著者
細野 恵子 岩元 純 Keiko HOSONO Jun IWAMOTO
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.15-20, 2008-03-31

本研究は、小児看護に携わる看護師の冷却ジェルシートに関する知識と発熱児への対応の現状および勤務病院による違いを明らかにし、発熱児への看護の妥当性を検討する目的で行った。北海道内の国公立病院の看護師452名を対象に、発熱に関する知識の程度と認識、発熱児への観察および介入方法を自記式質問紙により調査した。解熱効果の期待できない冷却ジェルシートの使用割合は約3割であった。また、大学病院群の方が公立病院群よりも冷却ジェルシートの使用割合は高く、発熱温度に関係のない多用傾向が認められた。冷却ジェルシートの多用傾向の背景には発熱に関する知識の程度や育児経験の関連が示唆された。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-95, 2017-03

本研究では、高齢精神障碍者の地域生活支援について、その現状や課題を調査すべくソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施したところ、多くのソーシャルワーカーが高齢精神障害者の地域生活支援を実際に経験し、支援に課題を感じていることが明らかとなった。その内容としては、「身体合併症とそれにともなう支援の難しさ」や障害者総合支援法と介護保険法の接続などを中心とした「制度の問題」、「当事者自身のモチベーションや意識の問題」などが確認された。先行研究でも指摘されるように「長期に渡る入院」の影響も含めて「本人の強い地域生活への不安」「表明されない(地域生活支援への)ニーズ」「根強い入院継続希望」が実際に当事者から語られる現状があることは明白であったが、一方で当時者が介護保険制度のサービス利用に拒否的であることが示唆されるなど、高齢精神障害者の地域生活支援における新たな現状や課題が明らかとなった。For this study, an interview survey of social workers was conducted to elucidate the reality and difficulties of community life support for elderly mentally handicapped people. Results showed that many social workers actually experienced community life support for them and felt some difficulties related to the support. The contents include "physical complications and the difficulties in support associated with them," "system problems" mainly related to Services and Supports for Persons with Disabilities Act and Long-Term Care Insurance Act, and "difficulties of motivation or consciousness of the handicapped people themselves." As previous reports have described, it has been readily apparent that a present state prevails in which handicapped people talk about "their intensive anxiety about community life," "their needs (for community life support) life unsaid," and "their deep-rooted hope to be hospitalized," attributable to effects of "their long-term hospitalization." Results of this study shed new light on the state and issues of community life support for elderly handicapped people, including the suggestion that they themselves are unwilling to receive the Nursing Care Insurance services.
著者
関 朋昭 Tomoaki SEKI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.7-16, 2017-03

そもそも運動部と文化部は何が違うのか、違うのであれば、何が違うのかを明らかにすることが必要であろう。運動部が外郭団体(中体連、高体連、高野連など)と紐帯を形成してきたように、文化部も外郭団体(高文連など)と深い関係性にある。つまりは、運動部が外郭団体の主催事業(競技大会)へ参加しているように、文化部も外郭団体の主催事業(コンクール)へ参加している。そうした背景から、運動部活動における諸問題(顧問教師の過重負担、勝利至上主義など)は、運動部だけに特化した問題ではなく、おそらくは文化部活動にも存在する問題であると考えられる。そこで本研究は、部活動を運動部と文化部に分類することへの疑問を出発点とし、文化部の中でも部員数が多く、最も活発な活動をしているといわれる吹奏楽部に着目しつつ、これまでの部活動のダイトコトミーを批判的に検討してみたい。
著者
大見 広規 マーティン メドウズ Hiroki OHMI Martin Meadows
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.67-72, 2019-03

1906,1966年には,丙午の迷信に従い,出生率や出生性比など,人口動態統計に大きな変化が起こった。次の丙午年は2026年,今から8年後であり,子どもを出産する女性の年齢が30歳前後であることを勘案すると,本学の学生が相当する年齢層となる。学生を対象に,丙午出産についての意識調査を実施し,2026年の人口動態統計の傾向を予測した。回収率は15.4%と低く,特に男性での回収数が少なかった。丙午迷信は約40%が知っていたが,由来は知らないものが多かつた。本人,親,親戚の80%以上が迷信を気にしていず,男女とも約80%以上が,丙午出産を避けようと思っていなかった。避ける場合は,避妊が主であり,人工妊娠中絶や虚偽の届けは考えていなかった。半数以上が,2026年には人口変動が起こらないと予測していた。しかし,20%弱の学生が気にしており,女性は半数がパートナーや親など周囲に影響を受けると回答していること,さらに,生殖医療の普及や,近くなったときのメディアからの情報など,様々な社会因子も予想されることから,若千の出産数減少や,出生性比の変化が起こる可能性は否定できないと予想した。
著者
山中 珠美 高鳥毛 敏雄 YAMANAKA Tamami TAKATORIGE Toshio
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.37-46, 2020-03

【要旨】2011年,大阪市あいりん地区にあるホームレスを支援する施設,シェルター,診療所,および,サンフランシスコ市の社会施設,病院,教会を視察した。その後,8年が経過し,結核やエイズに関する公衆衛生施策,栄養指導等の公衆衛生活動が行われた結果,両市で結核の患者数は減少していた。我が国では専門職が中心になってDOTSを行っているが,アメリカでは医療資格がない者が訓練を受けてDOTSを行っており,DOTSに関する国の経済的負担は少ない。しかし,サンフランシスコ市のような大都市では手頃な価格の住宅の欠如,精神疾患,暴力,エイズ,薬物等の問題がある。また,アメリカの企業は終身雇用ではないため,突然解雇されてホームレスになることがある。経済的な格差は健康格差を生むため,健康,労働,教育,福祉などさまざまな側面から公衆衛生活動について考える必要がある。蔑視せず,現実をしっかりと見て,彼らに寄り添い,今後どのようにしたらいいのかを共に考えなければならない。このような状況の中でアウトリーチ・ワーカーやボランティア等,専門家ではない一人の人として関わりや信頼関係の構築が,ホームレスにとって他のどのような支援よりも遙かに大きな力になっている。差別することなく共に考えることが一番の支援である。
著者
松岡 是伸 Yoshinobu MATSUOKA
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.97-108, 2017-03

本稿の目的は、ある地方自治体で実施されている福祉的貨幣貸付制度に着目し、援助者の観点から利用者の生活状況と利用実態を明らかにしていくことである。そのうえで利用者の生活困窮の複合しやすさや生活の不安定さをつまびらかにしていく。そのため貸付業務の担当職員で相談援助歴が5年以上の4名を対象にインタビュー調査を行った。その結果を修正版グランデッド・セオリーで分析し、主に利用者の生活状況や生活困窮の複合状況、生活の自転車操業的状況、貸付制度の利用と返済過程、申請・利用に伴う諸問題を示した。そこで第1に、生活困窮の複合のしやすさは、利用者の生活能力の困難さや環境的制約によってもたらされていること、第2に、制度利用によって利用者の生活が自転車操業的になり「不安定の中の安定」という状況を招いていたことが明らかとなった。またスティグマが制度を利用しようとする人々のアクセシビリティを阻害していることが示唆された。
著者
加藤 千恵子 廣橋 容子 石川 貴彦 笹木 葉子 南山 祥子 佐々木 俊子 長谷川 博亮 結城 佳子 Cieko KATO Yoko HIROHASHI Takahiko ISHIKAWA Yoko SASAKI Shoko MINAMIYAMA Toshiko SASAKI Hiroaki HASEGAWA Yoshiko YUKI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.63-76, 2018-03

妊婦100 人を対象にマイナートラブルの症状と指尖脈波の非線形解析の手法を用いて,妊娠前期,中期,後期の特徴を検証した。指尖脈波は,心の外部適応力(元気さ)の指標となる最大リアプノフ指数( LLE: Largest Lyapunov Exponent) と,交感神経と副交感神経の状態から自律神経バランス( Autonomic Nerve Balance)でストレスとリラックスの状態がわかる。その結果から,「理想ゾーン」36.3%,「準理想ゾーン」51.0%,「憂鬱ゾーン」3.9%,「本能のままゾーン」2.0% ,「気が張り詰めているゾーン」2.9%,「気が緩んでいるゾーン」3.9% の6 つの領域に分類できた。高ストレス者は3.0% が該当した。LLE 値の平均値は,妊娠前期5.18,中期4.84,後期4.05 で,妊娠経過に伴い心の元気度が有意に低下していた(p= 0.010)。また,疲労と抑鬱の測定値は有意に増加し(p= 0.027, p=0.006),リスクは増していた。妊娠初期のつわりの症状が,「倦怠感」「胃の不快」「面倒さ」に影響したことが示唆された。妊娠後期,一部の者は,経済的負担感が増していた。過去1か月間の疲労・不安・抑鬱の症状を自覚する割合に比べ, 現在の指尖脈波の測定値の方が有意に高く,疲労・不安・抑鬱のリスクは増していた。妊娠初期から人的・経済的基盤を中心とした支援を強化する必要がある。今後,妊婦健診などで指尖脈波やマイナートラブル評価尺度を活用して,可視化・客観視できる結果をもとに妊婦と共に振り返り,活用することが重要である。
著者
関 朋昭 Tomoaki SEKI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-5, 2019-03

本研究は,世の中のあらゆる「集まり」における普遍かつ不変法則を発見した。証明には,数学とくに圏論を用いた。その結果「一つの集まりにおける対象が増えると,もう一方の集まりの対象が減る」という法則を発見した。この法則を「反相関理論」と命名した。
著者
古牧 徳生
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-61, 2018-03

医学の進歩により急速な高齢化が進む先進国では安楽死を合法化する動きが顕著になってきた。本稿は快楽主義の視点から,まず安楽死をめぐる諸事情を概観したあと,今や安楽死は単に個人の要請というだけでなく,社会としても無視することのできない要請ではないかと問うものである。 一節では安楽死が尊厳死へと変わっていく経緯とその際の議論を概観する。 二節ではオランダが世界で最初に安楽死を合法化するまでの歩みを概観する。 三節では日本国内の安楽死事件を通して, 安楽死は三種類に分類されることを確認する。 四節では日本でも学会指針という形で徐々に尊厳死法制化へ進みつつあることを述べる。 五節では安楽死容認の風潮から予想される危険について述べる。 六節では前節での問題点について筆者なりの回答を示す。Facing the rapid aging of society due to ongoing advances in medicine, many developed countries have made moves to legalize euthanasia. From the hedonistic point of view, this article argues for the necessity of euthnasia, not only as personal demand but also as social request. It consists of six sections.1.Ideological review of the transition from "euthanasia" to "death with dignity".2.Steps towards the legalization of euthanasia in the Netherlands.3.Some euthanasia incidents in Japan.4.Struggles towards passing a euthanasia bill in Japan.5.Some prospective problems arising from an increasing tolerance of euthanasia.6.The author's response to the problems posited in the previous section.
著者
古牧 徳生
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.33-86, 2017-03

13世紀も後半になると神学者たちは、強まりゆく理性主義に対して、学問としての神学の確実性を示さなければならなくなった。そこで彼らの多くが採った理論は知性認識の根底においては神が働いているとする証明説であった。だがそうなると、知性認識に形象は不要ということになり、また知性は個々の事物を直接的に把握できるとする直観説になる。その結果、次第に神学は、個物のみが存在するとする唯名論に傾くことになった。だが現実の人間に認識できるのは感覚できる個物だけだから、神についてはいかなる知識も不可能ということになる。その結果、ただ信仰のみが主張されるようになり、宗教改革と教会分裂の悲劇を招くことになった。 1章ではトマスが採用した抽象説とそれが秘める困難について説明される。 2章ではヘンリクスの折衷説とそれがもたらす困難について説明される。 3章では個物こそ事物の完成であると説いたスコトゥスの学説が説明される。 4章ではスコトゥスを否定したオッカムの唯名論により神学が不可能になったことが説明される。 5章ではオッカムがもたらした敬虔主義とその破局である宗教改革そして懐疑思想の復活が説明される。In the late 13th century, facing the rise of rationalism, many theologians had to prove the certainty of theology. Consequently, they adopted the theory of divine illumination, which claims the intervention of God in human intellectual cognition. In such case, however, cognitive species come to be needless, and all theology leaned inevitably towards nominalism which admits the existence of only individual things. But human beings can only recognize things that can be sensed, so we can't acquire any knowledge about God. As a result, people relied only upon belief, which led consequently to the Reformation and the tragedy of schism. 1st chapter : The theory of abstraction in Thomism and its two difficulties. 2nd chapter : The eclectic theory of Henry of Ghent. 3rd chapter : The theory of john Duns Scotus, who taught that individual things were ultimate perfection. 4th chapter : Occam's Nominalism which, by negating Scotus' doctrine of formal univocity, brought impossibility to theology. 5th chapter : Devotionism, Reformation and revival of skepticism in the 16th century.
著者
松岡 是伸 小山 菜生子 Yoshinobu MATSUOKA Naoko KOYAMA
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-29, 2012-03-31

本稿の目的は児童養護施設におけるソーシャルワーク実践事例を用いて,ソーシャルワークの機能を明確にしていくことである。その意義は実践事例の分析と検討からソーシャルワーク実践理論の研究的積み上げに多少なりとも貢献できるからである。 その結果,ソーシャルワーク機能は子どもの生活援助・支援においては随所に活用されていた。直接的援助機能やケースマネージャー機能,保護機能などが実践では多く活用され,子どもの成長と発達によってソーシャルワーク機能は広範囲にわたり活用されることなどが明らかになった。