著者
土屋 昭夫 相澤 直孝 佐藤 邦広 高橋 姿
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.173-177, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
20

線維素性唾液管炎は, 唾液腺導管内に線維素塊が形成されて導管の閉塞をきたし, 反復性に唾液腺腫脹をきたす疾患である. 腫脹時に唾液腺を圧迫すると, 導管から多数の好酸球を含む線維素塊の排出を認める. アレルギー性疾患を合併することが多く, そのため発症の原因としてアレルギーの関与が考えられている.今回われわれは, 反復する耳下部腫脹を主訴に当科を受診し, 線維素性唾液管炎と診断された3例を経験したので報告する. 3例ともにアレルギー疾患の合併があり, 2例ではステノン管からの排出物に好酸球を認めた. 全例で抗アレルギー剤の効果を認めたが, 1例を除き症状は残存しており, ステロイド治療の追加を検討している.
著者
高橋 姿
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.10-16, 2003

当科では中耳真珠腫の再発予防に主眼をおき乳突充填型鼓室形成術を行ってきた。open法に準じた開放された術野で真珠腫を徹底清掃し, 次いで鼓室形成術後に外耳道の再建と清掃乳突腔の充填を行う。その結果, 真珠腫の再発が大幅に予防できた。その後も改良を加えながら成績向上に努めてきたが, 最近では骨パテをフィブリン糊で固定後, 圧迫・脱水した骨パテ板で外耳道後壁を再建し, 骨片と骨パテ板で乳突腔を充填している。本術式の要点と2年以上経過観察できた中耳真珠腫の初回手術症例35耳の成績を提示した。さらに乳突充填型鼓室形成術の問題点と今後の対応について述べた。
著者
藤崎 俊之 佐藤 斎 和田 匡史 土屋 乃里子 高橋 姿
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.169-174, 2000-04-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4

3年以上聴力経過を観察しえた前庭水管拡大に伴う難聴14例28耳 (男性7例, 女性7例) における長期的な聴力域値の変化と, 難聴の急性増悪のエピソードについて検討した。聴力域値が3分法平均聴力で10dB以上悪化した進行耳を6耳 (21%), 難聴の急性増悪を4回以上反復した増悪反復耳を11耳 (39%) に認めた。 これら臨床的に経過不良の症例では, 誘因なく難聴の急性増悪を生じ, しばしばめまいを伴った。前庭水管拡大症例が誘因なくめまいを伴って難聴の急性増悪をきたしたときは, 治療や経過観察をより注意深く行う必要があると思われた。 前庭水管拡大には, 容易に内耳障害を生じる経過不良な群と, 経過が比較的安定した群が存在する可能性が示唆された。
著者
佐藤 克郎 川名 正博 山本 裕 佐藤 雄一郎 花澤 秀行 高橋 姿
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.465-471, 2002
被引用文献数
2

当科で音声外来開設以来13年間に経験した輪状披裂関節脱臼の2例につき,その経過を報告するとともに,輪状披裂関節脱臼の診断,音声機能の評価,経過観察と治療の方針につき検討した。当科の2症例はおのおの頸部への鈍的外傷および気管内挿管により前方型輪状披裂関節脱臼が発生し,音声機能を評価しつつ脱臼の整復を計画していたところ,おのおの発生から1および4カ月後に自然整復された。音声機能検査では,両例とも声門閉鎖不全の所見に加え基本周波数の上昇が認められ,自然整復後はいずれも改善し正常化した。文献的にも本症の自然整復例はある程度みられ,前方脱臼に多い。そこで自然整復の機序を推察すると,披裂軟骨に後方への張力として働く筋は唯一の声門開大筋で,他の筋に比べ働く頻度が高い後輪状披裂筋であるため,前方脱臼は自然整復の可能性が高いと考えられた。気管内挿管や頸部の外傷後に喉頭の症状をきたした症例においては,本疾患をも念頭におき,病歴や局所所見のみにとらわれず画像診断,音声機能検査,筋電図検査などを用いて確実に診断し病態を評価したうえで,容易に反復し施行できる音声機能の経過を参考に治療を計画することが重要と考えられた。