著者
高橋 恭子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-17, 2002

本論は,ソーシャルワーク実践における倫理的ディレンマについての研究の端緒とするために,この分野の研究が進んでいる欧米の研究動向を概観,考察するものである。欧米では,1980年代を契機として盛んに研究が行われていることから,本論では,雑誌「social work abstracts」の1980年から現在までの「ethics and values」の項目に掲載された論文,795件を対象として検討を行った。その結果,倫理的ディレンマを扱っているもの68件のうち,領域別では,医療の領域におけるものが24件で4割弱を占め,最も多かった。内容は,生命倫理に関するもの14件,退院計画に関するもの4件,その他のもの6件であった。この中で退院計画は現在の日本の医療ソーシャルワーカーにとっても主要な業務の一つとなっていることから,退院計画に関する倫理的ディレンマについて検討を行った。この分野での倫理的ディレンマはマクロとミクロのレベルが存在していた。倫理的ディレンマへ対処するためには分析モデルの活用が有効であると考えられているが,確立された方法は未だ存在していない。そのほか研究手法も試行錯誤で行われている。価値や倫理に関する教育も不十分であることがわかった。これらの研究を参考に,日本における現状分析をし,どのような手法で対処していくことができるのか研究を重ねていくことが必要である。
著者
高橋 恭子 築島 恵理
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.195-203, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
23

目的 高齢化が急速に進行している地域において,高齢者人口の増加に伴う要介護原因疾病の変化を明らかにすることを目的に,5年前の要介護原因疾病との比較検討を行った。方法 札幌市南区において2018年度に新規要介護認定を受けた第1号被保険者2,538人および2013~2014年度に認定を受けた第1号被保険者4,089人が対象となった。 主治医意見書に記載された疾患名を国民生活基礎調査の介護票の疾病分類に基づいて分類して原因疾病として用いた。調査年度間の原因疾病の割合をχ2検定を用いて解析を実施した。結果 5年間の比較では男性は原因疾病の比率に統計学的有意な変化を認めなかった。女性は脳血管疾患の比率が7.8%から5.6%に減少し(P=0.008),骨折・転倒の比率が9.5%から13.8%に増加し(P<0.001),いずれも統計学的有意であった。 介護度が重度になる疾患について男性は5年間では変化がなく,悪性新生物が最も多く,次いで脳血管疾患であった。女性は骨折・転倒が10.5%から17.7%に統計学的有意に増加し(P=0.002),原因として最も多くなった。女性の骨折・転倒に関しては介護度が軽度の群でも9.2%から12.5%と統計学的有意に増加していた(P=0.004)。結論 5年間の経過で女性の骨折・転倒が増加し,予防対策を早期から開始することの必要性が示された。健康寿命短縮の要因となる原因疾病には悪性新生物,脳血管疾患の生活習慣病の関与が大きく,健康寿命延伸において生活習慣病予防の重要性が改めて示された。
著者
脇田 美佳 前田 文子 濱田 陽子 高橋 恭子 瀬尾 弘子 福留 奈美 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17, 2004

[目的] 天丼、うな丼など丼物は古くから日本人になじみがある。また、近年多忙なサラリーマンや、手軽でおいしいものを求める若者のライフスタイルにマッチするためか、丼物のファーストフード店がブームである。本研究では丼物の種類や食材の種類、食べ方についての実態を知り、丼物が食生活の中で果たしている役割と新たな可能性を探るとともに、丼物と若者の食との関わりについて考察することを目的とした。<br>[方法] 全国の大学、短大等の学生及び職員に、1年間に家庭で食べた丼物・味付け飯についてアンケートを行った。調査期間は2003年10月から11月、1371名から回答を得た。<br>[結果] 家庭でよく食べられる丼物は親子丼、牛丼、カツ丼、天丼であり、これらについての地域差はほとんどなかった。また、親子丼、他人丼、そぼろ丼は手作りが多いのに対し、うな丼、牛丼、天丼、ビビンバなどは、調理済み食品あるいは半調理品の利用が多かった。ひとつの丼に材料として用いられる野菜は0から2種類、肉・魚・卵については1から2種類が多かった。丼物を家庭で食べるとき、22%の人は丼のみを食べ、丼に1品を添えて食べる人は44%で、添えられる品は汁物が多く、2品を添える人は26%で、汁物に加えて漬物・野菜・海草料理を食べる例が多かった。丼物を好きな人は82%、家庭で食べる頻度は月1から2回以上が66%であった。食べる理由は、好きだから、調理や後片づけが簡単という理由が多く、栄養的なバランスをとりやすいからという理由は少なかった。丼物は汁物や野菜料理等と組み合わせて食べることで栄養のバランスもとれ、また、手軽に楽しめることから、食事が偏りがちな若者の食生活改善にも有効である。
著者
高橋 恭子
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

腸管のマスト細胞及び上皮細胞と腸内共生菌との相互作用の解析を行った。その結果、腸内共生菌がマスト細胞の最終分化過程に影響を及ぼすこと、腸管上皮細胞における菌体認識に関わる遺伝子の発現を調節することが明らかとなった。腸内共生菌によるマスト細胞及び腸管上皮細胞の機能の調節に関わるこれらの機構は、腸共生系の恒常性の破綻に起因する炎症反応を食品により制御するための有用なターゲットとなることが期待される。
著者
増野 匡彦 中村 成夫 高橋 恭子 西澤 千穂
出版者
共立薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.フラーレン誘導体のがん細胞増殖抑制機構の解明ジメチルピロリジニウム置換基を有するフラーレン誘導体(1)ががん細胞増殖抑制効果を示すことをすでに明らかにしているが、その機構の解析を行った。ヒト白血病由来HL-60細胞を1で処理するとアポトーシスの特徴であるDNAのラダー化、クロマチンの凝集、細胞周期のSub G1期での停止が観察され、さらに、カスパーゼ3の活性化、カスパーゼ9の活性化、ミトコンドリアからのシトクロムc放出を引き起こすが、p53の誘導はおきないことを見出した。多くのがん細胞ではp53が欠損しているためp53以外の経路でアポトーシスを誘発する化合物は抗がん剤リード化合物として有利と考えられる。2.HIV逆転写酵素阻害活性の高いプロリン型フラーレン誘導体のデザインと合成フラーレン骨格に結合したピロール環に3つのカルボン酸を有する誘導体(2)をリード化合物としてコンピュータードッキングシミュレーションも用いて様々な誘導体をデザイン、合成した。その結果ピロール環2,5位の2カ所にカルボン酸を有する誘導体(3)の活性が2よりも高く、カルボン酸を1つにすると活性が低下することが明らかとなった。これらの誘導体の阻害活性は現在抗HIV薬として用いられているネビラピンの100倍以上活性が高かった。3.スルホニウム型フラーレン誘導体の抗C型肝炎ウィルス活性スルホニウム型フラーレン誘導体(4)はフラーレン誘導体1と同等のC型肝炎ウィルスRNAポリメラーゼ阻害活性ならびにC型肝炎ウィルス増殖抑制効果を示した。4は細胞毒性も低く抗C型肝炎薬のリード化合物として有望であることを明らかとした。3年間の研究で新規抗がん薬、抗HIV薬、抗HCV薬の有望なリード化合物を創製できた。