著者
村永 信吾 平野 清孝
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.301-308, 2003-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究の目的は, 簡便に歩行能力を推定するために開発した2ステップテストと10m歩行速度, 6分間歩行距離, 日常生活自立度, さらに転倒リスクとの関係を求め, このテストの臨床応用への可能性について検討することである.対象は, 健常者108名, リハビリテーション通院患者108名, 合計216名であった.最大2歩幅を身長比で表した2ステップ値と10m歩行速度及び6分間歩行距離はそれぞれ強い正の相関を示した.また日常生活自立度との関係では, 2ステップ値の低下に伴い日常生活自立度も制限され, さらに転倒リスクも高くなることが分かった.これらのことから2ステップテストは, 10m歩行速度や6分間歩行距離, 日常生活自立度, さらに転倒リスクなどを反映しており, 診察室や在宅といった測定空間に制限のある場所での簡便な歩行能力を推定に利用できると言える.
著者
金谷 さとみ 津田 陽一郎 永冨 史子 松井 一人 村永 信吾
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.802-811, 2020-07-15

金谷 本邦における新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大は社会全体に大きな影響を及ぼしましたが,理学療法提供においてもあらためて考えさせられる機会となりました.本日は,それほど切迫した状況ではないものの,体制づくりや予防策に追われた地域の先生方にご出席いただきました.まず,ご自身の施設の概要とこれまでの経緯をお話しください. 永冨 当院は回復期リハビリテーション病棟を有する647床の急性期総合病院です.高齢症例が多いのが特徴です.岡山県は感染者数が非常に少なく抑えられていますが,通常とは異なる臨床をどのように組み立てるか,また緊急事態宣言が解除された現在はこれらの対応をどうやって緩めていくか,さまざま思案しながら業務を行っています.
著者
村永 信吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.362-367, 2001-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9
被引用文献数
30

歩行, 階段など移動能力の改善に下肢筋力は重要な因子である.今日, 客観的筋力評価としてダイナモメータを用いての報告が散見されるものの, 機器が高価であり, かつ多くが固定式使用のために, 使用場所が制限され診療現場で広く活用されているとは言い難い.本研究はダイナモメータでの下肢筋力値を簡便に推定する方法として, 立ち上がり能力に着目し, その臨床応用について検討した.対象は筋力低下を主症状とする入院中の男性74名 (年齢60.2±18.5歳) , 女性68名 (年齢57.6±15.5歳) , 総計142名 (年齢58.9±17.0歳) とし, 股関節, 膝関節さらに足関節に著明な可動域制限なく, 痴呆等の精神障害もない者とした.立ち上がり評価は, 40cm, 30cm, 20cm, 10cm高のそれぞれのボックスに腰かけ, 反動を使わず両脚及び片脚にて立ち上がり可能な高さで判定した.ダイナモメータによる下肢筋力値として体重と膝伸展筋力の比率である体重支持指数 (WBI; weight bearin gindex) を算出した.また移動能力は, アンケート調査をもとに (1) 平地歩行, (2) 椅子からの立ち上がり, (3) 床からの立ち上がり, (4) 階段昇り, (5) 階段降りの各移動動作を全介助 (EAR) ・重介助 (SAR) ・軽介助 (MAR) ・修正自立 (MI) ・不完全自立 (II) ・完全自立 (CI) の自立度に分類し, この自立度とWBI, さらに立ち上がり能力との関係を明らかにした.立ち上がり能力とWBIに明らかな正の相関 (両脚r=0.67, p<0.01, 片脚r=0.75, p<0.01) が見られた.40cm, 30cm, 20cm, 10cmブロックでの立ち上がりに必要なWBIは, 両脚立ち上がり (BLS: both legs standing) の場合, 片脚当たりそれぞれ28.9±7.2%, 35.3±5.0%, 44.3±3.5%, 51.9±14.0%, 片脚立ち上がり (SLS: single leg standing) の場合, それぞれ62.3±14.3%, 68.0±13.7%, 90.2±9.2%, 102.7±11.8%であった.移動能力とWBIとの関係では, 平地歩行に比較して床からの立ち上がり, 階段昇降など重心の垂直成分を多く含む動作ほど高いWBIを必要とすることが示された.階段等を含めた移動動作におけるMIにはWBI43.8±7.5%, BLS20cm, IIにはWBI55.5±15.8, SLS40cm, さらにCIには72.2±19.9%, SLS20cmを必要とすることが明らかとなった.本結果から, 今回考案した立ち上がり評価は, 下肢筋力や移動能力が簡便に推定可能であり, 広く臨床場面で活用できると考える.
著者
松田 徹 吉田 晋 井上 美幸 村永 信吾 大嶋 幸一郎 川間 健之介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.719-726, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
33
被引用文献数
1

〔目的〕臨床経験10年以上の理学療法士(PT)の臨床判断による転倒予測の視点と確かさを検討すること.〔対象〕臨床経験10年以上のPT 17名.〔方法〕PT 11名に,フォーカスグループインタビューを実施し,timed “up& go” test(TUG)チェックリストを作成した.次に別のPT6名が,TUGチェックリストを使用し,21名の高齢者映像からの転倒予測を行った.〔結果〕visual analogue scale(VAS)評価は既存の転倒予測指標と有意な関連性を示し,チェックリスト評価項目の「着座動作に問題がある」の転倒予測の的中精度が高かった.〔結語〕臨床経験10年以上のPTの転倒予測の正確性は高く,既存の転倒予測指標にTUGの着座場面の観察を加えることで,予測の精度向上が期待できる.
著者
松田 徹 吉田 晋 井上 美幸 村永 信吾 大嶋 幸一郎 川間 健之介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.69-75, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
29

〔目的〕臨床判断を基盤とした転倒危険性の感じ方が,臨床経験により異なるか,Timed “Up& Go” Test (TUG)遂行時の高齢者映像から検討すること.〔対象と方法〕「学生」群32名,臨床経験「1-2年目」群46名,「3-4年目」群34名,「5-9年目」群43名,「10年目以上」群15名.映像を見て,Visual Analogue Scale(VAS)で評価した.本研究上定義した転倒リスク分類との一致率とVAS測定値を臨床経験で比較した.〔結果〕転倒高リスク映像にて,「学生」群よりも「1-2年目」群,「10年目以上」群の一致率が有意に高く,「10年目以上」群で最も高かった.〔結語〕10年以上臨床経験を積むことで,転倒リスクの高い高齢者映像をより正確かつ明確に評価できる可能性が示唆された.
著者
松田 雅弘 大山 隆人 小西 由里子 東 拓弥 高見澤 一樹 田浦 正之 宮島 恵樹 村永 信吾 小串 健志 杉浦 史郎 三好 主晃 石井 真夢 岡田 亨 亀山 顕太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】加齢に伴う運動器障害のために移動能力の低下をきたし,要介護になったり,要介護になる危険の高い状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と定義し,中高齢者の運動器に起こる身体状態として知られている。子どもの発育の偏りや運動不足,食育などが原因となり,筋肉,骨,関節などの運動器のいずれか,もしくは複数に障害が起き,歩行や日常生活に何らかの障害を引き起こすなど,子どもでも同様の状態が起こりうる。さらに,転んでも手がつけない,片脚でしっかり立つ,しゃがみ込むなど基本動作から,身を傷害から守る動作ができない子が急増している。幼稚園児36.0%,就学児42.6%,小学校40%で片足立ち。しゃがみ込み,肩180度挙上,体前屈の4項目の検査で1つでも当てはまる児童生徒が存在する。【活動報告】千葉県浦安市の児童に対するロコモの検診を行政と連携し,千葉県スポーツ健康増進支援部中心に実施した。参加者は3~12歳の334名であった。検査項目は先行研究にある片脚立ち,肩180度挙上,しゃがみ込み,体前屈以外に,四つ這いバランス,腕立て・腹筋などの体幹筋力,2ステップテスト,立ち上がりテストなど,柔軟性・筋力・バランス能力など12項目とした。また,食事・睡眠などのアンケートを実施した。当日は理学療法士が子どもと1対1で検査することで安全性の確保と,子どもの集中力を維持させ,検診を楽しむことで計測が可能であった。【考察】この検診で成長にともなう運動発達が遅れている子の把握が可能であった。親を含めた検診を通じて家族の運動への関心が高まったことや,自分の子どもの運動能力の把握,日頃の運動指導にもつながった。【結論】今回の検診で子どもの運動機能の現状を把握するのに,この取り組みが有益なことが示唆された。今後は広く地域と連携して子どものロコモ検診を行い,健康状態の把握と運動の啓発を理学療法士の視点として取り組んでいきたい。
著者
宮島 恵樹 三好 主晃 東 拓弥 石井 真夢 村永 信吾 田浦 正之 小西 由里子 小串 健志 亀山 顕太郎 関 俊昭 松田 雅弘 高見澤 一樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】我々は,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している。本取り組みは県内士会員による転倒予防を目的とした転倒予防セミナーの開催と,歩行年齢測定会の実施である。また,ロコモティブシンドロームの概念の普及,健康日本21プロジェクトの一環として活動の展開を広げている。高齢者の転倒予防の実践は,各個人の健康寿命延命のみならず,実益的な医療費削減や介護費削減,地域・自治体の活性への貢献として今後の重要課題といえる。【活動報告】測定会は,有志の県士会員の協力を得ながら千葉県内各地の健康増進,福祉関連イベントへの出展や,県・開催市町・医師会などからの後援を受け,県内各地で開催される健康増進,福祉関連イベントなどに出展を行ってきた。歩行年齢測定は,測定項目は,体組成,ファンクショナルリーチ,2ステップテスト,TUG,立ち上がりテストの5項目で行い,測定結果の説明は,転倒予防に対する危険度,機能低下が明らかな点,改善目標を自己管理の為の運動指導とあわせて説明した。運動動機能の維持向上への取り組みを歩行機能の低下を自覚する世代から,その予備軍まで幅広い働きがけをしている。これまでの4年間で4000名以上の県民の皆様が参加されており測定会場によっては毎年会場に足を運ぶ県民も少なくはない。【考察】理学療法士が国民の健康寿命延伸や,転倒予防活動に積極的に参加することで理学療法士の認知向上はもとより。理学療法士の知識技術が健康増進分野へも十分寄与することが示唆され,予防分野への職域拡大に貢献すること考える。【結論】進行する要介護状態への早期発見,運動習慣への動機付けという早期対応の促進にも繋がり,要介護状態への抑制の一助となり得ると考える。
著者
宮島 恵樹 関 俊昭 高見澤 一樹 七尾 真理子 早川 政人 彦田 直 森 大 東 拓弥 岡田 亨 村永 信吾 秋葉 洋介 石田 隆 亀山 顕太郎 河田 聡巳 小串 健志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101926, 2013

【はじめに、目的】高齢者の転倒予防の実践は,各個人の健康寿命延命のみならず,実益的な医療費削減や介護費削減,さらには地域,自治体の活性への貢献として今後の重要課題といえる.加えて運動機能の維持向上への取り組みは,現在,歩行機能の低下を自覚する世代から,その予備軍的な世代に対する幅広い働きがけが必要である.我々,千葉県理学療法士会は,県内における専門領域職能団体として,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,千葉県理学療法士会公益事業局スポーツ健康増進支援部の取り組みとして2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している.本取り組みは県内士会員による転倒予防を目的とした転倒予防セミナーの開催と歩行年齢測定会の実施を行なっている.測定会は,有志の県士会員の協力を得ながら県内各地で開催される健康増進,福祉関連イベントなどに千葉県理学療法士会として出展を行い実施している.各測定会では測定結果をもとに,その場でフィードバックと自己管理方法としてのエクササイズ指導を合わせて行っている.今回は我々が実施した歩行年齢測定会の結果を基に今後我々理学療法士が改めて目を向けるべきであろう予防について考察する.【方法】測定項目は,体組成(身長,体重,体脂肪率),Functional reachテスト(以下FR),Timed up&goテスト(以下TUG),立ち上がりテスト,2stepsテストの5項目を行った.対象者は2010年10月~2012年10月イベントに参加した1437名(30~85歳,平均58.6±18.2歳,男性338名・女性1099名)であった. 2stepsテストは最大に2歩前進した距離を計測する方法であり,その後身長で正規化した.FRは両上肢を肩関節90°屈曲し,両肘伸展位で出来るだけ前方にリーチさせたときの指先の移動距離を測定した.今回は上記の項目のうち年齢における差をFR,2stepsテストの2項目について検討した.統計処理は年齢とFR,2 stepsテストの関係をPearsonの積率相関係数を用いて分析し,また30~90歳までを5歳毎に分類し,その分類でFRと2stepsテストに一元配置分散分析を行い,その後の検定としてTukeyの検定,サブグループの作成を行った.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】測定に参加する県民には文章ならびに口頭にて十分な説明を行い参加する意志を確認した上で,測定を行った.また,測定会運営スタッフに対しては事故対応としてスポーツ健康増進支援部でイベント保険に加入した.【結果】年齢とFR,2stepsテストでは,FRはr=-0.45,2stepsテストではr=-0.46と有意な負の相関があった.各年代とFRは近い年代で有意な差を認めるのは60~64歳と,65歳~69歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は50~54歳の世代となった.各年代と2stepsテストは近い年代で有意な差を認めるのは65~69歳と,70歳~74歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は45~49歳の世代となった.どちらのテストも65歳以上は細かなサブグループに分割され,年齢の上昇とともに数値が低下していた.【考察】年齢と2stepsテスト・FRには,有意な負の強い相関が認められ,年齢とともにバランス能力が低下していることが示唆された.また,各項目とも65歳以上にサブグループが細かく分類され,バランス能力の低下が急激に進行していることが考えられる.特にFRでは60~64歳,2stepsテストでは65~69歳で次の年代と比較して急激にバランス能力の指標でもある両項目とも低下しており,その急激に低下する以前の60歳前半で予防的に運動介入することに意義があると考えられる.また,その急激になる以前のグループの区切れの年代はFRで50~54歳,2stepsテストで45歳~49歳となり,この年代より段階的に運動指導を実施して,65歳以降の転倒を未然に防ぐことが可能ではないかと考えられる.このように幅広い年代のデータを集積することで,バランス能力の低下だけではなく,急激に低下をする年代の発見につながり,ロコモティブシンドロームなどに対する予防的な取り組みを段階的に各年代にそった運動プログラム作成への足掛かりとして進めていきたいと考えている.【理学療法学研究としての意義】理学療法士が国民の健康寿命延伸や,転倒予防活動に積極的に参加することで理学療法士の認知向上はもとより.理学療法士の知識技術が健康増進分野へも十分寄与することが示唆され,予防分野への職域拡大に貢献すること考える.また,測定会を継続することによって,千葉県民各年代の転倒リスク,運動機能の指標が示され,行政施策の中で理学療法士として役割が求められると考える.