著者
平石 光俊 石塚 洋一 曽根 一倫 千葉 良子
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.9-13, 2004

ジェット式ネブライザー装置より噴霧された, 芳香剤添加ネブライザー溶液中の塩酸セブメノキシムの安定性について検討した。芳香剤はハッカ油, ストロベリーエッセンス, バニラエッセンスを用いた。噴霧気体中の塩酸セブメノキシム, マウスピースに付着した塩酸セブメノキシム, 薬液槽中に残存した塩酸セブメノキシムの残存率と力価について, 芳香剤添加ネブライザー溶液と芳香剤を添加しないネブライザー溶液を比較検討した。いずれの実験において, 各々の芳香剤を添加したものは残存率, 力価の両面において, 芳香剤を添加しないものとほとんど差がなかった。ネブライザー溶液に芳香剤を添加しても, 塩酸セブメノキシムの噴霧に影響を与えないものと考えられる。
著者
後藤 一貴 常見 泰弘 吉田 智恵 金谷 洋明 平林 秀樹 春名 眞一
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.198-204, 2014

口腔期の嚥下を意識しない場面での唾液嚥下は可能なものの, 意図的状況での嚥下が不可能な「口腔期嚥下失行」が疑われた症例を経験した。 患者は57歳, 男性。 現病歴は, 意識障害にて救急搬送。 精査にて前頭葉神経膠腫の診断となった。 放射線化学療法中に嚥下障害, 構音障害が出現し当科を紹介受診した。 Japan Coma Scale 1, Broca 失語を認めた。 口腔内の感覚運動麻痺はなく, 唾液の口腔内残留も認めなかった。 嚥下内視鏡検査では, 声帯麻痺はなく, 喉頭蓋谷, 両側梨状窩凹への唾液貯留も認めなかった。 着色水の指示嚥下では, ホワイトアウト, 咽頭の収縮, 喉頭挙上を認めたが, 着色水は口腔内に留まったままで嚥下することはできなかった。 嚥下造影検査では, 舌咽頭の明らかな麻痺はないが, 咽頭へ送り込みができなかった。 しかし, 嚥下を意図しない場面では, 唾液嚥下は可能であった。 嚥下関連筋の運動障害, 舌咽喉頭の感覚障害はなく, 意図的な場面での送り込み障害をきたしている, 「口腔期嚥下失行」が疑われた。 責任病巣は, 両葉の一次運動野から視床に至る経路での障害と推定された。 環境整備, 模倣によるリハビリテーションにて一部の経口摂取が可能となった。
著者
高橋 姿
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.10-16, 2003

当科では中耳真珠腫の再発予防に主眼をおき乳突充填型鼓室形成術を行ってきた。open法に準じた開放された術野で真珠腫を徹底清掃し, 次いで鼓室形成術後に外耳道の再建と清掃乳突腔の充填を行う。その結果, 真珠腫の再発が大幅に予防できた。その後も改良を加えながら成績向上に努めてきたが, 最近では骨パテをフィブリン糊で固定後, 圧迫・脱水した骨パテ板で外耳道後壁を再建し, 骨片と骨パテ板で乳突腔を充填している。本術式の要点と2年以上経過観察できた中耳真珠腫の初回手術症例35耳の成績を提示した。さらに乳突充填型鼓室形成術の問題点と今後の対応について述べた。

2 0 0 0 OA Voice therapy

著者
部坂 弘彦
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.493-496, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
6

Voice therapyは耳鼻咽喉科医と言語療法士 (speech therapist : ST) との連携によって治療を行うことが望ましいが, 本邦では言語療法士 (ST) の人数が極端に少ないのが現状である。耳鼻咽喉科医としてvoice therapyの技術を習得できれば音声障害に対する治療の向上が期待できる。ここではvoice therapyが有効な病態, および具体的な治療法について説明する。Voice therapyが有効な病態としては, 発声に関与する筋肉を無理に使いすぎたり, 誤った発声をするために生じた状態, あるいは発声に関与する筋肉のバランスがくずれて生じるvocal hyperfunctionの病態に対して有効である。さらにvoice therapyの具体的な治療法について述べる。
著者
厚田 幸一郎 沼里 友紀 本橋 茂 村瀬 勢津子 吉山 友二 小林 輝明 朝長 文弥
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.114-118, 1995

従来の超音波ネブライザーを用いた気管支拡張剤の吸入療法では二, 三の薬物において, 薬剤含量が低下することを報告してきた。今回, 新規に開発されたダブルホーン型超音波ネブライザーを用いて, 気管支拡張剤の安定性改善にっいて検討した。新規超音波ネブライザーを用いた噴霧では, いずれの気管支拡張剤においても, 噴霧液ならびにボトル内残液の外観変化および含量低下は認められず, 薬剤の安定性が保持されていた。以上のことより, 気管支拡張剤の吸入療法に際して, 新規に開発されたダブルホーン型超音波ネブライザーを用いることの有用性が示唆され, 今後, 超音波吸入療法の機器として広く臨床使用されることが期待される。
著者
鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 竹内 万彦 増田 佐和子 湯田 厚司 大川 親久 緒方 俊行
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.447-458, 1999

スギ花粉症の患者30例を対象に, 甜茶ポリフェノール含量を高めた飲料 (甜茶エキス80mg/日) をスギ花粉飛散前に投与を開始する初期投与群 (15例) と発症後投与群 (15例) に投与し, スギ花粉飛散前期における鼻症状, 眼症状および併用薬剤使用状況を調査し, その有効性, 安全性および有用性について検討を行った。<BR>初期投与群と発症後投与群を比較したところ, 花粉症発症1週目, 2週目ともsymptom scoreには差が認められなかったが, medication scoreおよびsymptom-medication scoreには, 統計学的に有意な差が認められた。<BR>試験終了時の医師による最終総合評価では, 初期投与群で「中等度改善」以上が53.3%を占め, 発症後投与群の6.7%に比べて有意に高い症状改善率を示した。<BR>副作用は全例に認められず, 臨床症状改善率と副作用を考慮した有用度は初期投与群において「やや有用」以上が60%を占め, 発症後投与群の33.3%と比較して有意に高い有用性を示した。<BR>以上の結果より, 甜茶飲料をスギ花粉飛散前から飲用することにより, スギ花粉症症状を予防的に抑制し治療薬の低減に有用であることが確かめられた。
著者
小勝 敏幸
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.266-279, 1997

頭頸部進行癌に対し5-Fluorouracil (5-FU) をシスプラチン (CDDP) に先行させて併用するCF療法変法に, さらに加える薬剤としてCyclophosphamide (CPM) を選択し, CPM400mg/m<SUP>2</SUP> (day3) を併用した3剤併用療法を考案し50例に施行したが, CR率の有意な向上は認められなかった。次に5-FUのBiochemical modulatorであるMethotrexate (MTX) とLeucovorin (LV) をCF療法変法に組み合わせた4剤併用療法を考案し, 培養細胞による制癌剤感受性試験を行った。結果はMTXの先行処理で5-FUの制癌効果の増強を認め, LVは投与順にかかわらず5-FUの制癌効果の増強を認めた。臨床応用では5-FU800mg/m<SUP>2</SUP>/day (day1~5) 持続点滴, MTX30mg/m<SUP>2</SUP> (day1), LV20mg/m<SUP>2</SUP>/day (day1~5) 静注, CDDP60mg/m<SUP>2</SUP> (day4) 点滴静注を50例に施行し, 45例に2コース完燧し重篤な副作用はなく, 効果判定はCR率33%, 奏効率87%で従来のCF療法変法と比較してCR率が有意に上回る結果を得た。
著者
中島 博次
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.171-202,135, 1974
被引用文献数
1

外鼻錐体は顔面の中央に位置し人の顔貌の構成に重大な役割を演じており, これに対する整容のため外鼻錐体を構成する諸要素を充分把握することが重要であることは論をまたない、しかるに私が猟渉し得た内外の文献をみるに, 外鼻ことに外鼻軟骨の検索は真に少なく, 部分的に触れているものはあるもののまちまちで, 外鼻軟骨そのものについての記述はほとんど無いのが現状である。当教室高橋教授は, 以前より内鼻や外鼻を研究するに当つて内鼻外鼻を一連のものとして考えるという方針できており, 内外鼻の関係ことに鼻中隔や側壁を中心とした研究と意義を強調されてきた。更に外鼻の重要な構成要素である外鼻軟骨についても, 教室の天野が比較解剖学的研究を, 沖久が胎児の鼻尖軟骨の発生学的研究を行つているが, 私もその一環として成人の外鼻軟骨を中心とした機構を検索した次第で, この研究の一部はすでに高橋教授とともに数回にわたり報告を行つているが, ここにその後の検索例数の増加による成果も併せて報告する次第である。<BR>35才より78才にわたる19体の屍体外鼻の連続水平断切片および連続前額断切片標本を作成し, さらに立体的観察を期すため4体の裸眼ならびに拡大視野による局所解剖学的検索も併せて行つた。<BR>その結果, 鼻背軟骨と鼻尖軟骨との重なり合う部位にN宇の中央斜線にあたる部分に軟骨が恒常的に左右対称に存在する。これは付近にみられる種子状軟骨に比し大きくまた水平位に近い斜位に存在する。この軟骨は種子状軟骨と別個のもので, この軟骨を介在軟骨Intermediate cartilageと命名した。外鼻軟骨の名称については諸家により名称が一致していないが, 私の検索の結果高橋教授が提唱するごとく,<BR>中隔鼻背軟骨<BR>鼻尖軟骨<BR>副鼻軟骨小鼻翼軟骨lesser alar cartilage<BR>種子状軟骨seas moid cartilage<BR>介在軟骨interculated cartilage<BR>とするのが適切であると思う。鼻尖軟骨は鼻翼の構成に関与していると述べている者もあるが, 私の検索の結果では鼻尖軟骨は鼻翼の構成には関与していない。外鼻軟骨相互および鼻骨との関係ではそれぞれ相当の重なり合いが認められた。すなわち鼻背軟骨は下外側において鼻尖軟骨の下に相当入り込んでおり, 例外的にその程度の少ないものもあつたが重なりを有していることは確認できる。鼻骨と鼻背軟骨との関係も同様で, 詳細に観察すると相当の重なりを有しており両者は結合織によりしつかりと保持されている。鼻背軟骨下端は多くの切れ込みを有しており, 一枚の板状の軟骨ではない。その切れ込みには強固な線維性結合織が入り込んでいて肉眼的には余りよく観察できないが拡大鏡下で観察すると切れ込みの存在とそれが相当上位までおよんでいるのが観察できた。Strastmaの報告では鼻背軟骨の下3分の2におよぶとしているが, 私の観察では下3分の1程度までのようである。なお鼻背軟骨前下端の複雑さはSupra-alarsulcus, 鼻中隔発育の影響の集約的なあらわれと考えた。<BR>以上, 軟骨, 骨, 軟部組織等の外鼻錐体を構成する諸要素のあり方を検索した結果, 私は外鼻錐体は単なる組織の集まりではなく気道保持を目的とした一つの器官と考える。