著者
小方 直幸 高旗 浩志 小方 朋子 TAKAHATA Hiroshi 小方 朋子 OGATA Tomoko
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
no.18, pp.135-153, 2018-03

わが国の大学教育をめぐっては、3つのポリシーの整備や学位プログラム化の推進など、組織ベースから学修ベースへの制度転換が目指され、教員組織と学生の所属組織の関係についても、柔軟な形態の採用が指向されている。こうした改革をめぐる言説や動向を、実りある実践的なものとするには、個別の教育プログラムレベルにまで降りて、実証的な研究を行う必要がある。それぞれの教育プログラムがおかれた文脈が異なるからである。本稿はその一つの試みとして、教員養成に着目する。具体的には、複数教科指導という独自性を持つ小学校教員養成を取り上げ、現行の養成教育や教員研修システムが持つ「得意教科主義」を、高等教育論の視点から批判的に考察することを目的としている。教免法やカリキュラム構造が果たす顕在的養成機能よりも、大学の学科やコースという基本的な組織構造がもたらす潜在的養成機能に着目した分析から、教科のゼミに所属しその教科に関連した中高免許を取得するという現行の仕組みは、就業後の得意教科の発揮に貢献する一方で、複数教科に跨がる指導力や教科と教科を繋ぐ指導力の育成には寄与していないことを明らかにした。This study critically examined elementary schoolteachers' present training systems in college and after employment, oriented toward constructing "favorite subject of instruction," especially focusing on elementary schoolteachers' uniqueness in that they instruct plural subjects. The National Elementary Schoolteacher Survey, conducted to serve this object, sheds light on the present situation in which undergraduate students belong to a specific subject-related seminar and obtain a certificate for teaching secondary school in addition to that for elementary school. This contributes to demonstration of "favorite subject of instruction" after employment, but does not cultivate competence in course instruction straddling plural subjects or interrelating different subjects. Furthermore, post-employment training systems are not structured to build such competencies. Survey results offer a third method for training elementary schoolteachers in circumstances of a request to facilitate linkage between kindergarten and elementary school, elementary school and secondary school, or for competence in deep subject instruction.
著者
畑 克明 権藤 誠剛 高岡 信也 山下 政俊 清國 祐二 高旗 浩志
出版者
島根大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

15年度は本研究の最終年度にあたり、大学生のボランティア学習の評価の妥当性を実習報告の分析及びヒアリング調査によって明らかにした。「授業」で「ボランティア」を課すことに対する学生の戸惑いもあったようだが、実際に彼らは体験することによって成長したと振り返る。また授業として設定されていなければ自らボランティアとして活動をしていなかっただろうとも語っている。彼らの学びに共通する点は、社会教育施設等で実際に子どもと関わり、施設の専門職員と関わったことにある。中学、高校時代の部活動などを除き、異年齢での活動体験が極めて少ない彼らにとって、子どもと活動をともにするのは新鮮に映っていたようだ。おぼろげな子どものイメージから、多様な子どもの実態把握へと認識が高まった。施設職員の多くは義務教育学校の教員であるため、子どもとの関わりや子ども対象の事業に慣れている。それら職員との関わりは学生たちの進路を考える上でも重要であったようだ。現在、「学習ボランテイア基礎」及び「学習ボランテイア実習」はボランテイア体験レポートをもとに評価を行っているが、体験相互の関連性や経験の蓄積を重視した評価システムとしては十分ではなかった。その点で、経験のファイリングをしながら学生の自己主導的な学習を支援するポートフォリオ評価は参考となる。今後、島根大学教育学部では4年間の学部教育の中に1,000時間体験を位置づけることになるが、その基礎としても本研究の意義は大きかった。