著者
佐々木 陽子 ササキ ヨウコ Yoko Sasaki
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.1-14, 2015-12-01

本稿は、「棄老研究」を民俗学・法理学・文学・映像作品の4種のアプローチに分けて考察する。上記のアプローチのうち、文学的アプローチを中心に扱うが、文学に対時するものとして民俗学が位置づけられる。というのは文学作品では「棄老」を実在の習俗であるとの前提でストーリーを展開させているが、民俗学では「棄老」習俗は実在しないという解釈が定説となっている。たとえば、「埋め墓」と「詣り墓」を別々につくる「両墓制」などによって、「埋め墓」である洞窟や海辺付近から白骨化した遺体が見つかることがあり、あたかも「棄老」習俗が実在していたかのごとくに捉えられるが、それは過ちであるとしている。文学では戦後、深沢七郎・村田喜代子・佐藤友哉などにより「棄老」をテーマに作品が生み出され、老いそして死に至る人間存在の深淵が問いかけられている。本稿は「『棄老研究』の系譜」の前半部に位置づけられる。
著者
Takayuki Miyauchi Shotaro Sasaki Yoko Sasaki Takuma Mogamiya Rumi Tanemura Kunji Shirahama
出版者
社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
Asian Journal of Occupational Therapy (ISSN:13473476)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.236-242, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
24

Introduction: Stroke rehabilitation that considers attention deficits and effectively improves activities of daily living (ADL) requires sufficient evaluation of attention functions. Attention function evaluations are generally performed using neuropsychological tests in patients with stroke. However, such tests become unviable for patients with acute stroke due to fatigue-related unstable general conditions and cannot determine how attention deficits affect ADL. Hence, developing an appropriate observational rating scale is crucial. Therefore, we investigated the factors related to independence in ADL in patients with acute stroke and the usefulness of the Moss Attention Rating Scale (MARS) score in predicting independence in ADL.Methods: In this cross-sectional single-center study, we included 154 patients admitted to Acute Hospital, Japan for stroke treatment between April 2016 and April 2020 who consented to participate. The primary outcome was the motor functional independence measure (m-FIM) score. The secondary outcome measures were the Glasgow Coma Scale score, Brunnstrom recovery stage, grip strength, one-leg standing time (1LST), Mini-Mental State Examination-Japanese score, Visual Cancellation Task score, Symbol Digit Modalities Test score, and MARS score.Results: The 1LST and MARS scores were associated with independence in ADL. The cutoff values were 2.99 seconds for 1LST (average), 89 points for MARS total score, and 58.87 points for MARS logit score.Discussion: The MARS score and 1LST might be useful indices for predicting independence in ADL. Thus, behavioral assessments might be appropriately performed by implementing these indices to determine the degree of ADL independence in patients with stroke, and thereby establishing targeted rehabilitation strategies.
著者
笹木 葉子 ササキ ヨウコ Yoko SASAKI
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-74, 2005-12-20

育児は生活の営みの一部であり、時代、文化、習慣、によって大きく左右される。育児相談ではそれら時代の変化や文化、習慣、個人の価値観等に応じて育児法の情報を提供していかなければならない。しかし、相談に応じる医療者に対する育児法に関する系統的な教育は確立されておらず、個人的見解や経験則に基づく助言が中心になっている。育児法に関する情報を科学的で統一した見解にするためには、エビデンスに基づいて1つ1つ検証していかなければならない。「子どもの睡眠」については養育者の睡眠にも影響を及ぼすため、深刻な場合が多い。この相談に適切に対応するには乳幼児の睡眠生理についての正しい知識が必要である。睡眠については、大脳の生理学や内分泌の研究の進歩によってかなり詳しく解明され始めている。本研究では、乳児期各月齢ごとに睡眠覚醒リズムの生理をまとめ、睡眠覚醒リズムの確立を促す育児法について検討した。全月齢共通に"朝は明るく夜は暗く静かに過ごす"ことを基本に、妊娠期の母親の生活リズムの調整や、乳児期の日中の授乳、離乳食、遊び、運動、タッチケア、沐浴、入浴等で生活にメリハリをつけるなど実践的な育児法に関する情報をエビデンスに基づき整理した。
著者
佐々木 陽子 ササキ ヨウコ Yoko Sasaki
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-14, 2013-07

本稿は、義親の介護を担う「介護嫁」の孕む問題を、以下の二点に焦点をあて論じる。一つは、厚生労働省などの公的データーに依拠し、「誰に介護を希望するか」の期待値と「誰が実際には介護を担っているか」の現実値のギャップが「嫁」についてはいかに大きいかを捉え、それを介護労働の無償性との関連で考察する。いま一つは、相対的に高齢な「介護嫁」は夫に代わって義親を介護する事を自明視する心性を内面化しながらも、親身にまた長きにわたり介護者となっても、法定相続人にはなれないとの法の孕む問題を考える。法律レベルでは、「嫁」の介護労働の無償性に対し、いくつかの救済の道が用意されている。例えば、遺言や生前贈与あるいは養子縁組をし法定相続人になることで、嫁の介護に対する財産的保障を担保したり、また「嫁」に介護を丸投げしてきた義理の兄弟姉妹に遺産相続がなされる場合、彼らに不当利得返還請求を行う事などがあげられる。だが、法律が想定する人間類型は、明確な権利主体として自己決定しうる自立した人間を前提としている。権利を行使しないのは、その人間の自立心のなさゆえであるとの見方を「介護嫁」にあてはめることの過酷さを考えたい。
著者
佐々木 陽子 ササキ ヨウコ Yoko Sasaki
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-14, 2016-07-01

日本とメキシコとは14時間もの時差があり遠く離れている。しかし、死者に飲食物を供える習俗を共有している。西欧の献花台にあるのは、ろうそくと花のみで、西欧の合理主義的見地からは「死者は食べない」と言われる。日本では、死してものどが渇き飢える死者・像が受容される。日本のお盆では今もって一部の地域では墓前飲食が行われている。メキシコの11月1日・2日の「死者の日」は、お盆同様に死霊を墓で歓待し飲食物で迎える。日本では迎え火をたいて霊魂が迷わないようにと、メキシコではオレンジ色のマリーゴールドの花びらを墓から家路までまいて死霊が迷わずに到着できるように配慮され、死者は家人に招き入れられる。日本との類似性を見出しつつも、メキシコではガイコツのお菓子・おもちゃが充満し、「死を笑う心性」「死しての平等」の譜誰と歪んだ平等性は、メキシコの歴史と深い死生観に根差していることを考えさせられる。
著者
佐々木 陽子 ササキ ヨウコ Yoko Sasaki
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-15, 2015-10-01

「老い」から「死」への連なりは、我々の多くが辿ることになる道程である。だが、特殊な場合を除き、若さとは「老い」も「一人称の死」も忘却して生きることのできる特権的時代であり、若者の時間は未来にある。それに対し、老人の時間は過去にある。近年、ボーヴオワールの『老い』の翻訳本が、40年ぶりに新装版として再出版された。本書は、「老い」をめぐる通時的・共時的な先行研究の宝庫であり、民族学、文学、社会学、文化人類学などの知見を用いて「老い」を鳥撤的に描き出す。老いに付きまとう孤独感や不安は、人間存在の実存的な問いを投げかけつつも、階級などの変数によって「老い」のあり様の差異をも告発する。現代社会における若さの賛美は、裏を返せば「老い」の隠蔽であり、さらには、「一人称の死」の不可視化にも連なる。だからこそ、今「老い」を改めて問い返すことに意味があると考える。本稿の「老い」の考察を通じて、その後、棄老物語分析へと繋げていきたい。
著者
加藤 千恵子 廣橋 容子 石川 貴彦 笹木 葉子 南山 祥子 佐々木 俊子 長谷川 博亮 結城 佳子 Cieko KATO Yoko HIROHASHI Takahiko ISHIKAWA Yoko SASAKI Shoko MINAMIYAMA Toshiko SASAKI Hiroaki HASEGAWA Yoshiko YUKI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.63-76, 2018-03

妊婦100 人を対象にマイナートラブルの症状と指尖脈波の非線形解析の手法を用いて,妊娠前期,中期,後期の特徴を検証した。指尖脈波は,心の外部適応力(元気さ)の指標となる最大リアプノフ指数( LLE: Largest Lyapunov Exponent) と,交感神経と副交感神経の状態から自律神経バランス( Autonomic Nerve Balance)でストレスとリラックスの状態がわかる。その結果から,「理想ゾーン」36.3%,「準理想ゾーン」51.0%,「憂鬱ゾーン」3.9%,「本能のままゾーン」2.0% ,「気が張り詰めているゾーン」2.9%,「気が緩んでいるゾーン」3.9% の6 つの領域に分類できた。高ストレス者は3.0% が該当した。LLE 値の平均値は,妊娠前期5.18,中期4.84,後期4.05 で,妊娠経過に伴い心の元気度が有意に低下していた(p= 0.010)。また,疲労と抑鬱の測定値は有意に増加し(p= 0.027, p=0.006),リスクは増していた。妊娠初期のつわりの症状が,「倦怠感」「胃の不快」「面倒さ」に影響したことが示唆された。妊娠後期,一部の者は,経済的負担感が増していた。過去1か月間の疲労・不安・抑鬱の症状を自覚する割合に比べ, 現在の指尖脈波の測定値の方が有意に高く,疲労・不安・抑鬱のリスクは増していた。妊娠初期から人的・経済的基盤を中心とした支援を強化する必要がある。今後,妊婦健診などで指尖脈波やマイナートラブル評価尺度を活用して,可視化・客観視できる結果をもとに妊婦と共に振り返り,活用することが重要である。