著者
有本 邦洋 下重 里江 鎌田 泰彰 原 直人 黒澤 美枝子
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.169-174, 2021 (Released:2021-04-15)
参考文献数
21

本研究の目的は,寒冷昇圧試験(CPT)時の昇圧度の差で対象者を群分けした場合に心拍変動と瞳孔の反応に差がみられるかを明らかにすることである.正常血圧男性16例(22 ± 1歳)にCPTを行い,拡張期血圧の上昇が10 mmHg以上を反応群,未満を低反応群とした.統計には二元配置分散分析を用いた.低反応群に比べて反応群では安静時のLF/HF,LFnu,CVR-Rが高値,HFnuは低値であった.また反応群では,CPT時にLF/HFとLFnuは有意に減少し,HFnuは有意に増加した.瞳孔はCPT時に全例では有意な散大を示したが,2群間での反応差はみられなかった.以上の結果より,正常血圧者における寒冷昇圧の大小の差は,安静時とCPT時における心臓自律神経活動の差として認められることが明らかとなった.
著者
道又 利 黒澤 美枝
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.109-122, 2002-11-10 (Released:2018-02-01)

Evidence-Based Medicine (EBM)can be defined as a procedure to evaluate objectively the clinical efficacy of treatment from the viewpoint of a statistical appropriateness. It can also illustrate guidelines for diagnosis and treatment, make the most sophisticated up to date system of medical applications shared by medical professionals beyond individual and cultural difference, and finally, aim at standardization of medicine. As an ethical viewpoint, EBM may be able to provide more positive and essential informed consent by showing better evidence of the treatment to patients. EBM also meets social needs by allocating medical resources effectively, for it can supply, from the very beginning, the most effective treatment. Even in clinical cases, in which the etiology or pathology is unknown, or symptomatology is too complex or multidimensional, EBM can give an active guideline for the treatment to physicians, concentrating only on the efficacy of clinical application, temporarily neglecting the etiological factors. As the only principle to justify medical intervention is the risk/profit ratio, it is extremely important to evaluate usefulness of treatment objectively before introducing the treatment method. Concerning this point, EBM can provide the foundation for medical ethics. Especially in psychiatry, because of difficulty in identifying etiological factors, EBM has a very important role in ethical consideration. However, on the other hand, the popularization of EBM could possibly offer various problems. We must take note of the easy use of EBM as a manual-book, overconfidence or misunderstanding of its "objectivity", neglecting the notion of "Comprehension" (Jaspers K) and related psychopathology, and alteration of patient-physician relationships evoked by a preponderance of objective data.

1 0 0 0 OA 痛みの生理学

著者
黒澤 美枝子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.73-79, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1

痛みは組織を損傷するような侵害性の刺激によって起こり,身体を脅かす危険な信号を知らせるという重要な役割を果たしている。侵害性の刺激によって興奮する侵害受容器は特殊な受容器構造を有しておらず,AδやC線維の一次求心性神経自由終末であると考えられている。一次求心性線維は,脊髄後角でグルタミン酸やサブスタンスPなどの伝達物質を分泌して侵害受容二次ニューロンに興奮を伝える。侵害性情報はさらに脊髄内を上行し,視床の特殊核或いは非特殊核に投射した後,大脳皮質感覚野,大脳辺縁系に投射して,痛みの感覚や情動反応,自律反応,防御反応を引き起こす。生体内にはまた,痛みに対する抑制機構(鎮痛機構)も存在する。
著者
大塚 耕太郎 鈴木 友理子 藤澤 大介 米本 直裕 加藤 隆弘 橋本 直樹 岩戸 清香 青山 久美 佐藤 玲子 鈴木 志麻子 黒澤 美枝 神先 真
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療、精神保健、および家族、社会的支援制度に該当する領域(法律、生活相談)、教育など幅広い領域におけるゲートキーパー養成プログラムを内閣府と協力して作成した。また、内閣府との共同で全国へ研修会やITを通じた普及を図り、ファシリテーター養成のためのプログラムを提供した。うつ病、統合失調症、不安障害、物質依存という4つの精神疾患の危機対応法プログラムとファシリテーター養成プログラムの開発を地域の精神保健に関する関係機関と共同で行い、有効性や妥当性を検証した。
著者
黒澤 美枝子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

体表への触刺激は心地よさ、リラックス効果、不安・抑うつ感の軽減作用などを有することから、薬物療法を補助する療法として臨床的にも注目されている。その効果には脳内のドーパミンやセロトニンが関与する可能性が示唆されているが、これまでそれを直接証明した研究はなかった。我々は、皮膚に加えた触刺激によって、快感や動機付けの発生に密接に関わる「側坐核のドーパミンの放出」が増加すること、一方、嫌悪感や不安の発生に重要な「扁桃体のセロトニン放出」が逆に減少することを、ラットにおいて明らかにした。