- 著者
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壇 順司
国中 優治
高濱 照
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0431, 2006 (Released:2006-04-29)
【目的】足関節の関節安定化は,内外側靱帯の自動締結作用や腓骨筋及び後方深部屈筋の内外側からの締め付け作用により行われていることは周知の通りであるが,その相互作用についてはあまり知られていない.隣り合う靱帯と腱の間では,関節運動に伴いそれぞれが干渉し合いながら何らかの相互作用があると考えられる.そこで遺体を用いて足関節内外側靱帯と腱の足関節底背屈運動における相互作用について検証したのでここに報告する.【対象】熊本大学大学院医学薬学研究部形態構築学分野の遺体で,可動性(底屈60°から背屈20°)がある右4足関節,左2足関節にて標本1から3を作製し使用した.標本1:右3足関節,左2足関節を用いて,長短腓骨筋,後脛骨筋,長母趾屈筋,長趾屈筋,内外側の靱帯,関節包を残したものを使用した.標本2:右1足関節を用いて外内果の中央付近の前額面で切断したものを使用した.【方法】1)標本1を用いて内外側の矢状面より,静的な腱と靱帯の位置関係を調べた.2)標本1を用いて底屈60°から背屈20°まで他動的に動かし,腱と靱帯の関係を調べ,距骨外側面と腓骨外果内側面が接する角度を調べた.3)標本2を用いて前額面より,静的な腱と靱帯の関係を調べた.【結果】1)外側では,前距腓靭帯,踵腓靭帯(以下,CFL),後距腓靭帯があり,後距腓靭帯とCFLの表層を長短腓骨筋腱が走行していた.内側では,三角靭帯(前脛距部,脛舟部,脛踵部,後脛距部)があり,脛踵部・後脛距部(以下,DL)の表層を後脛骨筋腱が走行していた.2)底屈32.1±2.3°で,長短腓骨筋腱がCFLを,後脛骨筋がDLを圧迫し始めた.CFLとDLはこの角度から背屈で緊張し続けた.また距骨滑車の外側面にわずかな突出部があり,底屈27.1±2.3°でその突出部と外果内側面が接し,外果が外に押し出され,下脛腓関節が広がった.3)切断面で見ると,CFLと長短腓骨筋,DLと後脛骨筋が接しており,腱を起始部の方へ牽引すると靱帯が内上方へ圧迫された.【考察】まず,CFLや三角靭帯(脛踵部)は踵骨に付着しており,この靱帯が緊張すれば,踵骨は距骨に,距骨は関節窩に押しつけられ固定されることになる.つまり背屈に伴い靱帯の緊張が高くなることと長短腓骨筋腱や後脛骨筋腱がこれらの靱帯を内上方へ圧迫することで,関節の安定性が得られると考えられる.特に靱帯損傷が多い外側で,底屈約30°では骨性の安定が乏しいため,長短腓骨腱によるCFLへの圧迫作用がなければ,関節の不安定性は増大することが推察される.次に外内果の下部でCFLや三角靭帯(脛踵部)が滑車の役目を担い,底屈運動時に腱と関節中心部の距離を保ち,関節モーメントを維持することで,長短腓骨筋や後脛骨筋が効率的に活動するようにしていると推察される.つまりCFLと長短腓骨筋,DLと後脛骨筋が相互に作用し,関節の安定化や筋の活動効率に関与しているといえる.