.運動負荷終了後の24時間尿中17-KSは, 杜仲樹皮エキス投与非運動群が対照非運動群, 杜仲樹皮エキス投与運動群の2群に比しそれぞれ有意な高値 (いずれもp<0.001) を示した.杜仲樹皮エキス投与運動群は対照運動群に比し有意な高値 (p<0.01) を示した.また, 対照非運動群は対照運動群に対し, 有意な高値 (p<0.001) を示した.5.各群の尿中総窒素は, 杜仲樹皮エキス投与非運動群が対照非運動群, 杜仲樹皮エキス投与運動群の2群に比しそれぞれ有意な低値 (p<0.01, p<0.05) を示した.杜仲樹皮エキス投与運動群は対照運動群に比し, 有意な低値 (p<0.05) を示した.以上の結果から杜仲樹皮エキス投与は, 去勢されたラットの副腎重量の有意な増加をもたらし, 副腎皮質網状層のアンドロゲンの分泌を亢進させ, タンパク同化作用を促進させることが示唆された.また, 運動負荷における副腎皮質網状層の適応能力を増していることが示唆された.