著者
本田 秀仁 松香 敏彦 植田 一博
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2015 (Released:2015-10-21)

日本語には、漢字・カタカナという異なる表記法が存在しており、見た目・使用法、それぞれ大きく異なる。本研究では、表記が思考に与える影響について検討を行った。具体的には、3都市名を漢字(例:岡山・広島・長崎)またはカタカナ(例:オカヤマ・ヒロシマ・ナガサキ)で呈示して、同じグループであると思う2都市の選択、ならびに選択理由の回答が求められる都市カテゴライズ課題を実施し、表記の違いがカテゴリー化に与える影響ついて検討を行った。結果として、漢字で都市名を呈示した場合は地理的近接性に基づいたカテゴリー化(岡山・広島を“中国地方だから”という理由で選択する)が行われやすく、一方でカタカナ呈示時は文脈的類似性(ヒロシマ・ナガサキを“原爆が投下されたから”という理由で選択する)に基づいたカテゴリー化が行われやすかった。以上、表記の違いによって異なる思考プロセスが生み出されることが明らかになった。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2015 (Released:2015-10-21)

「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。
著者
松本 昇 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.104, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では,高思考抑制傾向者における自伝的記憶の具体性の減少を,検索誘導性忘却効果によって説明できるか否かについて検討した。参加者は思考抑制頻度をたずねる質問紙へ回答した後,ポジティブ,ネガティブそれぞれ2つずつのエピソードを視聴した。その後,その中の1つのエピソードについて1週間にわたって反すうをするように教示を受けた。1週間後,自由再生課題と手がかり再生課題を行った。その結果,思考抑制得点が高い者ほど,ネガティブエピソードを反すうした際に,ポジティブエピソードがより抑制されることが示された。この結果は,思考抑制とその逆説的効果として生じるネガティブ記憶の侵入,そして反すうを繰り返すことによって,具体的なポジティブ記憶へのアクセシビリティが低下する可能性を示している。
著者
斎川 由佳理 仁平 義明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.47, 2015 (Released:2015-10-21)

記憶を補助する外部手段として「手に直にメモを書く行動」について,なぜ ある人はこの手段を用いて,ある人は用いないか,大学生を対象とした質問紙調査によって,その要因をパーソナリティ要因も含めて総合的な視点から分析を行った。その結果,「手にメモをする行動」をとる群の人ほど,他のいくつかの「し忘れ防止手段」も併用していることが明らかになった.また,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの要因については,メモ経験群は,ものごとに現実的に対応する傾向である,「経験への開放性」のスコアが有意に高い傾向があった.すべての結果を総合すると,手にメモをするのは,その人が失敗回避傾向がある気の弱い人だからというよりは,「確実に予定を果たそうとする現実的な行動をとる人」だからというべきだと考えられた.
著者
楊 琬璐 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2015 (Released:2015-10-21)

音楽と色彩の構成要素を系統的に変化させ,それぞれ単独,あるいはその組み合わせが気分や印象に及ぼす影響や,組み合わせの相応しさを決定する要因について調べた。その結果,長調でテンポの速い曲とvivid toneは覚醒度を上げ,長調でテンポの遅い曲とdull toneは眠気を生じさせた。また,長調でテンポの遅い曲とvivid toneの暖色系,pale toneの全色はポジティブな心理的効果を促進させ,短調でテンポの遅い曲とdull tone全色はネガティブな気分を喚起した。音楽のみ条件と音楽に相応しい色の組み合わせに比べ,音楽に相応しくないと感じられる色を同時に呈示すると,ネガティブな気分が増強された。各音楽に相応しい色彩の組み合わせの結果から,音楽と色彩の組み合わせの相応しさを決める要因として,各音楽や色彩に対する好み,喚起される感情の共通性,および印象評価の共通性の3つが挙げられる。
著者
原田 悦子 運天 裕人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.21, 2015 (Released:2015-10-21)

高齢者は人工物の創発的な利用が困難であるとされ(赤津・原田,2008),それが高齢者のICT機器利用の学習を阻害していると考えられる.そこで,本研究では高齢者の創発的な利用を促進する可能性として,若年成人との相互作用をとりあげ,高齢者同士,若年成人同士のペアと比較した際に,高齢者-若年成人ペアにおいてどのような創発的活動が見られるのか,検討を行った.各8組のペアにカプラ(単純な積み木)を渡し,自由に遊ぶという課題を行ったところ,高齢者-若年成人ペアでは,早い時期からさまざまな置き方を試みる,抽象化された作品を作る,などの創発的な行動が見られたのみならず,自分達の作品や活動に対する肯定的な評価や満足感が示された.高齢者-若年成人ペアのこうした特長は若年成人同士のペアよりもさらに高く,特に初対面の若年成人よりも初対面の「異世代」との活動は,コミュニケーションや活動を促進する可能性が示された.
著者
赤嶺 亜紀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.140, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では女性大学生の化粧が対人行動に及ぼす影響を検討するため,女性実験参加者の化粧を操作し,前方に加え,後方と左右の4方向のパーソナルスペースを測定した。またSTAI日本語版状態不安尺度(清水・今栄,1981)用いて,化粧が感情と対人積極性に及ぼす効果を検討した。
著者
井口 望 鈴木 奈津子 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.82, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では心理学的にどのような警告音が人々の適切な判断や行動を促進するのかを検証するために、音によって知覚される緊急性を操作し、難しい認知課題の遂行に与える影響を明らかにする実験を行った。実験では「音刺激によって同じ刺激に対する反応を切り替える」という場面を想定し、ストループ様サイモン課題を用いた。課題遂行中に提示される音刺激(緊急性高/低)を合図に課題の難易度(難/易)を切り替えるように教示した。その結果、緊急性が高い音の呈示後3試行において、課題の難度が高いとき、反応時間及びエラー率が増加した。このことから、音の緊急性知覚の処理と課題遂行に必要な注意資源が共有されている可能性を指摘することができた。緊急性の高い音の近く処理に多くの資源を消費されてしまうと、難しい課題遂行に必要な注意資源が枯渇し、課題遂行に干渉すると考えらえる。
著者
三雲 真理子 水政 沙貴
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では、携帯情報端末上のアプリを使用してバーチャルペットとの触れ合いによってどのような気分変化が現れるかについて、女子大学生にバーチャルペットと触れ合う前後の気分評定(POMS短縮版30項目を使用)を求めて検討した。その結果、本研究で使用したような単純な育成アプリであっても隙間時間に利用するだけで緊張‐不安・抑鬱‐落ち込み・怒り‐敵意・疲労・混乱のような気分が緩和され、一時的な癒しやリフレッシュにつながることがわかった。また、このようなバーチャルペットによる気分改善効果は、日常的に育成アプリを使用している人やペットを飼育していない人にとってのほうが、やや大きく現れることが示唆された。このことから、ペットに触れる機会が減っている我々にとって、バーチャルペットと短時間触れ合うことは、直接ペットに触れ合う代替機能を果たすとは言えないまでも一時的な癒しやリフレッシュ効果はもつと考えられる。
著者
宮城 円 中尾 敬 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.142, 2015 (Released:2015-10-21)

同程度に好ましいアイテムから好ましい方を選択すると,自らが選んだものの選好は増加し,選ばなかったものの選好は減少する。この現象は“選択による選好の変化”と呼ばれ,近年自らが選択したものの選択率を上げるといった強化学習によって説明できることが示唆されている。抑うつ傾向者では,ギャンブル課題等において強化学習による価値の学習が生じにくくなることが知られているが,選択による選好の変化について抑うつ傾向との関連は明らかになっていない。本研究は選択による選好の変化と抑うつ傾向との関連についてBlind choice paradigmを用いて検討した。その結果,抑うつ傾向者ほど選ばなかったものの選好が減少しにくいことが明らかとなった。一方,選んだものの選好の変化と抑うつ傾向との関連はみられなかった。このことから,選んだものと選ばなかったものの選好の変化は異なる過程により生じている可能性が示唆された。
著者
満田 隆 阪口 遼平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2015 (Released:2015-10-21)

画像選好判断において,対象が顔の場合は見慣れた画像を好む傾向(親近性選好)が生じ,対象が風景の場合は初めて見る画像を好む傾向(新奇性選好)が生じる。本研究はその詳細を明らかにするために,まず,魅力が大変高いモデル,魅力の高い高校生,低い高校生の顔写真を用いた選好判断課題を行い,顔の魅力度と親近性選好の関係を調べた。その結果,魅力の低い顔は高い顔と比べて親近性選好が強く生じた。また,魅力が大変高い顔では親近性選好と新奇性選好のいずれも生じなかった。つぎに,ティアラ,リビング,家具,住宅街,銃,食器,星雲,抽象画を用いた選好判断課題を行った。その結果,リビングと星雲で新奇性選好が生じ,その他のカテゴリでは偏りは生じなかった。また魅力度と新奇性選好に相関があった。以上の結果より,魅力の低い顔画像では親近性選好,顔以外の画像では画像全体が変化する魅力の高い画像で新奇性選好が表れることが示された。
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.69, 2015 (Released:2015-10-21)

迷信的信念に関する先行研究の多くは,超常信奉が思考スタイルによって予測可能であることを示している。本研究は,これら先行研究で見られた信念と認知能力・スタイルの間の関連性が,疑似科学的信念,特に通俗的心理学神話においても観察されるかどうかを検討した。103名の学部学生が,認知スタイル・能力,科学リテラシーおよび通俗的心理学神話への信奉の程度を測定する質問に回答した。重回帰分析の結果,通俗的心理学神話への信奉は,分析的思考スタイルのみによって予測されることが示され,直観的思考スタイル,認知能力,科学リテラシーは予測力を持たないことが示された。この結果は先行研究に沿っているものの,分析的思考傾向が強い者ほど信念も強いという,先行研究とは逆のパターンが観察された。この違いは,先行研究との参加者集団の違い,特に文化に依拠した思考スタイルの違いから生じた可能性がある。
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。
著者
清河 幸子 三澤 美翔 鈴木 宏昭
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では,学習時に,刺激を視覚呈示することに加えて,親近性の高いメロディに合わせて聴覚呈示することが記憶に及ぼす影響を検討した。同様の検討を行った清河・三澤・鈴木 (2014) では,刺激の視覚呈示に加えて童謡「ふるさと」に合わせて聴覚呈示を行った条件(替え歌条件)において,読み上げ音声の聴覚呈示を追加した条件(読み上げ条件)や視覚呈示のみを行った統制条件に比較して自由再生課題の成績が高いことが示された。この結果は,メロディにより記憶が促進されたものと解釈されたものの,原曲の歌詞が手がかりとなった可能性が考えられた。そこで,本研究では歌詞のない原曲を使用することで歌詞と刺激の類似性が手がかりとして作用する可能性を排除した。その結果,歌詞のない原曲を用いてもメロディに合わせて聴覚呈示を加えることの促進効果が確認された。この結果は,メロディ自体が記憶を促進することを示唆している。
著者
山岸 未沙子 青木 宏文 田中 貴紘 高橋 一誠 米川 隆 金森 等
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究は,運転支援や機能訓練に役立てる知見を得るために,高齢ドライバの人間特性を多角的に把握することを目的とした.本報告は,そのうち運転適性検査を用いて高齢ドライバの刺激-反応特性を検討した.50代15名,60代40名,70歳以上45名が参加し,全員にインフォームド・コンセントを行った後,認知機能検査や高齢者講習と同種の運転適性検査器を用いて7つの検査を実施した.7つ中4つの検査の反応時間と正答率を用いた分析から,60代以上は刺激数が増加すると反応は遅延し,足反応と刺激数増加が同時に生じる場合には年齢差が顕著になることが示唆された.また,青色に対するパフォーマンス低下が60代以上の反応時間と正答率でみられ,赤色に対しては反応が速くなるという色の効果が示された.以上の結果から,運転適性検査により高齢ドライバの刺激-反応特性が得られ,運転時のパフォーマンス低下につながる要因が示唆された.
著者
中村 航洋 新井 志帆子 川畑 秀明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.144, 2015 (Released:2015-10-21)

顔魅力評価は急速かつ自動的に行われることが知られている。しかし,顔魅力評価が視覚的意識を伴わない無自覚的情報処理レベルで生じている可能性を直接的に検討したものはこれまでにほとんどない。本研究では,一時的に視覚刺激の意識的知覚経験を両眼間で抑制する連続フラッシュ抑制を用いて,閾下刺激提示時の無自覚的顔魅力評価特性と顔魅力が両眼間抑制に及ぼす影響について検討した。実験では,参加者の優位眼に連続フラッシュ刺激を提示する間,非優位眼に顔刺激を提示し,参加者は顔の意識的知覚が生じていた時間を報告した。実験の結果,両眼間抑制は魅力顔よりも非魅力顔に対して長く持続し,顔の意識的知覚経験が持続していた時間は,非魅力顔よりも魅力顔に対して長かった。よって,顔魅力評価は顔の意識的知覚経験が生じる前段階の無自覚的情報処理レベルで行われ,魅力顔に対する注意捕捉は,顔の意識的知覚の持続を促進することが示唆された。
著者
高尾 沙希 有賀 敦紀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.84, 2015 (Released:2015-10-21)

我々の視覚システムは,他者の視線が向けられた位置に対して自動的に注意をシフトする(視線手がかり効果)。このように,視覚システムは顔などの社会的な刺激に対して感度が高く,非常に高速に処理することができると考えられている。本研究では,視線による注意のシフトと一般的信頼性の相関について調べることを目的とした。参加者の課題は,視線手がかりを無視しながら,顔の左右いずれかに呈示された標的の位置を報告することであった。その結果,手がかりと標的のSOAが117msの条件でのみ,視線手がかり効果が認められた。さらに,この非意図的な視線手がかり効果と一般的信頼性得点の相関係数を算出したところ,弱い正の相関が認められた。したがって,一般的信頼性は社会的刺激に対する非意図的な視覚情報処理と関連していると結論することができる。つまり,騙されやすさは比較的初期の認知プロセスに依存している可能性があることが示唆された。