著者
神名 勉聰
出版者
日本遺伝学会
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2-3, pp.165-178, 1933 (Released:2007-11-30)
参考文献数
6
被引用文献数
2 4

(1) オシロイバナの花色に關與する因子として次のやうなものを檢定した。C, c', c……C は花冠に黄色を表現し、c'は植物體發生の各期を通じて屡ゝCに轉化し、稀にcに轉化する。但しc及びc'は黄色色素の生成能力を缺く。C, c', c を multiple allelomorphs を構成する。R, r',r……R は單獨では cotyledon の裏面を淡赤色に染めるのみで、花色には何等の色をも表現しないが、C と anthocyan 生成に關し補足的關係を結び、花色を赤色ならしめる。r'は植物體發生の各期を通じ常習的にRに轉化し、又稀にrに轉化する。恐らく R, r', r は multiple allelomorphs をなすものであらう。(2) 之等の因子の結合による花の色調は次の通りである。c'c'RR……白色地に赤色條斑CCr'r'……黄色地に赤色條斑Cc'Rr'……淡紅色CCRR……紅色CCRr'……黄紅色地に赤色條斑Cc'RR……淡黄紅色地に赤色條斑Cc'r'r'……淡黄色地に赤色條斑c'c'Rr'……白色地に赤色條斑c'c'r'r'……白色地に赤色•黄色の條斑 (三色條斑型)CCrr……黄色Ccrr……淡黄色ccRR, ccRr, ccrr…白色(3) 雜婚の兩親に使用した白色條斑種 (c'c'RR) と黄色條斑種 (CCr'r') とでは、因子の轉化率の上に大分相違があり、前者では35.04%,後者では4.40%の赤色個體を混生した。この開きはc'及びr'の特性に歸すべきではなく、他の形容因子の働によるものである。(4) c'はCに屡ゝ轉化すると共に、時折cにも轉化する。斯く發現したcは更にC又はc'に轉化することがある。r'も亦R及びrに轉化する特性を有する。(5) 營養體上に起る因子轉化は、所謂第一層にのみ惹起されることが多く、第二層に起ることは比較的稀である。枝變りは、前者の場合では非遺傳性紅色となり、後者の場合には花冠の内方のみ淡紅色となり、次世代に因子の轉化に基く分離が起る。
著者
加藤 茂苞 石川 潤一
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-7, 1921
被引用文献数
10
著者
木原 均 フロラ リヱンフェルト
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-28, 1934
被引用文献数
26

細胞核の全部又はその一部がその細胞より隣りの細胞へと移動する現象を核脱出(Cytomixis) と呼んで居る。この現象は植物界に廣く存在して居る。筆者等は <i>T.aegilopoides</i>×<i>Ae. squarrosa</i> の花粉母細胞成熟分裂各期を研究の結果 Cytomixis を二つに分類すべきを提唱した。<br>(1) 嚴密なる意味の核脱出(Cytomixis <i>s. str.</i>)<br>(2) 核移住(Kerneinwanderung)<br>(1) 脱出する核物質は核の一小部分にして略一樣に染色し網状構造を示す事なし。これはレプトネマ頃に起る。多くは固定時に於ける人工的産物と認めらる。脱出はある一方向に向つて進む事多し、葯の上(下)端より中心に向ふが普通なり。<br>(2) は核の全部又は比較的大なる部分が隣細胞に移る。移住核(又は移住分核)は網状の構造を有す。との現象はレプトネマより第一分裂メタフェースに至る何れの時期にも見られる。自然状態にて起る現象で、恐らく外的誘因(例へば温度の變化)によつて惹起さるものなるべし。<br>移住核が完全なるゲノムを有する場合(即ち全核の移住せる場合)は移住後と雖も普通の生長を續け、主核と同時に第一成熟分裂を行ふ。その際兩核は同時に核膜を消失して合一し1分裂像を作る。之がためにシンディプロイド核(4x)の形成を屡々見ることあり。移住分核は副核を形成す。副核には大小ありて、その數は1母細胞につき1-5個を算ふる事あり。移住後の副核の運命は追求容易なり。一路退化の道程を辿るも甚だ複雜である。その模樣は挿圖に明示されである。<br>純粹種(<i>T. aegilopoides</i>)に於ても兩現象は發見された。併し後者では(2)は稀れである。
著者
堅田 彰
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.136-139, 1950

無毛のアジアハツカネズミ (<i>Mus molossinus</i>) は生後約2週間目頃に脱毛し、成体になると肉眼では認識し難い発育の惡い粗毛がごくまばらに生じている程度である。皮膚を組織的にみると、眞皮が著しく肥厚していることがめだつ。毛嚢部における毛乳頭の発達は惡く、これが原因となつて毛の発育も從つて惡い。脱毛すれば再び毛の発生はなく、毛嚢は退化消失する。脱毛した毛嚢部にある毛嚢腺は退化して、大きな空所をもつた嚢状をなす。<br>裸頸鷄においては、胎兒には頸部から後頭にかけて羽毛の発育をみない。無羽毛部の皮膚の組織をみると、表皮の角層は肥厚しているが、眞皮の網状層の発達が惡い爲に、皮膚は甚だ薄い。眞皮の中には羽毛嚢も羽毛の運動に関係ある筋肉も存在しない。要するに、ハツカネズミの無毛は毛嚢部の陷が遺傳的に発現された結果であり、裸頸鷄においては羽毛嚢やそれに関係のある筋肉が遺傳子の作用によつて除したものであると考えられる。
著者
奥島 実 SUGINO Dan KOUNO Yoshio NAKANO Shigeru MIYAHARA Junichi TODA Hisashi KUBO Shigemasa MATSUSHIRO Aizo
出版者
Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.173-187, 1991
被引用文献数
8 18

A bacterial strain, which assimilated dextran and water-insoluble glucan produced by <i>Streptococcus mutans</i>, was isolated from soil. The bacterium produced and secreted potent dextranase activity, which was identified as <i>Arthrobacter sp</i>. and named CB-8. The dextranase was purified and some enzymatic properties were characterized. The enzyme efficiently decomposed the water-insoluble glucan as well as dextran. A gene library from the bacteria was constructed with <i>Escherichia coli</i>, using plasmid pUC19, and clones producing dextranase activity were selected. Based on the result of nucleotide sequencing analysis, it was deduced that the dextranase was synthesized in CB-8 cells as a polypeptide precursor consisting of 640 amino acid residues, including 49 N-terminal amino acid residues which could be regarded as a signal peptide. In the <i>E. coli</i> transformant, the dextranase activity was detected mostly in the periplasmic space. The gene for the dextranase was introduced into <i>Streptococcus sanguis</i>, using an <i>E. coli-S</i>. <i>sanguis</i> shuttle vector that contained the promoter sequence of a gene for glucosyltransferase derived from a strain of <i>S. mutans</i>. The active dextranase was also expressed and accumulated in <i>S. sanguis</i> cells.<br>
著者
太田 泰雄
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.169-175, 1962
被引用文献数
1 3

1. トウガラシ辛味の遺伝について, 定量的研究をおこなった。辛味成分 capsaicin の定量は閾値法による簡便法を考案し, これによった (Table 1)。<br>2. 甘親として <i>C. annuum</i> の大獅子 (P<sub>1</sub>, capsaicin 含有率0.05%) と伏見甘長 (P<sub>2</sub>, 0.05%), 辛親として八房 (P<sub>3</sub>, 0.25%), 鷹の爪 (P<sub>4</sub>, 0.30%) および <i>C. frutescens</i> Ac 1443 (P<sub>5</sub>, 1.00%) を用いた。<br>3. 甘(♀)×辛(♂)の交雑でえた果実の測定から, メタキセニア現象は認められなかった(Table 2)。<br>4. 甘×辛のばあい, 正逆交雑で差は認められない。F<sub>1</sub> は辛親と同じ程度の辛さ, F<sub>2</sub> および BF<sub>1</sub> では甘親程度から辛親よりさらに辛いものまで分離し, その度数分布は二頂曲線となる (Tables 3, 4 および Figs. 2, 3, 5)。<br>5. 辛×辛のばあい, F<sub>1</sub> はより辛い親と同じ程度の辛さ, F<sub>2</sub>, BF<sub>1</sub> および BF<sub>2</sub> は巾の広い連続変異を示す (Table 5 および Fig 6)。<br>6. 以上の結果, トウガラシの辛味に関して単純な分離は認められず, さらに多数の個体を用いて実験をおこなう必要がある。
著者
森 主一
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.150-156, 1949
被引用文献数
2

1. キイロショウジョウバイとクロショウジョウバイの羽化日週期の状態はかなり違う。一般に前者は後者に比べて羽化曲線がなだらかである。特に5-8時に羽化するものは, 前者では全数の20-30%であるのに, 後者では50%以上に及ぶ。<br>2. クロショウジョウバイの純野生種 (<i>red</i>) の羽化週期状態と, 突然変異品種 <i>w</i> のそれとは大きい違はないが <i>st</i> とはかなり違う。即ち11-14時に羽化するものが, <i>red</i> で12%位であるのに, <i>st</i> は20%以上に及ぶ。<i>red×st, st×w</i> の交雜実驗を行うと, この <i>st</i> に見られる性質は, その眼色に対する表現に伴つて野生型に対し劣性的に行動する。<br>3. キイロショウジョウバイでは純野生種, <i>w, st, dp, vg</i> の間には差を発見しがたい。しかし <i>se</i> との間にはかなりの差がある。即ち2-5時に羽化するものが, <i>se</i> では野生種に比べて著しく少なく, 8-11時, 11-14時に羽化するものがかなり多い。この性質は, 外部形態発現因子としての <i>se</i> が劣性であるに拘らず, 野生種に対し多分に優性的に行動するという著しい特徴である。
著者
萩原 時雄
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.107-116, 1938

アサガホは早咲種と晩咲種とに分けられる。この兩種間の雜種の開花時期は中間となり, F<sub>2</sub> では中間, 早咲, 晩咲の三種が 9:3:4 の比に分離する。F<sub>2</sub> 植物の開花時期と, それ等の F<sub>3</sub> 植物の開花時期の間には <i>r</i>=+0.907±0.0187 なる關係がある。<br>そこで開花時期は遺傳する形質で, 晩咲は早咲きに對して劣性で, 少なくとも二對の因子即ち早咲因子 early (<i>e<sub>a</sub></i>) と晩咲因子 late (<i>l<sub>a</sub></i>) が關與する。日照の制限で開花の早められるのは勿論, 開花時期に關與する因子そのものが變化するためではない。花芽の分化の時期は開花時期に關する遺傳因子により決定される形質であるが, その遺傳因子が能力を發現して形質を現するに至るに都合よき状態が日照の制限により早く招來さるるに原因するものと考へられる。<br>種子發芽の遲速も開花時期に影響する。遲く發芽すると概して開花も遲れる。遲い發芽が種皮の堅いのに原因する事がある。種皮の堅いために遲く發芽する形質は優性であるらしい。<br>白色種皮のものは黒色種皮のものより若干發芽が早いから開花も若干早くなるものがある。<br>尚, 花の着生位置も開花の早晩に關係がある。莖の下部殆んど地際に花の咲くものは precocious (<i>p<sub>c</sub></i>) の因子に原因するもので早く咲く。然し, 是れと反對に下方の花芽が萎縮して上部のものだけ發達するものは tardy (<i>t<sub>a</sub></i>) の因子に關するもので極めて晩咲となる。因に <i>t<sub>a</sub></i> 因子は立田葉 maple (<i>m</i>) 因子とリンケーヂを有す。又, 晩咲因子 <i>la</i> は孔雀葉 pear (<i>p</i>) とリンケーヂを有す。