著者
吉田 文 村澤 昌崇 濱中 淳子 二宮 祐 田中 正弘 福留 東土 黄 梅英 李 敏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、文系大学院修士課程の修了者が労働市場においてどのように評価されるのかを、日米中の比較として実施した。分析の枠組みは、大学院教育―学生の資質・目的―労働市場の3点の関連構造を明らかにすることにあり、3者のサイクルのどこにネックがあるかを明らかにすることにある。分析の結果、中国やアメリカと比較して、日本においては、大学院教育は職業人教育をめざす工夫をせず、学生は大学院で獲得したスキルを職場で活用することを重視せず、労働市場は大学院教育よりも企業内訓練に対する信頼を置くという、3者が孤立し、関連性のサイクルが回らない構造があることが明らかになった。
著者
黄 梅英
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本の教育型大学における卒業研究の教育実態に関する研究(人文社会科学を中心に)について、2017年度は主に学生のアンケート調査の分析と、インタビュー調査の追加・内容分析を行った。アンケート調査の(重回帰)分析結果から卒業論文の完成度は下記の要因に影響されている。①教育側の要因として、学生の卒業論文の完成度は3年次までのアカデミックライティングのトレーニングの有無・頻度、4年時の卒業研究での個人指導の回数と正の相関をもっている。②学生側の要因として、学生の卒業論文の完成度は高校での平均成績分布と正の相関、4年時の履修単位数と負の相関をもっている。上記の分析結果は学生のインタビューからもある程度の裏付けが得られた。例えば3年時までの授業の中で小論文の指導、添削を受けた場合、また、社会調査やフィールドワーク、国内外の実習など(大学外主催のものも含む)のプログラムに参加した際に報告書が課されたり、指導を受けたりした場合、何らかの力が身につき、卒業研究を進める中でも活かされたというケースが幾つもあった。それに加え、高校の在学中に模試などのために小論文のトレーニングを受けたり、また入試形態によって特別指導を受けたりした学生の中で一定の力を身につけたと感じた学生もいた。つまり、卒研にかかわる基礎的な学習・トレーニングは重要であるといえよう。一方、完成度の比較的高い学生は4年時に卒業研究のほかに履修する(しなければならない)単位数が比較的少ない者が多い。つまり、履修状況が比較的よくて、単位を落とされたケースがあまりない場合、卒業研究も比較的うまく仕上げている。そこから通常の授業での学習姿勢や成績が卒業研究の質も影響していると読み取ることができる。上述の分析を通して教育型大学の卒業研究の教育実態は、学生と教員の両側の取り組み状況に影響されていることは明らかにされた。
著者
目黒 恒夫 會澤 まりえ 呉 正培 黄 梅英 孟 慶栄 孫 成志 Tsuneo Meguro Marie Aizawa Jeongbae Oh Meiying Huang Qingrong Meng Chengzhi Sun
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.45-61, 2017-12-20

日中韓3ヵ国の大学生の自文化における自己開示の傾向には開示行動、開示意向、開示方法について多くの共通点がみられるが、開示動機については相違点がみられる。その傾向の日中韓比較においては各々の特徴も見出される。これらの相違や特徴を背景とした異文化コミュニケーションにおける自己開示に際して、戸惑い、誤解、文化差などが経験される。各々の自己開示は、言語的制約を内包しつつ、文化的社会的制約を常に負う。また、文化的な相互依存と文化的な相互対峙が地球規模で急速に進んでいるグローバリゼーションの状況に人間は直面している。それゆえに、文化的社会的制約を負いつつも他者を他者性として自覚し、対話的な自己開示を遂行していく人間としての在り方が絶えず問題になる。自己開示を通して人間の人間性を問題にし続けること、多文化社会に生きる人間としての在り方を絶えず志向することが大学教育において要請される。