著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2013 (Released:2013-11-05)

Webサイトなどのインタフェースに関して「美しいものは使いやすいだろう」と判断してしまう美的ユーザビリティ効果は、これまで多数の研究で報告されてきた。また、Webサイトの美しさには質の異なる2種類の美しさがあることが明らかになってきた。美しさについての研究で蓄積された知見を統合すると、そのうち1種類は、流暢性と呼ばれる情報処理の容易さを指す概念によって規定される美しさであると推測された。そこで、本研究では美的ユーザビリティ効果における流暢性の役割を検討した。実験参加者は流暢性が異なる複数のWebサイトを提示され、その美しさと使いやすさとを評定した。その結果、流暢性は使いやすさの判断に対して直接影響し、かつ、美しさを通して間接的にも影響することが示された。さらに、美しさについて詳細に分析したところ、使いやすさの判断により強く影響するのは、流暢性に規定される美しさであることが判明した。
著者
高橋 知世 北神 慎司 宮代 こずゑ 原田 悦子 須藤 智
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.1-8, 2012-05-10

画像認証は,新しい電子的本人認証システムの1つである.このシステムの利用者は,思い出の写真やイラスト等を予め登録しておき,認証時に登録画像をディストラクタ画像の中から正しく選び出すことによって本人認証を行う.画像認証は従来のパスワード等と比べて,容易かつ強固な本人認証を実現できるものとして期待されている.画像認証のシステムの強度は登録画像の特性に大きく依存する.しかし,実際にどのような画像が登録されうるか,また,画像選択にどのような心理的要因が影響を及ぼすかについては未だ明らかにされていない.そこで本研究では,大学生47名に擬似的に認証画像の登録を求め,その後,個別の画像について登録の意思や登録への抵抗感を尋ね,画像への思い入れや認証画像としての適切性を自己評価させる質問紙調査を行った.その結果,画像を登録する意思には,登録画像の認証画像としての主観的な適切性,登録への抵抗感,画像への愛着,自分の登録画像であることの認識容易性といった要因が影響することが示された.したがって,画像認証システムの強度を向上させるためには,登録への抵抗感の低減させる必要があると考えられる.また,どのような画像が認証に適しているかについて,利用者への周知を行うべきであろう.The picture-authentication system is a new system that users can identify themselves in cyberspace by correctly picking out pictures registered by themselves. The picture-authentication is safer and easier to use than systems using a password because memorable photos and illustrations can be used instead of a letter string that are likely to be forgotten. However, no studies have revealed features of the pictures and psychological variables that may influence users' decision to choose the pictures. Thus, we asked participants (47 undergraduate students) to register their own pictures to a trial picture-authentication system, and examined their willingness to actually resister the pictures on the system after a two-months-interval. Results indicated that their willingness was positively related to the feelings of appropriateness, attachment, and identifiability of the pictures, and was negatively related to the feeling of resistance for the system. We suggest that it is important to reduce the resistance for registration and to popularize what kind of pictures are appropriate for the authentication.
著者
高橋 知世 大塚 幸生 服部 陽介 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.34-34, 2011

これまで,エレベータ開閉ボタンの押し間違いという問題の解決を目的とした研究では,主に,開閉ボタンに用いられているピクトグラム(マーク)のデザイン面に焦点が当てられてきた.しかしながら,押し間違いの原因は,デザイン面のみならず,それを認知する人間側にもあると考えられる.そこで,本研究では,注意研究の基礎的なパラダイムを援用することによって,タイムプレッシャーおよび視点移動という認知的要因が,エレベータ開閉ボタンの押し間違いにどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果,マークを単独呈示した実験1,対呈示した実験2のいずれにおいても,視点移動の影響が最も大きく,逆に,タイムプレッシャーの影響は最も小さいことが分かった.これらの結果から,押し間違いというエラーを低減するためには,たとえば,開閉ボタンの配置上の工夫として,視点移動が最小限ですむように配慮すればよいということが考えられる.
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2014 (Released:2014-10-05)

美的ユーザビリティ効果とはWebサイトなどのインタフェースに対して、美しいものは使いやすいだろうと判断してしまう現象である。美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムはいまだ未解明であるが、大半の美しさが流暢性と呼ばれる情報処理の容易さに規定されることを踏まえると、流暢性によって美的ユーザビリティ効果を説明できる可能性があると考えられた。本研究では刺激として8種類のWebサイトのコントラストを4段階に変化させたものを用いた。参加者はこれらの刺激から8枚を順次提示され、美しさと使いやすさを測定する質問に答えるよう求められた。結果として、本研究でも美的ユーザビリティ効果が生じることが確認された。また、流暢性が高い刺激を提示された時ほど、美しさの判断および使いやすさの判断が高くなることも示された。よって、流暢性は美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムを解明するための重要な要因だと考えられる。