著者
茶園 敏美
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.128-162, 2014-03-31

本論は、占領期の日本をあらゆるひとたちが相互交渉し対処する場を、「コンタクト・ゾーン」としてみる。それはたんに、勝者米国が敗者日本を統治したというだけではなく、日本のおんなたちとGI(米兵)が対等に相互交渉をおこなっているということを明らかにする。とりわけ本論では、1人のGI と関わる、「オンリー」や「オンリー・ワン」と呼ばれていたおんなたちに注目する。 具体的には、占領期に京都社会福祉研究所が調査した、26 名のおんなたちの口述記録を考察する。彼女たちは、GI と性的な関係を持ったという理由で性病検診を強制的に受けさせられたおんなたちである。彼女たちは「高級街娼」とみなされ、「オンリー・ワン」と分類された。 さらに本論では、さまざまなおんなたちがお互いに助け合う可能性についても論じる。とりわけ、占領期に実施された強制的性病検診を受けるために待つ空間であった、病院の待合室に注目する。病院の待合室はGHQ や日本政府がおんなたちの間に「分断支配」[Enloe 2000;エンロー 2006]を持ち込もうとする空間であるからだ。 本来、あらゆる立場を超えておんなたちが、一斉検挙という暴力に対して互いに手を結ぶことができるにもかかわらず、当局側の「分断支配」によって被害を受けているおんなたち同士が互いに反目しあう状況が生み出される。 だがコンタクト・ゾーンという視点で彼女たちとGI たちとの関係に注目すると、エンローの「分断支配」も、彼女たちを調査した研究員たちのように一義的な力関係を前提とする分析にすぎないことがわかる。 彼女たちは、これまでの既存の枠組みでは分析できないおんなたちである。「規範」のものさしで彼女たちを測ることをやめたとき、彼女たちのことをもっと理解することができるだろう。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美 小川 裕子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録・資料を主資料として研究を進めることにより、戦後日本の女性の貧困・困窮の実態について明らかにした。婦人保護施設は売春防止法により規定された施設であるが、その施設開設初期段階から家族のなかに居場所を失った多様な困難を抱える女性たちを受け入れ支援する場として存在したことが明らかになった。また、同時に「売春」と言われてきた行為について、性暴力・恋愛との連続性、言い換えれば客体化された被害者としての側面と主体化された行為者としての側面から概念を再検討する必要性も見えてきた。