- 著者
-
高松 里江
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.54-65, 2012-05-26
これまで、アメリカを中心とする多くの研究は、性別職域分離は賃金格差の要因になることを示してきた。また、いくつかの研究は、技能とその指標となる制度をコントロールすることで、性別職域分離がどのようなメカニズムで賃金に影響するのかを明らかにしてきた。一方、日本ではいくつかの研究が性別職域分離は賃金格差の要因であることを示唆してきたが、対象となる職種が少なく、また、技能について十分に考慮されていないという課題があった。そこで本稿は、日本において、性別職域分離が日本型雇用制度と専門職制度のなかの技能とどのように結びつき、賃金に影響するのかについて分析を行った。分析には2006年および2008年に日本全国を対象に実施したJGSS調査を用い、対数変換後の時給を従属変数とする重回帰分析を行った。職種の女性比率から、男性職、混合職、女性職の3つに職種に分けて分析を行ったところ、(1)混合職と比べると女性職では賃金が高いこと、(2)女性職は混合職と比べて対物技能が高いために賃金が高いこと、(3)女性職の多くは専門職として対人技能が高いために賃金が高いことが示された。従来の研究では、性別職域分離は女性の地位を低める効果があるとされてきたが、本稿の結果からは、性別職域分離が対物技能や専門職制度を通じて女性の賃金を高めることが明らかになった。