著者
麻野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、現代政治思想における公共性に関する理論研究を踏まえつつ、阪神・淡路大震災時のボランティア活動に関わった人びとの体験記や活動の記録文書を分析することから、現代の日本人が抱いている公共性意識を解明することである。これまで公共に資する活動を行うのは行政機構の専権事項のように考えられがちであったが、阪神・淡路大震災においては数多くのボランティアが、初期の救出作業や防災活動、安否確認にはじまり、援助物資の搬出・搬入、避難所の運営、炊き出しや水くみ、被災者の在宅支援など多種多様な公益に資する活動を行った。ボランティアは、すべての市民に対して責任をもつわけではないので、公平性に拘束されることなく臨機応変な対応で、行政ができない公共活動を行うことができた。ボランティアによる公共活動に参加したり助けられたり人びとは、行政や市場システムが提供するのとは違う公共活動があることに気付いた。ボランティアが公共サービスを提供するやり方は、一つには、自分たちのやり方で自発的に行うという「自己決定」の原理に支えられている。その一方で被災者の立場に立ち、被災の現実を他人事としてではなく自分に関わることとして受け止め、当事者として何か活動をしようという「協働」の原理によっても支えられている。こうした震災ボランティアの活躍によって、「自己決定」と「協働」の原理に基づいて運営される公益活動が広がり、市民自らが公共活動を担っていこうとする市民的公共性の意識が成立する可能性が高まったといえる。
著者
麻野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
三重大学法経論叢 (ISSN:02897156)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.33-57, 2003-08-31

論説 / Article
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木村 幹 水野 広祐 岡本 正明 麻野 雅子 日下 渉 横山 豪志 滝田 豪 河野 元子 上田 知亮
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タイ、フィリピン、マレーシア、韓国の政治は、1997 年のアジア通貨危機直後には安定していたものの、その後不安定になった。その主因は、社会的な格差や分断を増幅した新自由主義経済政策であった。社会経済的地位が不安定になった中間層は、多数派庶民の政治的台頭を前にして、数に対抗するために道徳という質を強調するようになった。そうした対立と不安定化が、タイとフィリピンではとりわけ顕著になっている。
著者
河原 祐馬 谷 聖美 佐野 寛 近藤 潤三 玉田 芳史 島田 幸典 小柏 葉子 麻野 雅子 永井 史男 木村 幹 中谷 真憲 横山 豪志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、移民外国人の社会統合問題について、その政治的成員資格と新たなナショナル・アイデンティティをめぐる議論に焦点を当て、ヨーロッパや日本をはじめとするアジア太平洋地域の事例を比較地域的な観点から考察するものである。本研究の成果は、トランスナショナルなレベルにおける地域協力の取り組みについての議論が活発化する中、今後のわが国における移民政策の基本的な方向性を模索する上での一助となるものである。