著者
金丸 志保 井上 知宏 室井 栄治 持田 耕介 成田 幸代 日高 利彦 瀬戸山 充
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.145-148, 2013-04-01 (Released:2013-06-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

77 歳,女性。31 歳時関節リウマチを発症した。72 歳時よりエタネルセプトの投与を開始したが無効のため,75 歳時よりアダリムマブへ変更し投与を開始した。初診の 1 ヵ月ほど前より左頬部にドーム状に隆起する表面平滑な直径 1 cm の紅色結節が出現した。皮膚生検にてメルケル細胞癌と診断され,当科に紹介された。診断後,アダリムマブの投与は中止した。拡大切除,術後放射線治療を施行し,術後 3 ヵ月の現在,再発を認めていない。生物学的製剤の長期使用に伴う免疫抑制状態によりメルケル細胞癌を生じた可能性を考えた。
著者
三角 修子 前川 嘉洋 三宅 大我 横山 眞爲子
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.471-474, 2005-10-01
被引用文献数
2

症例は58歳,女性。1992年から慢性腎不全で人工透析を導入された。2003年1月頃から左上腕,右大腿,下腿に疼痛を伴う黒色壊死が突如出現した。2003年5月14日当科初診時,黒色壊死部周囲に暗赤色の皮膚病変を認めた。皮膚生検にて,表皮の変性,壊死と皮下組織の小中血管壁への石灰沈着の所見を認め,calciphylaxisと診断した。低カルシウム血症はなく,副甲状腺ホルモン値も正常値であったが高リン血症を認めていた。抗生剤の点滴と軟膏処置による保存的加療を施行した。当初,感染コントロールは困難で皮膚病変は拡大する一方であったが,塩酸セベラマーの内服を開始したところ,皮膚病変の進行は見られなくなり,潰瘍も縮小,経過は良好であるように思われた。しかし10月21日,嘔吐後に突然心肺停止状態となり,同日永眠された。
著者
小林 桂子 森田 明理 磯村 巌 細川 裕子 辻 卓夫
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.515-517, 2000-08-01
被引用文献数
5 1

難治性尋常性乾癬に対しPUVAバス療法を行い,外用PUVA療法より優れていることを以前明らかにした。しかし,今までのPUVAバス療法では0.3%メトキサレン液であれば1回の治療につき50ml(150 lの浴槽の場合)必要で費用がかかること,同じ浴槽を他の患者と共有することなどの問題があった。新しいPUVAバスインバス療法は,0.0001%メトキサレン温水の入ったビニール製浴槽(家庭で温泉を楽しむために考案されたもので20 l)を風呂に浮かべ,15分入浴後,直ちにUVAを週に4回照射する(初期量=0.2J/cm<SUP>2</SUP>,増量幅:0.2~0.3J/cm<SUP>2</SUP>)。今回,他施設からの紹介もしくは今までの外来治療で難治性であった尋常性乾癬患者14人にPUVAバスインバス療法を行った。平均年齢48.1歳(27~73歳),平均罹病期間12.9年(1~24年)。14人中13人に皮疹の寛解がみられた。13人の寛解までのPUVAバスインバス療法は平均27.0回(7~51回),総照射量73.9J/cm<SUP>2</SUP>(7.7~166.8J/cm<SUP>2</SUP>)。1症例で,照射量増量に伴う紅斑反応がみられたが,増量幅を少なくすること(0.1J/cm<SUP>2</SUP>)でみられなくなった。このほか照射に問題はなかった。PUVAバスインバス療法は難治性尋常性乾癬に有効であると思われる。
著者
三好 経子 高須 博 宮田 聡子 矢口 厚 太田 幸則 勝岡 憲生
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.603-607, 1998-10-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

46歳, 男性。骨髄線維症で北里大学医学部附属病院血液内科入院中に, 下腿に有痛性の隆起性紅斑が生じ同院皮膚科受診となった。初診時, 左下腿外側上方に拇指頭大で紅色の浸潤を有する結節性の紅斑が認められた。右下腿伸側から内側にかけては小児手拳大, 暗紅色の消退傾向にある浸潤性紅斑が認められた。その後も同様の紅斑が下腿や前腕などに出没した。無治療で経過観察していたところ, 初診から約1ヵ月半後に右下腿伸側に胡桃大, 暗紫紅色で軟らかな出血性の紅斑が再発し, その組織像では, 真皮中下層から脂肪織にかけて, 瀰漫性および巣状を呈する多数の好中球と出血が認められた。生検部位は直ちに難治性の潰瘍となったが, ステロイド剤の内服と局所処置の徹底により上皮化した。紅斑はその後も増悪·寛解を繰り返し, 皮膚病変と骨髄線維症の病勢とに相関があり, 自験例の紅斑は, 骨髄線維症に関連して生じたものと考えた。ステロイド治療の継続により皮膚病変はしばらく寛解期が継続していたが, 骨髄線維症の進行と肺炎の合併により死亡した。