著者
吉田 文 村澤 昌崇 濱中 淳子 二宮 祐 田中 正弘 福留 東土 黄 梅英 李 敏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、文系大学院修士課程の修了者が労働市場においてどのように評価されるのかを、日米中の比較として実施した。分析の枠組みは、大学院教育―学生の資質・目的―労働市場の3点の関連構造を明らかにすることにあり、3者のサイクルのどこにネックがあるかを明らかにすることにある。分析の結果、中国やアメリカと比較して、日本においては、大学院教育は職業人教育をめざす工夫をせず、学生は大学院で獲得したスキルを職場で活用することを重視せず、労働市場は大学院教育よりも企業内訓練に対する信頼を置くという、3者が孤立し、関連性のサイクルが回らない構造があることが明らかになった。
著者
ポスト デイヴィッド スタンバック エイミー ギンズバーグ マーク ハナム エミリー ビーナヴォット アーロン ビョー クリス 福留 東土[監訳] 三代川 典史[翻訳]
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.319-335, 2013-03

英語の"Rank"には二つの意味がある。Shakespeare が『ハムレット』を著して以来,この単語はその第1幕にある,順番を付けられ階級化された序列体系を意味するとともに,第3幕で使われる,「腐敗した」「穢れた」という意味を持つ1)。今日,世界中の大学のテニュア(終身在職権)審査委員会や図書収集担当司書にとって,第1幕での序列体系を示す"Rank"はお馴染みである。だが,第3幕で使われる"Rank"の概念も理解しうるだろう。"Rank"の持つ二つの意味が関連性を保持しているのは,「インパクトファクター(論文の影響力を示す指標)」を学問評価の最適な手法と考え,その普及を促進するトムソン・ロイターのような商業ビジネスのおかげだともいえる。 本稿では,学術出版,大学,研究者の評価にインパクトファクターやランキングが利用されるのは,次の4つの動向に関連していることを論ずる。①官僚主義的権威の特徴である専門知識の(不可逆的な?)正統化,②高等教育の規制と管理を巡る駆引き(新管理主義と研究評価制度に如実に顕れる)③この2つの動向に便乗して商業的学術出版界が行う価格設定や資金調達。この動向は大学図書館の予算を侵食する高額課金に顕れる。④学術誌や編集者に期待されるドラマ的演出の拡大。これは,学術誌や編集者が履歴書製造工場の生産ラインの従業員ではなく,思想を賑やかに楽しく語り合う場のホスト役を自認する場合にもあてはまる動向だ。本稿はこれら4つの動向に言及した後, その動向の中に筆者が編集者の立場で携わる『比較教育学研究(Comparative EducationReview)』(以下『CER』)を位置づける。そして,学術誌が選択し得るオプションを考察する。著作者の履歴書に加えられることを目的とする論文ばかりの学術誌もあるが,それとは異なる,より活気に溢れ関わり合いを深く持つように教育学研究のコミュニティを発展させる方法を提案したい。その上で,インパクトファクターという指標の代替手段,或いはその補完に活用しうる,学術誌のクオリティ(以下「質」)を判断する手段を提案する。学術論文は学術コミュニケーションの副次的成果に過ぎないのだ。我々の主張は,最も根本的な成果としての学術コミュニケーションそのものに,学術誌とその読者が固有の価値を見出し,このコミュニケーションに関与すべきである,ということだ。In English the word "Rank" has a double meaning: a "hierarchical series" and also "rotten" or "filthy." This essay considers the pressure felt by scholars publish in journals that are highly "ranked." We first document evidence for this pressure, then discuss the consequences of impact factors and ranking in higher education. We connect ranking four movements: 1) the rationalization of expertise as a feature of Weberian bureaucratic authority; 2) the politics of higher education regulation and control, as manifest in the new managerialism and associated research assessment exercises; 3) the pricing and finance of commercial scholarly publishing, which takes advantage of the preceding developments by charging high prices to maximize profits; 4) decisions by editors and their journals to play by the new rules even when they are personally opposed to them and when they value journals for a different purpose. After touching on these four movements, we discuss the journal that we edit (Comparative Education Review). We consider the alternatives to ranking, and we suggest ways to promote a more vital and engaged educational research. Specifically, we suggest a means to judge the quality of scholarly journals that could be used as an alternative, or supplement, to the metric of the impact factor alone, by considering articles as the by-products of scholarly communication. We advocate that journals and readers attend to the intrinsic value of that communication as the most fundamental product.
著者
福留 東土
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.183-192, 2016-03-31

In knowledge-based society, graduate education is important to cultivate talented individuals with advanced intellectual skills. However, in Japan, graduate education is currently not highly evaluated in the labor market. Particularly, academic fields in humanities and social sciences are struggling to get social and professional relevance. In this article, I will discuss on the professionalization of graduate education in liberal arts in the United States. In recent years, graduate education in liberal arts, particularly its masters’ programs, tries to be more professional oriented. These trends are known as Professional Science Masters (PSM) programs in natural sciences, but in humanities and social sciences graduate education still experiences difficulties in shifting their focus to professional jobs. This article discusses on the field of history as a case study of this trend in liberal arts. The changes in the field of history are not a huge movement, but still, there are some meaningful trends to change graduate education to have more professional relevance. This trend has some implications to the future of Japanese graduate education.
著者
小方 直幸 山本 清 福留 東土 両角 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、高等教育政策の世論の構造と形成機能を萌芽的に解明することにあり、全省庁の政策案件のパブリック・コメントデータベースをe-GOVを基に作成した上で、文科省に考察対象を絞り、局別のパブリック・コメントの構造を明らかにした。局により案件数や公募タイプ別の案件分布が異なり、意見数についても公募タイプの相違を超えて、局別の特性の存在が析出された。他方で、意見の反映状況は、行政手続法に基づく案件に限定されてしまい、意見のまとめ方も定型的なフォーマットが存在しておらず、マクロの量的な分析から得られる知見に一定の意義はあるものの、意見反映までを見据えた考察には限界があることも、改めて明らかとなった。
著者
上野 雄己 日高 一郎 福留 東土
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.419-423, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
18

本研究の目的は,中等・高等教育での議論経験と市民性の関連を検討することである.分析対象者は都内中等教育学校の卒業生392名である.カテゴリカル因子分析の結果から,市民性尺度は政治への関与行動とコミュニティへの関与行動の2因子9項目から構成された.次に,社会人口統計学的要因を共変量とした媒介分析の結果から,市民性の下位尺度である政治への関与行動,コミュニティへの関与行動ともに,中等教育での議論経験が直接的に関連する経路と,高等教育での議論の成功経験を介して,間接的に関連する経路が確認された.
著者
大桃 敏行 秋田 喜代美 村上 祐介 勝野 正章 牧野 篤 藤村 宣之 本田 由紀 浅井 幸子 北村 友人 小玉 重夫 恒吉 僚子 小国 喜弘 李 正連 植阪 友理 市川 伸一 福留 東土 新藤 浩伸 齋藤 兆史 藤江 康彦 両角 亜希子 高橋 史子 星野 崇宏 伊藤 秀樹 山本 清 吉良 直 星野 崇宏 伊藤 秀樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本を含めて多くの国で多様化や競争、成果に対するアカウンタビリティを重視するガバナンス改革が行われてきた。また同時に、単なる知識や技能の習得からそれらを活用する力や課題解決力、コミュニケーション能力などの育成に向けた教育の質の転換の必要性に関する議論が展開されてきた。本研究の目的はガバナンス改革と教育の質保証との関係を検討しようとするものであり、成果志向の改革では、広い能力概念に基づく教育において評価がどこまでまたどのように用いられるのかが重要な課題となってきていることなどを示した。
著者
福留 東土
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本の大学改革ではガバナンスのあり方が重要な焦点となっており、学長のリーダーシップ強化を通じた機動的・集権的政策決定が変革の方向性となっている。しかし、そうした方向が、改革の目的である大学の質向上につながることは実証されていない。ガバナンスに関する研究と実践が積み重ねられてきた米国では、多様な構成員の参加を通じた対話と協働の重要性を説く研究が主流である。本研究では、理事会による素人支配、専門職化した管理運営者、教員参加による共同統治という3つの鍵概念を設定し、米国の大学を対象に理論と実証の両面からガバナンスのあり方を検討し、大学に相応しいガバナンスについて考察する素材を提供することを目指した。
著者
杉本 和弘 大佐古 紀雄 田中 正弘 鳥居 朋子 林 隆之 福留 東土 高森 智嗣 川那部 隆司 高 益民
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、各国の大学質保証における機関レベルの内部質保証システムの構造と機能を国際比較の観点から考察し、我が国の大学が内部質保証システムをいかに再構築し効果的運用すべきかを明らかにするため、(1)先行研究の整理・分析、(2)国内外の大学・質保証機関への訪問調査、(3)教育マネジメントに関する国際セミナーの開催を行った。その結果、大学の内部質保証システムを構築し機能させるために、全学レベルで学位プログラムを中心としたデータに基づく教育開発・教育改善が一体的に機能した質保証システムの整備を進め、さらに学内外にそのプロセスが明示されるようにすることの重要性が明らかとなった。
著者
丸山 文裕 両角 亜希子 福留 東土 小林 雅之 秦 由美子 藤村 正司 大場 淳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大学へのファンディングと大学経営管理改革との関係を検討するのが本研究の目的である。平成29年度は、一つには、日本において大学へのファンディングの方法の変化が、大学での研究生産性に及ぼす影響を考察した。大学へのファンディングは、国立大学への運営費交付金など基盤的経費の削減と、他方科学研究費補助金などの競争的資金の増加にシフトしているが、それが研究の生産性にマイナスの効果を持つことを、専門分野の異なる全国の大学の研究者にアンケート調査することによって得られたデータにより証明した。また平成29年秋の参議院選挙まえに突如争点となった自民党や有識者会議「人生100年時代構想会議」等が主張する教育無償化について、それが高等教育機関の経営管理に対する影響も含め、検討した。教育無償化案は、大学進学者や大学経営にポジティブな影響をもたらすものと推測されるが、一方で政府財政の立て直しや、大学に配分される研究費にとって、必ずしもポジティブな効果をもたらさないことを論じた。消費税増税分の一部を無償化に回すことで、国際公約となっている公的債務削減が遅れ、政府財政の健全化に支障をきたすこと。また文教予算のうち高等教育無償化を推進するため、日本学生支援機構への奨学金事業費が増加するものの、その分国立大学運営費交付金および私立大学への経常費補助金が削減される可能性があること、の2つが危惧される。以上2つの研究成果は、論文として平成29年度に公表した。
著者
杉本 和弘 鳥居 朋子 高野 篤子 佐藤 万知 立石 慎治 猪股 歳之 福留 東土
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

大学におけるミドルマネジメント人材の状況について、2012年実施の「大学の組織運営とマネジメント人材育成調査」のデータを用いて、学科長として必要な能力構造を析出し、また学科長の遂行能力が多様な経験や教職協働に支えられていることを明らかにした。他方、アングロサクソン諸国を中心に大学や大学コンソーシアムで展開されているアカデミック・リーダー育成プログラムの内容・構成・受講者等について現地調査を行うとともに、東北大学で実際に提供している同種プログラムの実装・改善に活かした。また、国内大学や大学団体が提供するマネジメント人材育成の取組や研修についても調査を行い、その特徴について学会発表を行った。
著者
福留 東土
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
no.46, pp.139-169, 2014-09

This article examines the progress of comparative higher education research and reveals related issues that have been previously discussed. In addition, it notes research trends found in the literature as well as papers written during the past decade. In the past ten years, there have been more than one hundred and fifty individual pieces of published literature or research papers introduced at major academic journals. The United States has remained to be the primary target area of research, but Europe and Asia attracted increasing interests of Japanese higher education scholars. Moreover, there have been some studies oriented toward the comparison of multiple countries. Research that covers the present state of education (undergraduate and graduate education, curricula, student learning outcomes, etc.) are the primary themes, while the secondary area of interest is policies and systems together with broad overviews on higher education for each country. However, subject areas and themes vary considerably depending on the academic society. Thus, this article reviews research presented in various academic journals, and outlines their research characteristics. Interest in higher education for each country can only intensify with the advance of globalization. However, since historical investigations have declined, a future issue for scholars is the renewal of interest in historical research. There is also the need to employ a research methodology that thoroughly investigates the realities in the field, i.e., fieldwork, and to formulate theories derived from new discoveries. We have every reason to believe that comparative higher education research will progress, and as specializations advance, we look forward to exchanges with researchers specializing in specific geographic areas and topics. It is hoped that this approach will lead to the emergence of an improved overall picture of this area of research.
著者
早田 幸政 青野 透 堀井 祐介 前田 早苗 富野 暉一郎 福留 東土
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.書面調査法科大学院について、日弁連法務研究財団、大学評価・学位授与機構、大学基準協会の専門職大学院認証評価システムを検討し、その特質を把握した(前田、堀井)。また経営系、会計系においては、AACSB等アメリカのアクレディテーションシステムを検討し、併せて国内におけるシステム構築に向けた動向や準備状況をABEST21、大学基準協会等諸機関のそれを中心に把握を行った(福留、渡辺)。公共政策系に関しては、アメリカのNASPAAの公式文書を手がかりに評価基準・プロセス等について詳細な検討を進めた上で、国内における公共政策大学院認証評価のアウトライン、認証評価手続規程案等を提示した(早田)。さらに、大学院プログラムに対する国際的な質保証のあり方についても考察を行った(前田、福留)。2.訪問調査国内の公共政策大学院の関係者を対象に、質保証の仕組み構築の可能性や必要性についての意識を聴き取り調査を通じ把握し、その概要を取りまとめた(早田、富野、渡辺)。またアメリカのNASPAAを訪問し、最新の情報の補充に努めた。3.その他研究代表者及び研究分担者の一部が、日本における公共政策系大学院に係る認証評価機関の設立に参与し、その準備に向けて、アクレディテーションに関する複数の資料(手続規程や訪問調査の手引き等)の翻訳をはじめ必要な諸作業を漸次進めてきた。