著者
玉田 芳史 相沢 伸広 上田 知亮 河原 祐馬 木村 幹 鈴木 絢女 ホサム ダルウィッシュ 中西 嘉宏 日下 渉 岡本 正明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、東南アジア諸国における政治の民主化と司法化の関係を考察することであった。司法化は民主化に付随して始まり、民主主義を守る役割を果たすと理解されることが多い。しかし、司法化は、多数派の暴政を言い立てて多数決主義を否定する特権的少数者を保護することがある。民主化途上国では民主主義がまだ脆弱であるため、司法化は民主化を容易に阻害し危機に陥れる。タイはその典型である。司法化の現状は多様である.司法化に大きな影響を与えるのは、2つの要因であることが明らかになった。判事の人事と司法府を取り巻く政治状況である。
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木之内 秀彦 戸田 真紀子 木村 幹 岡本 正明 村上 勇介 藤倉 達郎 横山 豪志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

民主主義が政治のグローバル・スタンダードになった今日でも、軍事クーデタは生じうることを複数の事例の比較研究から確認した.1 つには、政治の民主化が進んで、軍があからさまな政治介入を控えるようになっても、軍が政治から完全に撤退することは容易ではないからである.もう1 つには、クーデタに対する国際社会からの歯止めは、軍首脳が国際関係よりも国内事情を優先する場合には、あまり強く機能しないからである.
著者
玉田 芳史 相沢 伸広 上田 知亮 河原 祐馬 木村 幹 鈴木 絢女 滝田 豪 中西 嘉宏 日下 渉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)が世界を席巻している。SDGsが掲げる目標は首肯できるものばかりである。しかし、SDGsの目標群を冷静に眺めると、開発にとって重要な目標の欠落が分かる。その1つが政治の民主化である。途上国の非民主的な指導者が、国際社会に向かって、SDGs推進を謳う例が少なくない。SDGsを錦の御旗とすれば、民主化への外圧を和らげることができるからではないのか。SDGsは権威主義体制の温存に寄与するという副作用があるのではないか。本研究はこの問いに実証的に答えようとする。
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木村 幹 水野 広祐 岡本 正明 麻野 雅子 日下 渉 横山 豪志 滝田 豪 河野 元子 上田 知亮
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タイ、フィリピン、マレーシア、韓国の政治は、1997 年のアジア通貨危機直後には安定していたものの、その後不安定になった。その主因は、社会的な格差や分断を増幅した新自由主義経済政策であった。社会経済的地位が不安定になった中間層は、多数派庶民の政治的台頭を前にして、数に対抗するために道徳という質を強調するようになった。そうした対立と不安定化が、タイとフィリピンではとりわけ顕著になっている。
著者
河原 祐馬 谷 聖美 佐野 寛 近藤 潤三 玉田 芳史 島田 幸典 小柏 葉子 麻野 雅子 永井 史男 木村 幹 中谷 真憲 横山 豪志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、移民外国人の社会統合問題について、その政治的成員資格と新たなナショナル・アイデンティティをめぐる議論に焦点を当て、ヨーロッパや日本をはじめとするアジア太平洋地域の事例を比較地域的な観点から考察するものである。本研究の成果は、トランスナショナルなレベルにおける地域協力の取り組みについての議論が活発化する中、今後のわが国における移民政策の基本的な方向性を模索する上での一助となるものである。
著者
玉田 芳史 片山 裕 河原 祐馬 木村 幹 木之内 秀彦 左右田 直規 横山 豪志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

政治の民主化と安定が好ましいことは広く合意されている。しかしながら、両立は容易ではない。本研究は東・東南アジア地域諸国において、政治の民主化と安定はどういう条件が整えば両立可能なのかを解明することを目指した。東・東南アジア地域には過去20年間に政治の民主化が進んだ国が多い。本研究では韓国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイのアジア6カ国を取り上げた。この6カ国では2003年から2005年にかけて国政選挙が行われた。選挙にあたって政治が緊迫したのはこれらの国の政治が民主化してきた証拠である。それとともに、比較対象地域として同じ時期に民主化が進んだバルト諸国のエストニアを取り上げた。両立のためには制度設計が重要なことはエストニアの事例がよく示している。エストニアは両立に成功した数少ない旧社会主義国の1つである。鍵になったのは、民主化の着手時にロシア系住民から市民権を剥奪したことであった。当初は国際社会から厳しい批判を招いたものの、結果としてはよい結果をもたらした。アジアの場合、民主化と安定のバランスを保つことが難しい。タイでは1997年憲法で安定を重視した結果、民主的な手続きを軽視する指導者を生み出すことになった。ここでは、フィリピン、韓国、インドネシアともに国家指導者罷免の手続きが課題として浮上することになった。フィリピンやインドネシアでは独裁支配の忌まわしい記憶が残っているため、強い指導者の登場を助けるような制度設計には消極的である。また、手続き上の制度の不備あるいは不正利用のために、民主主義体制の正当性確立が容易ではない。今後の研究課題として、制度よりもポピュリズムの手法に依拠して登場しつつある強い指導者について調べてみたいと計画している。
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木村 幹 岡本 正明 横山 豪志 滝田 豪 左右田 直規
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は民主化以後に登場した新しいタイプの指導者について、(1)その登場の背景ならびに(2)登場が民主化に与える影響について分析した。具体的に取り上げたのは、韓国の盧武鉉大統領、中国の胡錦涛国家主席、タイのタックシン首相、マレーシアの与党青年部副部長カイリー、インドネシアのユドヨノ大統領とゴロンタロ州知事ファデル、インドのインド人民党(BJP)、ロシアのプーチンである。(1)背景 (a)民主化に伴い指導者が選挙を通じて選ばれるようになったことが新しいタイプの指導者の登場を可能にした。(b)1990年代に政治経済の激動を経験し(経済危機、長期政権の崩壊)、国民が危機からの脱却を可能にしてくれる強い指導者を待望した。(c)既存の政党組織よりも、個人的な人気によって、支持を調達している(自由で公平な選挙が実施されているとはいえない中国とマレーシアは例外)。(d)指導者は国民に直接訴えた。危機で傷ついた国民の自尊心の回復、危機の打撃を受けた経済再生とりわけ弱者の救済をスローガンとした。このいわゆるポピュリズムの側面は中国やインドにも共通していた。(c)(d)双方の背景には、放送メディアやインターネットの積極的な活用が宣伝を容易にしたという事情があった。2 影響 (a)強い指導力を発揮できた事例とそうではない事例がある。韓国とインドネシアでは期待外れに終わり、タイとロシアでは期待通りとなった。(b)強い指導力を制度化できるかどうかに違いが見られた。プーチンは成功したものの、タイでは強い指導者の登場を嫌う伝統的エリートの意向を受けたクーデタで民主主義が否定された。