著者
福留 奈美 小磯 華織
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.1, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】現在、日本で食べられている麻婆豆腐には甘口から極辛口まで様々なタイプがある。本研究の目的は、中国から麻婆豆腐がいつごろ日本に入ってきてどのように日本の食卓に浸透したのかを明らかにし、調味料・香辛料の使い方から麻婆豆腐のタイプ分けを行い、料理の伝来と受容のプロセスを追うことにある。【方法】まず、料理書・家庭科教科書・調理実習書などから麻婆豆腐や四川料理に関する情報と麻婆豆腐レシピを収集した。次に、麻婆豆腐レシピ125品の調味料・香辛料に着目して、出現頻度が5以下のものを含むレシピを除き、101品について階層型クラスター分析(ウォード法)を行い、得られたレシピ群に対し調味料・香辛料の組み合わせから特徴づけを行った。また、2020年6月現在、市場に出回るレトルト製品「麻婆豆腐の素」25品を集め、原材料名に記載された調味料・香辛料の種類からクラスター分析による分類を行った。【結果】1)文献調査から、日本語の麻婆豆腐レシピの初出は『中国料理』(王馬熙純著、1958年6月)で、麻婆豆腐を日本に紹介したとされる料理人陳建民による四川飯店開業(1958年11月)と同年であった。その後、各種料理書での紹介と並行してNHK「きょうの料理」(王馬熙純1959、陳建民1966)の放送や「麻婆豆腐の素」の発売(丸美屋 1971)が麻婆豆腐の一般家庭への浸透に寄与したと考えられた。2)クラスター分析により、101品の麻婆豆腐レシピは調味料・香辛料等の組合せで特徴づけられる和風(13品)、中華風(43品)、和中折衷型(45品)の3タイプに分けられた。3)「麻婆豆腐の素」25品に使用された調味料・香辛料は、和風・中華風に2分類された。
著者
加藤 愛美 福留 奈美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】明治時代以降、西洋文化のひとつとして伝来したイタリア料理は、現在、外食だけでなく中食、家庭内食への浸透が進む。本研究は、外来の食文化の受容と普及のプロセスをとらえる研究の一環として、イタリア料理のパスタに着目し、日本の現代食生活において身近に利用されるパスタの種類と調理法の実態をとらえることを目的とする。</p><p>【方法】首都圏の小売店の販売状況を調査し、取り扱い上位のパスタの種類を特定した。また、家庭内食への影響や実態を反映する食情報のひとつとして、NHK『きょうの料理』アーカイブスに収録されたイタリア料理の中のパスタ料理と、レシピサービス『クックパッド』でパスタの種類別に検索した人気上位50品のパスタ料理を抽出し、使用食材とソース分類について集計・分析した。</p><p>【結果】大型スーパーから都市型の小規模スーパー、輸入食品を多く取り扱う酒類量販店等計20店舗の内、11店舗以上で販売されるパスタは12種類あった(2021年5月現在)。NHK『きょうの料理』のイタリア料理レシピ336品中にパスタ料理は95品あり1/3弱を占めた。『クックパッド』のパスタ料理レシピ(パスタ16種類、計800品)において、ニンニク、トマトが4割前後のレシピで使用されているのに対し、和風食材・調味料の利用はきのこ類と醤油の利用が1割前後あるものの、ネギ、海苔、大葉、明太子・たらこ等は3%前後の使用率だった。ソース分類については、マカロニ等のショートパスタでマヨネーズによるサラダの利用が、カッペリーニ等細めのロングパスタでトマトのソースが、フェットチーネやラザニア等いくつかの種類でトマトとクリームの両方を使うソースの利用が特徴的にみられた。</p>
著者
関原 成妙 福留 奈美 早川 文代 品川 明
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.102, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】硬水では良いだしが取れないことは日本の料理界で常識とされる。うま味を含めた5つの基本味の感じ方は水の違いによってどのように変化するのか、本研究では5つの基本味の感じ方の違いを水の硬度の違いと関連づけてとらえることを目的とした。また五味識別テストを行う際の水溶液濃度を味質別に設定する必要性についても検討した。【方法】五味識別テストを市販の飲用水を用いて行うことを想定し、ボトルドウォーター3種(硬度が異なるミネラルウォーター2種と純水)を選んだ。ISO8586のパネリスト選抜基準および訓練テストの濃度を参考に予備実験を行い、甘味(ショ糖)、塩味(NaCl)、酸味(クエン酸)、苦味(無水カフェイン)、うま味(グルタミン酸ナトリウム)の水溶液の濃度を4段階に設定した。18-22歳の都内女子大学の学生24-29名を対象に2016年3-7月に3点識別試験法で官能評価を行った。水別、濃度別に有意差検定を行い、結果をもとに五味識別テストにおける水溶液濃度の設定についての検討を行った。【結果】識別できた人の割合は、うま味については硬度が高い水の方が高く、酸味については硬度が低い水の方が高い傾向が見られた。低濃度の水溶液では、うま味は純水で、酸味は硬度の高い水で有意差が出る傾向にあり、うま味と酸味の味質の感じやすさと水の硬度の違いに逆の傾向が見られた。甘味、塩味、苦味については水の硬度段階の違いによる一定の傾向は見られなかった。以上より、うま味と酸味の感じ方は特に低濃度で水の硬度の違いによる影響を受けるため、五味識別テストを行う際には、テストの目的に応じて呈味物質の濃度や水について十分に検討する必要があることが示唆された。
著者
伊藤 有紀 福留 奈美 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.351-358, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

一汁三菜の食事に適した食器や盛り付けの要点を調理初心者に示すことを想定し,好ましい食器の組み合わせの数値的な指標を明らかにすることを目的とした。まず,もっとも影響が大きいと考えられる飯碗・汁椀以外の食器の大きさについて調べた。飯碗・汁椀の面積(=大きさ)を1.0としたときの三菜(主菜,副菜,副副菜)の大きさ比を種々に変化させて組み合わせた10通りの写真を作成した。料理を盛り付けた状態で女子大学生に好ましさを評価させたところ,主菜2.5:副菜1.5:副副菜1.0の食器の大きさ比がもっとも評価が高く,これを食器の大きさの基準とした。次に,大きさが同一のときの形の影響を調べるためコンジョイント分析を行なった。基準の大きさ比で三菜の食器の形の組み合わせを変えた8通りの写真の好ましさを調理実習指導経験者に評価させたところ,主菜の食器が縦1:横1.6(楕円や長方形)で,副菜の食器が縦1:横1(正円形や正方形)の組み合わせが好まれた。
著者
伊藤 有紀 佐野 睦夫 福留 奈美 大井 翔 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.209-216, 2016 (Released:2016-04-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

We aimed to determine the appropriate way of arranging rice in a bowl for the purpose of teaching how rice should be served. To determine the three-dimensional arrangement of rice in a bowl, we attempted to measure the height of rice in a bowl using a depth sensor defined as “Nakataka-do”, which is an index of the particular arrangement of rice in a bowl, where the center is higher than the edge. In addition to this, we defined “Tobidashi-do” as the degree of roughness of the contour of the rice. The weight and shape index of 29 rice samples were measured by 21 undergraduate students and 8 cooking teachers to determine the arrangement of rice in a bowl. The results of the analyses are as follows: The “Tobidashi-do” of the students’ samples were higher than those of the teachers. The range of “Nakataka-do” of 100~120 g rice samples showed a wide distribution. It was suggested that an appropriate arrangement of 100~120 g rice samples in a bowl is possible by being aware of “Nakataka-do.” Cluster analysis showed three distinct sample arrangements. On the basis of these results, we demonstrated the appropriate arrangement of rice in a bowl.
著者
伊藤 有紀 佐野 睦夫 福留 奈美 大井 翔 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.209-216, 2016

We aimed to determine the appropriate way of arranging rice in a bowl for the purpose of teaching how rice should be served. To determine the three-dimensional arrangement of rice in a bowl, we attempted to measure the height of rice in a bowl using a depth sensor defined as "Nakataka-do", which is an index of the particular arrangement of rice in a bowl, where the center is higher than the edge. In addition to this, we defined "Tobidashi-do" as the degree of roughness of the contour of the rice. The weight and shape index of 29 rice samples were measured by 21 undergraduate students and 8 cooking teachers to determine the arrangement of rice in a bowl. The results of the analyses are as follows: The "Tobidashi-do" of the students' samples were higher than those of the teachers. The range of "Nakataka-do" of 100~120 g rice samples showed a wide distribution. It was suggested that an appropriate arrangement of 100~120 g rice samples in a bowl is possible by being aware of "Nakataka-do." Cluster analysis showed three distinct sample arrangements. On the basis of these results, we demonstrated the appropriate arrangement of rice in a bowl.
著者
福留 奈美 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.152, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】調理操作を表す用語・表現の中でも切り方を表す用語・表現は多種多様に存在し、調理初心者は食材や料理によって異なる幅・太さ・長さなどサイズの範囲がわかりにくい。本研究では野菜類・いも類・きのこ類の切り方に着目し、①切り方の用語・表現の食材別用法の整理、②解説書や料理書に見られるサイズ表現の調査、③用語・表現と実際のサイズを照合するための評価法の検討、を目的として調査実験を行った。【方法】1999年以降に出版された切り方の解説書17冊に出現する切り方の用語・表現を食材別に調べた。また2009年度高校家庭科教科書20冊に出現する切り方の用語・表現をサイズに関する修飾表現も含めて抜き出し、用法を整理した。さらに、せん切りなどの線状、みじん切りなどの角状に切る切り方が解説書や料理書においてどのようなサイズ表現がなされているかを調べた。また1~5mm角のニンジンを模した合成樹脂のフードモデルを作成し、調理指導者を対象として用語・表現との対応評価実験を行った。【結果】解説書に登場した切り方の用語・表現は200種以上あり、輪切り、せん切りなどの一般的な切り方、特定の食材との対応が強い飾り切り、フランス料理の切り方のカタカナ表記などが含まれた。家庭科教科書のレシピ表現では、長さや太さの数値的表現、形容詞・副詞による修飾語の有無など様々であった。線状・角状の切り方についてはサイズに幅があり、食材によっても違うため、切り方の解説書や料理書では厳密に特定できていないことがわかった。また切り方の用語・表現と実際のサイズを照合させる方法として様々な切り方のフードモデルをサンプルとして使用することは有効であることが示された。
著者
畑江 敬子 中谷 圭子 福留 奈美 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.155-162, 1999-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

旧本人とフランス人の食物に対するおいしさの評価基準の違いを客観的に表すために, 前報のアンケートの結果に基づいて官能検査を行った.パネルは野菜 4 種, パスタ 2 種, 焼き物 3 種, 飯 4 種について, 加熱時間を 5~6 段階に変えた試料の好ましさをそれぞれ評価した.日本人パネルは野菜の緑色を重視し, 加熱時間の短い硬めのものを好んだ.フランス人パネルは加熱時間の長い軟らかめの野菜を好む傾向にあった.焼き物の焦げ色の強いものをフランス人パネルは好む傾向にあった.飯の色とテクスチャーに対する好みは, 日本人パネルとフランス人パネルでは全く異なった.いずれの場合も日本人パネルの好みは特定の試料に集中し, フランス人パネルの好みは広範囲に分布した.
著者
福留 奈美 小西 文子 五藤 泰子 野口 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】高知県のおやつの特徴をとらえることを目的に調査した。本研究では、高知県全域でみられる甘味としてのサツマイモの利用と糯米・小麦を使用したおやつに着目し、多様性と分類を示す。<br /><br />【方法】日本調理科学会H24-26年「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」研究の一環として、昭和30~40年代の高知県の食事について聞き取り調査を行った。地域の食文化研究資料を収集し、聞き取り調査の結果と合わせて特徴的なサツマイモの加工品と糯米・小麦を使ったおやつを抜き出し、加熱・乾燥工程、名称の違い等について分類・整理した。また、レシピ情報や保護・継承活動の状況についても部分的に示した。<br /><br />【結果】高知県全域で干しいも「東山」が食べられており、温暖な気候で育つサツマイモの加工品は甘味が少なかった時代のおやつとして欠かせなかった。東山でも、ゆでてから厚めに切って干すものと小ぶりのいもを煮て丸ごと干すものがある。ゆで汁にも糖分が出るので煮詰めて「いも飴」にして食べた。1cm厚さに切って藁を通しゆでて干したものを「ゆでベラ/ほしか」と呼ぶ地域や、生のまま薄く切って干した「かんば」の利用、里芋と蒸してついた「けんかもち」、糯米と蒸してついた「いも餅/かんころもち/いものもち」等、加熱・乾燥工程にも多様性がある。県が推進する「土佐の料理伝承人制度」、地域の食育活動、『土佐の味ふるさとの台所』(1987年初版、2016年復刊)等のレシピ集やWeb情報等で多様なおやつが保護・伝承されてきた。しかし、「山椒餅」のように、地域の人びとが懐かしく思う当時の味は継承されず新たなレシピが独自に紹介される例もあり、当時の記録を残す作業の必要性を再認識した。
著者
脇田 美佳 前田 文子 濱田 陽子 高橋 恭子 瀬尾 弘子 福留 奈美 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17, 2004

[目的] 天丼、うな丼など丼物は古くから日本人になじみがある。また、近年多忙なサラリーマンや、手軽でおいしいものを求める若者のライフスタイルにマッチするためか、丼物のファーストフード店がブームである。本研究では丼物の種類や食材の種類、食べ方についての実態を知り、丼物が食生活の中で果たしている役割と新たな可能性を探るとともに、丼物と若者の食との関わりについて考察することを目的とした。<br>[方法] 全国の大学、短大等の学生及び職員に、1年間に家庭で食べた丼物・味付け飯についてアンケートを行った。調査期間は2003年10月から11月、1371名から回答を得た。<br>[結果] 家庭でよく食べられる丼物は親子丼、牛丼、カツ丼、天丼であり、これらについての地域差はほとんどなかった。また、親子丼、他人丼、そぼろ丼は手作りが多いのに対し、うな丼、牛丼、天丼、ビビンバなどは、調理済み食品あるいは半調理品の利用が多かった。ひとつの丼に材料として用いられる野菜は0から2種類、肉・魚・卵については1から2種類が多かった。丼物を家庭で食べるとき、22%の人は丼のみを食べ、丼に1品を添えて食べる人は44%で、添えられる品は汁物が多く、2品を添える人は26%で、汁物に加えて漬物・野菜・海草料理を食べる例が多かった。丼物を好きな人は82%、家庭で食べる頻度は月1から2回以上が66%であった。食べる理由は、好きだから、調理や後片づけが簡単という理由が多く、栄養的なバランスをとりやすいからという理由は少なかった。丼物は汁物や野菜料理等と組み合わせて食べることで栄養のバランスもとれ、また、手軽に楽しめることから、食事が偏りがちな若者の食生活改善にも有効である。