著者
黒木 伸明
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.31-32, 1991-01-19 (Released:2017-11-17)

小学校教員養成課程の第2学年の学生を対象にした調査の結果、殆ど全ての学生が「数学が嫌いである」「公式を暗記して当てはめればよい」「数学は閉じた学問である」等、算数・数学を指導するには適切とは言いがたい数学観を持っている。また、このような数学観を持つようになったのは、中学校時代からであること、その原因とて、中学校・高等学校での数学活動が与えられた問題を解くこと、すなわち、狭義の問題解決を中心にしてきたことが考えられることが明らかになった。そこで、教科専門科目「算数」の授業を、「数学における創造活動を体験させることにより、より望ましい数学観を持たせることができる」という仮説のもとに実践した。その結果、僅かではあるが、「数学に対する圧迫感・不安感」が軽減するという結果が得られた。
著者
中村 好則 黒木 伸明
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.281-284, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
3

本研究では,聾学校における数学的モデル化を取り入れた指導の可能性について,高等部生徒に対する「お湯の冷め方」の授業実践を通して考察した。その結果,現実の事象を日常的経験や既習の数学的事項と関連づけながら学習できること,数学の有用性や現実事象と数学との関わりを感得できることの効果が示唆され,聾学校生徒の数学学習を質的に改善する手だてとして有効であるという知見が得られた。今後は,さらに実践を重ねることと,数学的モデル化を取り入れた指導を行う時期や内容を検討することが課題である。
著者
黒木 伸明
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。