著者
高田 三枝子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.48-62, 2008-10-01

本研究では日本語の語頭の有声閉鎖音/b,d,g/のVOT(Voice Onset Time)について,全国的に収集された音声資料を分析し,この音響的特徴の全国的な地理的,世代的分布パタンを明らかにするものである。分析の結果,祖父母世代の地理的分布から,北関東を移行地帯として間に挟み,大きく東北と関東以西という東西対立型の分布が見られることを指摘し,さらに関東以西の地域では近畿を中心とした周圏分布が見られることを提案した。すなわち古くは,東北は語頭有声閉鎖音のVOTがプラスの値となる音声すなわち半有声音として発音される地域,関東以西は逆にVOTがマイナスの値となる音声すなわち完全有声音として発音される地域として明確な地域差があったといえる。しかし同時に,世代的分布からこの地理的分布パタンが現在消えつつあることも指摘した。完全有声音が発音されていた地域では,現在全域的にVOTがより大きい値(プラス寄り)の音声に変わりつつあると言える。すなわち日本語の語頭有声閉鎖音は全国的に半有声音に統一される方向の音声変化の過程にあると考えられる。
著者
高田 三枝子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.34-45, 2006-04-01

本研究は語頭有声破裂音のVOTに注目し東北から関東にかけての地域,また話者の生年との関係を分析した。資料は1986〜88にかけて全国統一的に収集された録音資料を用いた。その結果東北と関東の間で大きな地域差が見られ,東北では話者の世代(生年)に関わらずほとんどの場合VOT値がプラスの値をとること,一方関東では世代差がみられ,生年の遅い話者ほどプラスの値をとる割合が高いことを明らかにし,さらに北関東(茨城・栃木)内を詳細に検討することによりここに見られる東北・関東間の境界が,先行研究で指摘されてきた東北的な音声音韻に関する現象の境界とほぼ一致することを指摘した。
著者
高田 三枝子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.17-30, 2007-04

本研究では日本語の語頭の有声破裂音/b,d,g/のVOT(voice onset time)について鹿児島県出身在住話者の音声を分析し,語頭有声破裂音の半有声化(VOTがプラスの値をとる現象)と,語中有声破裂音の鼻音化および語中無声破裂音の有声化との共起関係を考察した。その結果,語頭有声破裂音の半有声音化は語中有声化・鼻音化と直接的な共起関係にはないことを指摘した。また鹿児島県のVOT値比率の結果を東北,北関東,新潟北東部,関東,四国の結果と比較することにより,当該現象に関する鹿児島県の地域的タイプとしては関東や四国に代表される完全有声音統一タイプに近いが,一方高年層にやや半有声音化の割合が高く見られ,この点で中間的タイプに含める可能性と今後の更なる分析の必要性を指摘した。
著者
高田 三枝子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.48-62, 2008-10-01 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本研究では日本語の語頭の有声閉鎖音/b,d,g/のVOT(Voice Onset Time)について,全国的に収集された音声資料を分析し,この音響的特徴の全国的な地理的,世代的分布パタンを明らかにするものである。分析の結果,祖父母世代の地理的分布から,北関東を移行地帯として間に挟み,大きく東北と関東以西という東西対立型の分布が見られることを指摘し,さらに関東以西の地域では近畿を中心とした周圏分布が見られることを提案した。すなわち古くは,東北は語頭有声閉鎖音のVOTがプラスの値となる音声すなわち半有声音として発音される地域,関東以西は逆にVOTがマイナスの値となる音声すなわち完全有声音として発音される地域として明確な地域差があったといえる。しかし同時に,世代的分布からこの地理的分布パタンが現在消えつつあることも指摘した。完全有声音が発音されていた地域では,現在全域的にVOTがより大きい値(プラス寄り)の音声に変わりつつあると言える。すなわち日本語の語頭有声閉鎖音は全国的に半有声音に統一される方向の音声変化の過程にあると考えられる。