著者
安部 卓爾 河野 又四 TAKUJI ABE MATASHI KONO
雑誌
西京大学学術報告. 農学 = The scientific reports of the Saikyo University. Agriculture (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
no.9, pp.41-"44-2", 1957-09-01

1. 京都府下に於て採集した茶髪の毛病菌は, その子実体を研究した結果Marasmius equicrinis MULLERと同定された。2. 分離菌は馬鈴薯煎汁寒天平面培養において髪の毛状菌糸束及び子実体を形成した。培地上の菌糸生長の最適温度は24°∿28℃であり, 生長の最高限界温度は36°∿40℃である。菌叢直径の伸長は馬鈴薯煎汁寒天培地に於て最も良好であつたが, 気中菌糸の発達は麦芽及び醤油培地の場合よりも遙かに劣つた。3. 菌糸の致死温度は湿熱では45℃で5∿10分, 50℃で5分以内, 乾熱では45℃で10分以上, 50℃で5分以内であつた。4. 培地の培養前水素イオン濃度と菌糸の生長との関係についてpH9.2では生長が殆ど認められなかつたがpH3.0では生長可能であり, 生長に好適な水素イオン濃度はpH4.8∿5.8と推定せられた。5. 各種の農薬に対する菌糸の抵抗力を試験した結果, 石灰ボルドー, 石灰硫黄合剤, 水銀剤及び銅水銀剤等の常用濃度に於て概ね死滅するものと推定された。
著者
笹川 満廣
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-150, 1958-08-01
被引用文献数
1

ハモグリバエの雌外部生殖器官の構造についてはde Meijere (1838)はじめ2・3の簡単な報告が見られるが, Hendel (1931)以来分類学的記載には単に産卵鞘の大きさ並びに棘毛の有無等が扱われていたにすぎない。私はごく最近になつて種的標徴としてその重要性が認められてきた雄外部生殖器とともに雌の外部・内部生殖器の形態もまた非常に分類学的価値があることを見出した。ここにAgromyzinaeの日本産6属28種について調査した諸形態の比較とそれらの分化について述べる。概形 : 腹部第7環節はいわゆる産卵鞘となり, 以下の環節は通常その中にはまり込んでいる。第8環節の背・腹両面には多数の鋸歯が列生する, 後端にある一対の誘卵器は三角形ないしナイフ状を呈しかなり群又は種間変異に富むほか産卵習性と密接な関連性が見られる。第9環節は細長く, 背・腹板の形状や棘毛数は種々である。第10∿11環節は膜状, 尾毛は1節で多数の感覚毛を装う。内部器官は卵巣, 輸卵官, 受精嚢及び附属腺からなる。受精嚢は褐∿黒色, 球形ないし長卵形を呈し, 腹面にある管状受精嚢と共に近似種間の識別に有効である。Agromyza : 邦産12種(未記録5種を含む)は2群に大別され, yeptans群はrubi群より分化が進んでいないようである。前者の中で最も原始的と考えられるreptans亜群の誘卵器や腹面受精嚢の形態は非常に単純であり, 禾本科植物の葉に産卵する種類が属するヤノハモグリバエyanonis及びイネハモグリバエoryzae両亜群の誘卵器の内面には有毛突起を有する。また, この群のある種の受精嚢には他に見られない横じわがある。rubi群の誘卵器には他属と共通な鋸歯を生じ, 原始的なA. rubi以外の腹面受精嚢は非常に長く, 巻いているほか諸形質の分化の程度が高い。Japanagromyza : この新属は前小楯板棘毛の存在, 平均棍の色彩等によつてAgromyza及びMelanagromyza属とは容易に識別できるが, 雌内部生殖器官の形態にも特異なものが認められる。現在4種が属し, 第9背板はU字状を呈し, 受精嚢の表面には微棘を生じ, さらにduchesneae群の腹面受精嚢の尖端には双葉状の膨大部がある。Melanagromyza : 本属もAgromyza属と同様に誘卵器の形状によつてaeneiventris及びpulicaria両群に分けられ, かつそれは産卵習性に由来していることは興味深い。即ち, 前群には植物の茎内を潜孔する種類が属し, 種間の分化は余り顕著でない。これに反して後群のものは潜葉性で, 表皮内潜孔をするチヤハモグリバエM. theaeほかpulicaria, styricicolaの2種, Agromyza属に近い諸形質を示すyanoi, さらに特殊化したダイズメモグリバエを含んでいる。Carinagromyza, Ophiomyia及びTylomyza : Carinagromyza属の受精嚢は本亜科中最も小さく, 基部はらせん状に分裂する;Ophiomyia属の第9背板は中央部が狭わまり, 受精嚢の頸部は特に長い;Tylomyza属の受精嚢の基部は分裂しない。その他の形態はMelanagromyza属のそれと類似するようで, 既知邦産種が少いため詳しく論及できない。
著者
木村 光雄 国村 昇 MITSUO KIMURA NOBORU KUNIMURA
出版者
西京大学農学部
雑誌
西京大学学術報告 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
no.8, pp.64-73, 1956-09

1) ミツバカイドウの発根性は弱く, 緑枝・休眼枝共に殆んど実用的価値がないが, 緑枝の方が休眠枝に比較して稍発根性が強い。2) 緑枝の場合挿木の時期は7月上旬∿8月にかけて枝条の硬化直後がよく, その時期に於ける太い枝条の方が発根良好である。3) 休眠枝に対する予措としての低温処理或いは温湯浸漬による高温処理は発根に効果的でなく, 休眠の時期的な影響も殆んど認められない。4) hormone処理は発根率を高める効果は認められないが, 緑枝に対して濃度0.1%までの範囲内で濃度の高い方が発根の位置が上昇するし, 発根した個体の根数が無処理のものに比較して多くなる。hormone処理をした場合緑枝では発根する挿穂の基部が膨大となり次いで縦裂し, その裂開部よ発根する。hormone処理をすると緑枝の基部切口にcallusの形成が起らない。5) 発根に最も有利な操作は緑枝の基部が黄化処理されていることである。6) 緑枝挿に於いて用土は川砂よりも粘質的な赤土の方が発根に効果的である。7) ミツバカイドウの発根性は挿穂を取る母樹によつて差異を生じる可能性があり, 将来挿穂採収用の優良母樹の育成が望ましい。
著者
森田 修二 SHUJI MORITA
出版者
西京大学農学部
雑誌
西京大学学術報告 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
no.8, pp.26-33, 1956-09

種々の粘土鉱物に石英砂を混合してカチオン置換容量を一定とし添加養分量も等量として, 之等に水稲を栽培し養分の吸収を研究した。吸収された全窒素量はベントナイト区の植物に於て最高で, カオリナイト区の植物に於て最低であつた。吸収された全燐量はベントナイト区に於て最高, カオリナイト区に於て最低であつた。しかし此の差は粘土鉱物石英砂混合物のアニオン置換容量から予想されるよりも遥かに小であつた。初期に於て追肥として加へた燐は水稲によつて多量に吸収された。カオリナイト区の植物によつて吸収された全加里量はベントナイト区, イライト区の植物による吸収量よりも遥かに大であつた。此の吸収量の相違は粘土鉱物の結晶格子の構造の差異に基くのであろう。水稲による石灰, 苦土の吸収は生長と共に増加した。生育初期に於ては吸収された石灰の量は苦土の量よりも小であつたが, 生育の後期では吸収された石灰量は苦土量よりも大であつた。
著者
辻田 満広 MITSUHIRO TSUJITA
雑誌
西京大学学術報告. 農学 = The scientific reports of the Saikyo University. Agriculture (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.111-115, 1952-03-01

Earias cupreoviridis Walker has been known as an important pest of the cottonculture damaging mainly cotton-bolls by larvae. The present paper deals with the external structure of the mature larva and pupa. The chaetotaxy of the Fracker's system (1915) was applied on this study. Head (Fig. 2) brown; epicranium and area of ocellar group blackish brown. Setal arrangement as follows; 12 on epicranium 2 on adfront, 2 on front, 4 on clypeus, 12 on labrum. Structures of antennae mandibles, maxillae and labium as shown in Figs. 4 6 and 7. Hypopharynx (Fig. 8) supported by paired superlinguae with numerous minute processes and two groups of sharp tooth-like processes. Thorax and abdomen covered with minute pale brown, velvet setae with setiferous processes on subdorsal lines; prothoracic dorsal plate blackish brown; subdorsal processes of meso-and metathorax second and eighth abdominal segments blackish brown, those of first, third, fourth sixth and seventh abdominal segments white and on other segments slightly brown. Thoracic and abdominal chaetotaxy as shown in Fig. 9,A-F. Thoracic legs 5-segmented. Prolegs pale brown, with 20-22 uniordinal crochets, caudal prolegs with 23-24 crochets. Pupa (Fig. 11) oval, reddish brown; head almost smooth; dorsal side of thorax and abdomen rugulous; sexual character shown on abdominal end : female with a mark of narrow genital openning between eighth and ninth abdominal segments and male with a pair of small oval processes on eighth abdominal segment.
著者
辻田 満広 MITSUHIRO TSUJITA
雑誌
西京大学学術報告. 農学 = The scientific reports of the Saikyo University. Agriculture (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
no.2, pp.111-115, 1952-03-01

Earias cupreoviridis Walker has been known as an important pest of the cottonculture damaging mainly cotton-bolls by larvae. The present paper deals with the external structure of the mature larva and pupa. The chaetotaxy of the Fracker's system (1915) was applied on this study. Head (Fig. 2) brown; epicranium and area of ocellar group blackish brown. Setal arrangement as follows; 12 on epicranium 2 on adfront, 2 on front, 4 on clypeus, 12 on labrum. Structures of antennae mandibles, maxillae and labium as shown in Figs. 4 6 and 7. Hypopharynx (Fig. 8) supported by paired superlinguae with numerous minute processes and two groups of sharp tooth-like processes. Thorax and abdomen covered with minute pale brown, velvet setae with setiferous processes on subdorsal lines; prothoracic dorsal plate blackish brown; subdorsal processes of meso-and metathorax second and eighth abdominal segments blackish brown, those of first, third, fourth sixth and seventh abdominal segments white and on other segments slightly brown. Thoracic and abdominal chaetotaxy as shown in Fig. 9,A-F. Thoracic legs 5-segmented. Prolegs pale brown, with 20-22 uniordinal crochets, caudal prolegs with 23-24 crochets. Pupa (Fig. 11) oval, reddish brown; head almost smooth; dorsal side of thorax and abdomen rugulous; sexual character shown on abdominal end : female with a mark of narrow genital openning between eighth and ninth abdominal segments and male with a pair of small oval processes on eighth abdominal segment.
著者
金森 正雄
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.86-97, 1953-01-25

甘藷の護國種についてこれを7∿17℃に貯藏してゐる間に於ける水分, 糖類, ascorbic acidの消長を定量してその相互関係について考察した。(1) 農林2号種を10月25日, 11月10日, 11月27日收穫のA, B, C区に分つて15°内外で地窩貯藏庫に貯藏し, その間1ケ月毎に可食部の各種成分を定量して, その間に於ける諸成分の消長及び夫々の相関関係について考察した。(2) 1年貯藏した旧甘藷と新甘藷とにつきその成分を比較して貯藏法並に品質について考察した。(3) 農林2号種は護國種に比して耐貯藏性も含有成分も共に優れていることを認めた。(附記, 本実驗Iは1943年10月より1944年5月迄及び実驗IIは1944年10月より1945年9月迄の貯藏実驗結果であつて, 一部は1944年4月6日京都大学及び1946年4月5日果実及蔬菜貯藏の研究290頁に発表記載し1946年5月29日農藝化学会例会にて発表した)里芋5種について, その普通成分を定量比較し, これを12月上旬より約6ケ月室温に貯藏して1ケ月毎にascorbin酸を定量して貯藏中に著しく減少しないことを明にした。本実驗について御指導御鞭韃を賜つた恩師京都大学近藤金助教授に深甚の謝意を表し, 併せて実驗試料の入手に特別の御配慮を願つた京都大学松本熊市教授に深謝する次第である。
著者
桂 〓一
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.97-106, 1956-09-01

1. Phytophthora capsici LEON.菌の游走子嚢の発芽は, 游走子による間接発芽と発芽管による直接発芽との2型がある。2. 游走子嚢の間接発芽は水を得てから25℃で4∿8分にして始り, 20°∿21℃で15分後に1.4%の発芽が認められた。そして間接発芽はほゞ45分余で大部分が完了するのに対し, 直接発芽は20°∿21℃でも28℃でも約1時間半後から始まつた。3. 游走子嚢は水がなければ発芽することは出来ないが, 直接発芽は関係空気湿度100%に20時間おかれたものに1.8%認められた。4. 游走子嚢は茄子, 蕃茄, 胡瓜, 玉葱, 梨, 柿, 枇杷の搾汁原液中で間接発芽がおこらないが, 直接発芽は玉葱を除く他の何れでも認められた。5. 蕃茄果実汁液の100倍液はpH5.4であつたが, 游走子嚢が開口せずに游走子が殻内で被嚢するものが多く, しかも被嚢胞子が発芽して游走子嚢の殻壁を貫通するものがあつた。6. これと同じ現象が蒸溜水にN/10HClを加えて調整したpH5.0と5.6との間の酸性溶液の中で起つから, 間接発芽は酸性溶液に対して著しく敏感であり, pH4.8以下の酸性溶液では間接発芽は阻害せられた。なお塩基性の側における間接発芽はpH11.0∿11.2でもなお17.1%認められた。
著者
広瀬 忠彦 浮田 定利 高嶋 四郎
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.44-"50-2", 1956-09-01

1. 本邦におけるトウガラシの栽培と育種のための基礎資料として内外の主要品種57を用い, 子葉, 本葉, 草姿, 花, 果実, 種子等の形質について特性調査を行つた。2. これらの特性調査に基ずいて, 利用上の見地から実用的な品種分類を行つた。まず用途によつて四大別し, さらに伏見甘群, 在来獅子群, Bell群, Pimento群, 鷹の爪群, 八房群, 伏見辛群, 辛味用洋系品種群, 五色群, 榎実群の10品種群に分つた。3. 品種の間について, 子葉と果実の間には大きさ形状のいずれにも相関は認められなかつたが, 本葉と果実の間にはいずれについてもかなり高い相関が認められた。
著者
広瀬 忠彦
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.127-132, 1958-08-01

1 トウガラシ品種間における耐水性の差異を検討するため湛水試験を行つた。2 湛水後の枝梢伸長量の減少については品種間に大差がみられなかつたが, 排水後の回復力には明らかな差がみとめられた。3 在来品種は一般に耐水性強く, とくに鷹の爪・伏見甘が強く, 田中・五色・在来中獅子これに次ぎ, 在来品種中では, 八つ房がもつとも劣る。Harris Early Giant・California Wonder・Long Red Cayenne等の洋系品種は在来品種に比し耐水性弱く, Long Red Cayenneがもつとも弱かつた。