著者
PEKAR Thomas
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亡命をめぐる文化人類学的要素(ホームシック、故郷の文化と移住地の文化の差異による葛藤、新しい文化への結びつき等)は異なる分野の亡命テクスト(哲学、文化、文学等)に見られることが明らかになった。これらのテクストを「亡命の文化テクスト」と定義することが可能であり、亡命文学、移住文学、旅行文学に共通するカテゴリーを定義することができる。このカテゴリーは、文学研究および文化人類学の分野で「超域文化テクスト」と定義されている。この「超域文化テクスト」という手法上の概念は第一の成果である。さらに、異文化交流の観点から亡命概念を考察することにより、日本における亡命理解の背景が明らかにされた。日本文化においては、ユダヤやキリスト教文化をベースとする「亡命」の概念が根付いておらず、日本において「亡命」は「追放」の意味合いを持つものとして捉えられていた。ドイツと日本という異なる文化における「亡命」概念の差異の分析は第二の成果である。第三の重要な成果として、様々な文書館および図書館での資料収集、学会の開催(研究発表は出版予定)により、第二次世界大戦中の日本および日本占領地を含む、東アジアへの亡命の全体像が明らかになった点が挙げられる。
著者
明星 聖子 高畑 悠介 井出 新 松原 良輔 松田 隆美 中谷 崇 納富 信留 矢羽々 崇 伊藤 博明 Pekar Thomas 黒田 彰 近藤 成一 宗像 和重 杉浦 晋 武井 和人 北島 玲子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の検討を受けて、今年度は昨年度のテーマに若干変更を加えた以下のAからEの5つのテーマについて、さらに今年度からは総合的なFのテーマも加えて研究を進めた。A.ドイツ文献学の成立の事情とその日本における受容および明治/大正期の文学研究の確立をめぐる検討、B.日本文学における現在の文献学的状況を探るケーススタディ、C.再評価の機運が高まっているイタリアの文献学者S.Timpanaroの代表著作の 読解と翻訳、D.英文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、E.独文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、F.人文学テクスト全般における「信頼性」および「正統性」をめぐる総合的な編集文献学的考察。テーマごとの班活動以外に、全体としての研究会も3回、2019年6月16日に慶應義塾大学で、7月31日に放送大学で、また2020年1月26日に慶應義塾大学で開催した。第1回での研究発表は、「編集文献学の可能性」(明星聖子)、第2回は、「古典文献学の可能性」(納富信留)、「注釈の編集文献学」(松田隆美)、第3回は、「南朝公卿補任の真贋判断をめぐって」(武井和人)、「偽書という虚構ー近代日本の小説3つをめぐって」(杉浦晋)。なお、こうした活動が実を結び、2019年9月に刊行された雑誌『書物学』(勉誠出版)で、特集「編集文献学への誘い」が組まれ、そこでプロジェクトメンバーの論考6本がまとめて掲載されたことは、特筆に値するだろう。