著者
磯崎 行雄 澤木 佑介 佐野 有司 高畑 直人 尾上 哲治 石川 晃
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

カンブリア紀以降の古生代で3回の大量絶滅(オルドビス紀末、デボン紀後期、およびペルム紀末)がおきた。どれもグローバル寒冷化期に起きたが、その原因は未特定である。オルドビス紀末には大気CO2分圧が現世の10倍あったにもかかわらず大規模寒冷化がおきた。一方ペルム紀末絶滅時に地球外起源3Heが大量流入したことから、大量の星間塵の集中落下で寒冷化と絶滅がおきた可能性が指摘されている。本計画は、古生代の3回の大量絶滅と寒冷化との因果関係の解明を目的とし、過去の深海堆積物中の絶滅境界層から3He同位体異常などの地球外起源物質流入の定量的検出を試みる。主要絶滅事件に関する新たな統一的説明を目指す。
著者
高畑 直人 尾上 哲治 佐野 有司 磯﨑 行雄
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.4, pp.667-679, 2019-08-25 (Released:2019-09-20)
参考文献数
27
被引用文献数
5

It is important to know the influx of extraterrestrial material on old Earth in order to understand global environmental changes. Helium is suitable for detecting extraterrestrial material in marine sediments, as well as platinum group elements, because there is more helium in extraterrestrial matter than on the Earth's surface. Extraterrestrial material is detected in old sedimentary rocks collected from a Permian/Triassic (P/T) boundary section in the Mino Belt, central Japan, which accumulated in a deep seafloor environment in the ancient Pacific Ocean. Much higher 3He/4He ratios (up to 150 Ra; 1 Ra = the atmospheric ratio) are observed in the samples. These high 3He/4He ratios may infer the existence of extraterrestrial helium carried in fullerenes or interplanetary dust particles. Moreover, the distribution of 3He concentrations indicates a significant increase in the influx of extraterrestrial material before the P/T boundary, which is equivalent to the influx at the Cretaceous/Paleogene boundary, because of the long duration. This increase may have caused global cooling leading to mass extinction.
著者
佐野 有司 高畑 直人 堀口 桂香 植木 貞夫 中島 淳一 長谷川 昭
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2006年度日本地球化学会第53回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.250, 2006 (Released:2007-11-01)

日本列島においても温泉や火山、天然ガスなどを通じて固体地球から揮発性元素が定常的に脱ガスされている。これらの中でマントル起源であることが明らかなヘリウムー3と地殻起源のヘリウムー4の比のマッピングをすることで、日本列島におけるテクトニックな場をヘリウム同位体比がどのように反映するか1980年代から研究されてきた。一方、地震波の高精度データが蓄積し、その解析法に進歩があり、地下の構造を示す地震波トモグラフィーの詳細な研究が行われつつある。本研究では、これまでに蓄積されたヘリウム同位体比のデータをコンパイルし、そのマッピングと地震波トモグラフィーのデータを比較検討し、日本列島における脱ガス過程と地下構造の関係について発表する。
著者
佐野 有司 高畑 直人 堀口 桂香 植木 貞夫 中島 淳一 長谷川 昭
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.250-250, 2006

日本列島においても温泉や火山、天然ガスなどを通じて固体地球から揮発性元素が定常的に脱ガスされている。これらの中でマントル起源であることが明らかなヘリウムー3と地殻起源のヘリウムー4の比のマッピングをすることで、日本列島におけるテクトニックな場をヘリウム同位体比がどのように反映するか1980年代から研究されてきた。一方、地震波の高精度データが蓄積し、その解析法に進歩があり、地下の構造を示す地震波トモグラフィーの詳細な研究が行われつつある。本研究では、これまでに蓄積されたヘリウム同位体比のデータをコンパイルし、そのマッピングと地震波トモグラフィーのデータを比較検討し、日本列島における脱ガス過程と地下構造の関係について発表する。
著者
天川 裕史 高畑 直人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

二次イオン質量分析計(SIMS)によるホウ素同位体比の基礎的な分析手法の検討を行い、標準試料(NIST951)と併せ幾つかの実試料(海水、温泉水、大気の凝縮水)のホウ素同位体比の測定を行った。SIMS(使用機器はNanoSIMS)の測定にはシリコンウェハー上で試料溶液を赤外線ランプで乾固したものを供した。その際、従来は測定試料中のホウ素の散逸を防ぐため、ホウ素を除去した海水の添加を行う手法が推奨されてきた。しかし、NanoSIMSによる分析においては海水を標準試料や温泉水に添加するとホウ素のビーム強度はむしろ何も添加しない場合に比べ著しく低下し、この手法は必ずしも有効ではないことが示された。海水試料については単に乾固したものとその上に金の蒸着を行ったものの分析を行った。金の蒸着を行っていない海水のδ^<11>B値を直近のNIST951の測定値を用い計算すると+32〜+73となり、推奨値の+39.5とは異なる値となった。一方、金の蒸着を行った海水のδ^<11>B値を同様に金の蒸着を行ったNIST951の測定値を用い計算すると+44〜+46となり、より推奨値に近い値となった。金の蒸着にはブランクめ問題が懸念されるものの、確度の高い分析を行う上では有効かもしれない。温泉水試料のδ^<11>B値は+2.6と+5.6となり、Kanzaki, et. al.(1979)やNomura, et. al.(1979)やNomura, et. al.(1982)による日本の火山ガスの値の範囲(+2.3〜+21.4)の値となった。また、大気試料のδ^<11>B値(+1.7)は、Miyata, et. al.(2000)により報告されている東京大学海洋研究所周辺で採取した大気試料の分析値(-5.1、-1.8、+5.0)と大きくは異なっていない。これらの事実は、NanoSIMSは天然試料のホウ素同位体比の分析に十分堪えうることを示している。