著者
山内 勝也 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.192-202, 2003-04-01
被引用文献数
12

分かり易く覚え易いサイン音をデザインするための基礎的知見を得るために,既存のサイン音を用いて,機能イメージに関するカテゴリ判断実験と擬音語表現を用いた自由記述表現実験を行った。機能イメージに関しては,主成分分析により「警報-操作」「報知」「呼出」「警告告知」「終了」の五つのイメージに集約した後,擬音語表現と音響的特徴との対応関係な検討した。その結果,警報感を伴う音は「ピピピピ」等に擬音語表現される繰り返しを伴う音あるいは「ブー」と表現される継続時間が長く倍音の豐富な音,操作のフィードバックに適するのは「ピッ」で表現される短い音,報知に適するのは立ち上りが緩やかで拗音を伴って表現される音,呼出感の強い音は「ビリリリ」等で表現される変化速度の速い周期的変動音,警告告知のイメージを伴う音は「ブー」など有声子音を用いた基本周波数が低く周波数成分が豐富な音,終了のイメージを伴う音は「ピー-ピー」等のように長音を伴った繰り返しで表現される音か,長い減衰時間を持ち「チーン」などと長音と撥音を伴う表現がされる音である等の傾向を得ることができた。
著者
片岡 寛子 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.562-571, 2020-10-01 (Released:2021-03-10)
参考文献数
20

保育施設から発生する音の影響を体系的に把握することを目的として,音環境実測調査と近隣住民に対する意識調査を行った。幼児の声や運動会の音は,多くの回答者に好感が持てると判断されたが,それらを不快に感じる回答者もいた。不快な音は,特になしとの回答が多かったが,保育士の声や送迎車の音などに対する指摘も見られた。実測調査と意識調査の対応から,保育施設から発生する音に対する好感や不快感は,その発生時間の長さやA特性時間平均音圧レベルの大きさに必ずしもよらないことが分かった。また,保育施設で行われる行事への参加経験や参加の意思がある人ほど,保育所の新設により肯定的であることが示された。
著者
岩宮 眞一郎 関 学 吉川 景子 高田 正幸
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.292-299, 2003
被引用文献数
2

テレビ番組や映画などで, ある映像シーンから別の映像シーンへ場面を転換するとき, 様々な切り替えパターンが用いられる. 本研究では, 効果音が各種の切り替えパターンの印象に与える影響を, 印象評定実験によって明らかにした. 一般に,「明るい」印象の連続的なスケール状の効果音が, 各種の切り替えパターンと調和する. とりわけ, 上昇系列の音列と拡大系の切り替えパターン, 下降系列の音列と縮小系の切り替えパターンの調和度が高い. 本研究で認められた音と映像の調和感は, 音と映像の変化パターンの一致に基づく構造的調和によるものと考えられる. さらに, 音と映像の調和度が高い視聴覚刺激は映像作品としての評価も高い. これは, 音と映像が一体となって互いの効果を高め合う協合現象によるものと考えられる. 音と映像の構造的な変化パターンの一致が調和感をもたらし, 視聴覚情報が一体のものとして理解されることで, 評価が高まるのであろう.
著者
岩宮 眞一郎 関 学 吉川 景子 高田 正幸
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.292-299, 2003-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

テレビ番組や映画などで, ある映像シーンから別の映像シーンへ場面を転換するとき, 様々な切り替えパターンが用いられる. 本研究では, 効果音が各種の切り替えパターンの印象に与える影響を, 印象評定実験によって明らかにした. 一般に,「明るい」印象の連続的なスケール状の効果音が, 各種の切り替えパターンと調和する. とりわけ, 上昇系列の音列と拡大系の切り替えパターン, 下降系列の音列と縮小系の切り替えパターンの調和度が高い. 本研究で認められた音と映像の調和感は, 音と映像の変化パターンの一致に基づく構造的調和によるものと考えられる. さらに, 音と映像の調和度が高い視聴覚刺激は映像作品としての評価も高い. これは, 音と映像が一体となって互いの効果を高め合う協合現象によるものと考えられる. 音と映像の構造的な変化パターンの一致が調和感をもたらし, 視聴覚情報が一体のものとして理解されることで, 評価が高まるのであろう.
著者
岩宮 眞一郎 渡邊 正智 高田 正幸
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.425-436, 2008-12-01 (Released:2020-01-29)
参考文献数
7

オートバイの排気音に関するアンケート調査及び音質評価実験を行い,通常オートバイを利用するライダーと利用しない非ライダーの排気音に対する意識の違いを検討した。ライダーは,力強い走りを連想させる低音域が優勢で迫力感あふれるアイドリング音,音量が大きく高音域が優勢な走行音を好む。ライダーの評価には,音から連想されるオートバイのイメージの影響がみられた。非ライダーの評価にはそのような影響はなく,排気音全般に対して不快な印象を持ち,音量が大きいほど排気音を嫌っていた。ライダーが理想とする排気音と非ライダーが不快感を覚える排気音の擬音語に共通の表現がみられることからも,両者の意識の違いが分かる。
著者
岩宮 眞一郎 高田 正幸
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

工業製品から発せられる音の感性的側面(音質)の経済的価値を評価するために,マーケティングリサーチの分野で用いられるコンジョイント分析を利用した検討を行った。本年度も,掃除機とドライヤーの稼動音を対象とした。先ず,市場調査により,これらの機械製品を特徴付ける属性(性能,デザイン,音,価格など)と水準を設定した。音属性の水準を設定する際には,A特性音圧レベルやシャープネス(音の鋭さの指標)の2種類の音響指標の値を基準としたが,A特性音圧レベルが変化したときにはシャープネスは一定であり,その逆も同様であった。全属性のさまざまな水準を直行計画により組み合わせた27種類の製品プロファイルを被験者に呈示し,各製品に対する選好度を回答させた。実験は2種類ある音属性を入れ替えて個別に行った。実験の際,音属性の各水準に対応する稼動音を被験者に聴取させた。実験には50名(男女各25名)が参加した。得られた選好度の回答結果にコンジョイント分析を適用し,製品を特徴付ける各属性の重要度や属性毎の各水準に対する効用値を求めた。各属性の重要度を比較すると,掃除機の場合,音属性をA特性音圧レベルおよびシャープネスとしたいずれの実験結果でも「価格」「付加的機能」「メーカー」の順に重要度が大きい。また,「タイプ」「集塵方式」「音」の各属性の重要度は「メーカー」属性よりもやや低い。ドライヤーの場合は「価格」「タイプ」「メーカー」「マイナスイオン発生機能」「音」の順に重要度が大きかった。音属性の1水準の変化に対する経済評価値を求めた結果,掃除機では5dBAのA特性音圧レベルの変化に対して3347円,0.25acumのシャープネスの変化に対して3692円と評価された。ドライヤーでは,6dBAのA特性音圧レベルの変化に対する評価額が591円であった。これらの評価額は価格属性4水準の平均の約11〜13%に相当し,昨年度行った仮想評価法による評価結果と近いものであった。さらに,稼動音を呈示せずに同様の実験を行った。得られた重要度や経済評価値と音を呈示した実験の重要度や経済評価値にはやや差があり,稼動音を聴取させる代わりに行った教示の影響が示唆された。
著者
藤沢 望 岩宮 眞一郎 高田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.750, pp.19-24, 2004-03-23
被引用文献数
5

擬音語からイメージされる音の心理的性質を調べ,擬音語表現との関係を探った.擬音語20語を刺激とした類似性判断実験と多次元尺度構成法から得られた3次元解に対し,一対比較法,SD法で得られた音の大きさや音色に関する尺度値を用いて重回帰分析を行い,刺激布置の解釈を試みた.その結果,I軸は音の「長さ」,III軸は音の「高さ」と「美的因子」に対応しており,H軸では正方向に濁音・半濁音を含む擬音語,負方向に繰り返し表現による擬音語が多く位置していた.また, 「長さ」と長音,「高さ」と母音/i/,「美的因子」と有声・無声子音など,特定の心理尺度と擬音語表現には対応が見られ,過去の研究結果と一致していた.
著者
藤沢 望 尾畑 文野 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.774-783, 2006-11-01
被引用文献数
1

音を表す言葉である擬音語は,その表現が音の特徴と密接に関連している。本論文では,文字表記された2モーラの擬音語からイメージされる音の印象と擬音語表現の関係を明らかにし,擬音語から印象を予測する手法を示した。SD法による印象評価実験の結果と林の数量化理論第I類分析により,擬音語の子音や母音,濁音といった音韻的特徴が印象に与える影響をカテゴリ数量として求めた。2モーラの擬音語に対する印象は,各カテゴリ数量の和で予測でき,"キン"のようにカ行の子音及び母音/i/を含む擬音語からは「かたい」印象の音がイメージされ,"ブー"のように濁音を含む擬音語からは「きたない」印象の音がイメージされる。