著者
中嶋 智史 請園 正敏 須藤 竜之介 布井 雅人 北神 慎司 大久保 街亜 鳥山 理恵 森本 裕子 高野 裕治
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.603-613, 2020 (Released:2020-02-25)
参考文献数
29
被引用文献数
5

The 20-item prosopagnosia index (PI20) was developed for assessing congenital prosopagnosia, which is characterized by severe facial recognition deficits in the absence of any obvious neurological deficit. We aimed to develop a Japanese version of the PI20 (PI20-J) scale and evaluate its validity and reliability. In study 1, we confirmed the internal consistency, test-retest reliability, and concurrent validity of the scale. In study 2, we examined the relationships between PI20-J score and facial recognition performance and found a moderate correlation between them. In study 3, we examined whether the PI20-J score is related specifically with facial recognition performance, or with general object recognition performance. We found that participants with a high PI20-J score showed weaker facial recognition performance than those with a low PI20-J score. In contrast, the object recognition performance did not depend on the score. Our results suggest that the PI20-J score is related specifically with facial recognition performance. We conclude that PI20-J is highly reliable and valid as a self-reported measure for congenital prosopagnosic traits.
著者
北神 慎司 菅 さやか KIM Heejung 米田 英嗣 宮本 百合
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.19, 2009

日本では,特に,トイレを表すマークにおいて,男女の区別は「形(男女それぞれのシルエット)」によって表されるだけでなく,男性用には青などの寒色系,女性用には赤などの暖色系の色を用いることが多い.このように,色によって,トイレの男女を区別するというデザインは日本特有のものであり,欧米ではあまり見られない.そこで,本研究では,日本人の大学生を対象として,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかについて,ストループ様課題を用いて検討した.その結果,ピクトグラム(トイレマーク)条件では,赤,ピンク,青,黒の各彩色条件において,男女の意味判断に要する反応時間に差が見られた(暖色系は「男>女」,寒色系は「男<女」).これらの結果は,日本人にとって,トイレマークの男女を識別する際の情報として,色が非常に重要であることを示唆するものと考えられる.
著者
北神 慎司 菅 さやか KIM Heejung 米田 英嗣 宮本 百合
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第8回大会
巻号頁・発行日
pp.28, 2010 (Released:2010-09-01)

北神ら(2009, 認知心)では,日本人を対象として,ストループ様課題を用いて,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかを検討している.その結果,赤やピンクの男性マークや,青や黒の女性マークにおいてストループ様干渉が起こることが示された.つまり,日本人にとって,トイレのマークを認知する際,色情報が非常に重要であることが示唆されている.それでは,色によって,トイレの男女を区別する文化がない場合,ストループ様干渉は生じないのだろうか.本研究では,アメリカ人の大学生を対象として,ストループ様課題を用いて,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果,アメリカ人においても,ピンクで彩色された男性マークにおいて,ストループ様干渉が示された.先行研究の結果と併せて,これらの結果は,色のジェンダー・ステレオタイプという観点から考察された.
著者
中嶋 智史 請園 正敏 須藤 竜之介 布井 雅人 北神 慎司 大久保 街亜 鳥山 理恵 森本 裕子 高野 裕治
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18235, (Released:2019-11-15)
参考文献数
29
被引用文献数
5

The 20-item prosopagnosia index (PI20) was developed for assessing congenital prosopagnosia, which is characterized by severe facial recognition deficits in the absence of any obvious neurological deficit. We aimed to develop a Japanese version of the PI20 (PI20-J) scale and evaluate its validity and reliability. In study 1, we confirmed the internal consistency, test-retest reliability, and concurrent validity of the scale. In study 2, we examined the relationships between PI20-J score and facial recognition performance and found a moderate correlation between them. In study 3, we examined whether the PI20-J score is related specifically with facial recognition performance, or with general object recognition performance. We found that participants with a high PI20-J score showed weaker facial recognition performance than those with a low PI20-J score. In contrast, the object recognition performance did not depend on the score. Our results suggest that the PI20-J score is related specifically with facial recognition performance. We conclude that PI20-J is highly reliable and valid as a self-reported measure for congenital prosopagnosic traits.
著者
北神 慎司 菅 さやか KIM Heejung 米田 英嗣 宮本 百合
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.19, 2009 (Released:2009-12-18)

日本では,特に,トイレを表すマークにおいて,男女の区別は「形(男女それぞれのシルエット)」によって表されるだけでなく,男性用には青などの寒色系,女性用には赤などの暖色系の色を用いることが多い.このように,色によって,トイレの男女を区別するというデザインは日本特有のものであり,欧米ではあまり見られない.そこで,本研究では,日本人の大学生を対象として,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかについて,ストループ様課題を用いて検討した.その結果,ピクトグラム(トイレマーク)条件では,赤,ピンク,青,黒の各彩色条件において,男女の意味判断に要する反応時間に差が見られた(暖色系は「男>女」,寒色系は「男<女」).これらの結果は,日本人にとって,トイレマークの男女を識別する際の情報として,色が非常に重要であることを示唆するものと考えられる.
著者
小川 佳純 井藤 寛志 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Guénguen (2014) は身体魅力の中でも特にハイヒールに着目して研究を行っており,女性がハイヒールを履くことが男性の援助行動に影響を及ぼすことを報告した最初の論文である。今回は日本においてGuéguen (2014)の実験3を追試し実際にフィールド実験を行うことで,この結果が通文化的な結果であるのかということを検討することを目的とした。場所は日本の愛知県豊橋市で行い,協力者の女性は0㎝5㎝9.5㎝の3種類の靴を履き,実験参加者の前で気づかないふりをしてわざとパスケースを落とし,拾ってもらう回数と援助までの時間がヒールの高さによって違いが生じるのかということを検証した。結果は援助率と援助までの時間においてヒールの高さで違いは見られなかった。このことから考えられることとして文化差の他に実験の状況の統制の要因が挙げられる。傍観者効果の影響や,実験参加者の年齢まで視野に入れる必要があった。
著者
井関 紗代 北神 慎司
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
pp.202303.003, (Released:2023-12-20)
参考文献数
34

補償的コントロール理論(compensatory control theory)によると、何らかの状況的要因によって、コントロール感が低下した場合、そのコントロール感をベースラインまで戻そうと動機づけられ、一時的にコントロール欲求が高まる。しかし、日本人のコントロール欲求はもともと低いことが指摘されている。したがって、日本人の場合、コントロール感が低下しても、それを補完しようとする動機が弱い可能性が示唆される。そこで、研究1では、日本人を対象に、コントロール感(高、低)を操作し、一時的にコントロール欲求が高まるのか検討したところ、その再現に成功した。研究2では、低下したコントロール感を補完する方略としてカスタマイズに着目した。コントロール感の低下により、一時的にコントロール欲求が高まっている場合、カスタマイズ商品に対する心理的所有感が高くなるという予測に基づき検討したが、コントロール感の操作による違いは確認されなかった。さらに、カスタマイズの有無にかかわらず、コントロール感高条件(vs低条件)で心理的所有感が高くなることが示された。
著者
井関 紗代 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.115, 2017 (Released:2017-10-16)

ただ商品を触るだけで,自分の物であるかのような感覚(所有感)が生じることがわかっている. 本研究では,商品を触るイメージをするだけで,所有感が高まり,その結果,商品に支払ってもよい金額(支払意思額)も高まるのか検討した. さらに,エフェクタンス動機づけが,触るイメージの効果に及ぼす影響についても検証した. エフェクタンス動機づけとは,環境をコントロールしたいと動機づけられることであり,所有感を抱くことは,そのコントロール欲求を満たすことにつながると考えられる.結果として,触るイメージをすると支払意思額が高まり,その効果は,商品に対する所有感を完全媒介していることが示された.さらに,エフェクタンス動機づけが高まると,所有感が高まり,支払意思額に影響を及ぼすことも確認された. よって,マーケティングにおいて,触るイメージの想起やエフェクタンス動機づけを高めることが有益であると考えられる.
著者
後藤 理咲子 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.81-90, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

本研究の目的は,嘘に伴う認知的負荷が有効視野を狭めるかについて検証することであった.実験では,参加者は嘘つき群と統制群のいずれかに割り当てられた.参加者はディスプレイに提示されたトランプカードを記憶した後,カードと同じ内容(一致条件)または異なる内容(不一致条件)を回答し,回答後に現れる光点の位置を同定するよう求められた.嘘つき群と統制群の相違は教示であり,嘘つき群の参加者は嘘をつく時には真実を話しているかのように振る舞い,実験者を騙すよう求められたが,統制群の参加者は求められなかった.光点の正答率から相対的に有効視野を測定した結果,嘘つき群は統制群よりも有効視野が狭まったが,一致条件と不一致条件の有効視野に差は示されなかった.以上の結果は,意図的に相手を騙すこと(嘘の意図性)による負荷は有効視野を狭めるが,事実と異なる内容を回答すること(嘘の虚偽性)および嘘をつく時に真実らしく振る舞うことによる負荷は有効視野を狭めないことを示唆するものである.
著者
北神 慎司 村山 航 坂口 結香 武野 全恵 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2019 (Released:2019-10-28)

メタ動機づけに関する先行研究において,金銭的報酬などの外発的動機づけを伴わない課題を行った後の内発的動機づけの自己評価に比べて,課題を行う前の予測的な自己評価が一貫して低いことがさまざまな実験によって示されている。すなわち,内発的動機づけは過小評価される傾向があることが明らかとなっており,これはメタ認知が概して不正確である知見と一致するものである。本研究では,課題前の内発的動機づけの予測的な自己評価を行う前に,「内発的動機づけが過小評価されやすい」ことを事前警告として教示することによって,過小評価が修正されうるかどうかを検討することを目的として実験を行った。その結果,事前警告の効果は現れず,課題に対する自己評価だけでなく課題成績においても内発的動機づけは過小評価されることが示された。つまり,先行研究の知見とあわせると,このような現象は極めて頑健であると考えられる。
著者
細川 亜佐子 太田 直斗 北神 慎司
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.76-82, 2023 (Released:2023-04-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

The present study examines whether the activation of visuospatial perceptual processing affects empathic responses during narrative comprehension. Specifically, using a dual-task method, we investigated the effects of load on a visuospatial memory task and capacity of visuospatial working memory on empathic response rating scores for reading. Consequently, the results revealed that the effects of load on the visuospatial memory task reduced empathic response scores for reading in the higher visuospatial working memory capacity. The results suggest that the activation of visuospatial perceptual processing influence empathic responses during narrative comprehension. Moreover, elaboration through activation of visuospatial perceptual processing plays an important role in empathic responses, particularly for readers having a large capacity of visuospatial working memory.
著者
北神 慎司 村山 航
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2011-10-02)

自己効力感 (self-efficacy) とは,課題をやり遂げる自信のことであり,これが高いと課題への動機づけが高まり,困難な課題にも粘り強く取り組むようになることが指摘されている。これまで,自己効力感を高めるプログラムはいくつも開発されているが,いずれもコストと時間がかかることが問題として挙げられる.本研究では,課題の図と地のコントラストを操作することにより,知覚的流暢性 (perceptual fluency) を高めるだけで,自己効力感が高まり,課題への粘り強さが高まることを示した。研究1では,知能検査の課題を,低いコントラストで呈示する条件と高いコントラストで呈示する条件で比較したところ,低コントラスト条件に比べて高コントラスト条件では,課題に対する自己効力感が高いことが明らかになった。研究2では,知覚的流暢性の操作が行動に与える影響を調べるため,知能検査の課題に解決不可能課題を挿入し,どちらの条件で実験参加者が粘り強く取り組むかを比較した。その結果,高コントラスト条件の課題の方が,低コントラスト条件の課題よりも,より長く取り組まれることが明らかになった。
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2013 (Released:2013-11-05)

Webサイトなどのインタフェースに関して「美しいものは使いやすいだろう」と判断してしまう美的ユーザビリティ効果は、これまで多数の研究で報告されてきた。また、Webサイトの美しさには質の異なる2種類の美しさがあることが明らかになってきた。美しさについての研究で蓄積された知見を統合すると、そのうち1種類は、流暢性と呼ばれる情報処理の容易さを指す概念によって規定される美しさであると推測された。そこで、本研究では美的ユーザビリティ効果における流暢性の役割を検討した。実験参加者は流暢性が異なる複数のWebサイトを提示され、その美しさと使いやすさとを評定した。その結果、流暢性は使いやすさの判断に対して直接影響し、かつ、美しさを通して間接的にも影響することが示された。さらに、美しさについて詳細に分析したところ、使いやすさの判断により強く影響するのは、流暢性に規定される美しさであることが判明した。