著者
名嘉真 武男
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.242-245, 1979-04-01 (Released:2012-03-22)
被引用文献数
2 2

著者らは昭和48年1月から昭和53年8月までの6年8ヵ月間の皮膚カンジダ症1727例について病型分類をおこなつた。ステロイド外用剤ともつとも関係が深いと考えられる乳児寄生菌性紅斑とカンジダ性間擦疹が多く, とくに乳児寄生菌性紅斑ではステロイド外用に起因する汎発型がしばしば観察されるほか口囲カンジダ症, カンジダ性毛包炎, 口唇カンジダ症が少数ながら散見されるようになつた。またステロイド外用の既往のあるものが乳児寄生菌性紅斑で96%, カンジダ性間擦疹で83%, さらに他疾患とくにステロイド外用を行なつている口囲, 肛囲, 間擦部の病変にカンジダ症が続発している症例が多く, また乳児カンジダ症と入浴との関係が深いことをしめした。試験管内実験ではデキサメサゾン, ベタメサゾン添加サブロー培地ではCandida albicansの増殖は促進されるが, 非ステロイド抗炎症剤のbufexamacはC. albicansの増殖曲線にはなんらの影響もあたえないことをしめした。臨床的にもステロイド外用を受けた皮膚カンジダ症の病巣は汎発化の傾向をとり多数の衛星状に点在する丘疹, 膿疱が特徴的な所見であることをスライドで供覧した。
著者
中川 浩一 東田 理恵 夏秋 優
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.489-490, 2022-12-01 (Released:2023-02-28)
参考文献数
3

患者:56 歳,女性主訴:右手背の色素斑現病歴:就寝中に何か右手がざわざわする感覚で目が覚めた。見るとカメムシが手の上にいたので,あわてて左手でカメムシを振り払った。カメムシは捕獲して家のベランダに放った。翌日になって淡い橙色の色素斑が手にみられたので受診した。現症:右手背に,カメムシの形に類似した淡い橙色の色素斑がくっきり残っていた(図 1 )。かゆみや痛みはなかった。周囲に炎症所見はなかった。カメムシ:患者に捕獲したカメムシの形状を,記憶をもとに絵を書いてもらった。本邦では普通種のクサギカメムシに似ていた(図 2 a)。診断と経過:患者の証言やカメムシの絵,色素斑の形状からカメムシ皮膚炎と診断した。色素斑は手洗いなどでは消えなかったが,2 週間ほどで自然に消退していた。この間,かゆみや痛みはなく,色素斑のみであった。
著者
片山 一朗 濱崎 洋一郎 有馬 優子 天満 美輪 前田 亜紀 野村 昌代 武石 恵美子 山本 雅一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.648-654, 2000-10-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12

シェーグレン症候群患者15名,膠原病患者9名,対照皮膚疾患患者14名において更年期症状と原疾患との関連性を検討した。非閉経群では膠原病疾患,皮膚疾患患者共にその更年期症状数は3前後であったが,シェーグレン症候群患者では7と倍以上の陽性数であり,統計的にも有意差が見られた。閉経群ではシェーグレン症候群で8.5とやや高い傾向が見られたが他群との有意差は見られなかった。更年期症状のうち,顔が火照る,足が冷える,汗をかきやすい,手足が痺れるなどの自律神経系ないし循環障害に基づく症状は非閉経シェーグレン症候群患者では80%近くに見られた。閉経群でもこれらの症状は高頻度に見られたが皮膚疾患群での陽性頻度と差は見られず,シェーグレン症候群で閉経前より更年期症状に類似した症状が見られるものと考えられた。閉経前のシェーグレン症候群患者では凍瘡(約80%)と眼の乾燥感(約50%)が多く見られたことより,更年期症状を主訴とする非閉経患者ではこれらの症状はシェーグレン症候群の存在を考える上で重要と考えられた。皮膚温の測定では冷水誘発前に健常人コントロールより3℃以上皮膚温の低下が見られた患者は閉経前,後いずれにおいてもシェーグレン症候群において多く,対照では一例も見られなかった事より皮膚温の測定は更年期症状を訴える患者におけるシェーグレン症候群患者のスクリーニングに有用であると考えられた。冷水負荷後の皮膚温回復時間はシェーグレン症候群,膠原病患者いずれも15分程度とその遷延化が見られた。
著者
上野 彩夏 千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.407-409, 2022-10-01 (Released:2022-11-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

【背景】α-Gal syndrome は,マダニ咬傷によってマダニ唾液腺中の galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に感作された患者が,獣肉の α-Gal に対してアレルギーを発症する疾患である。α-Gal syndrome 患者は哺乳類肉の他,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。対処法として,感作原因であるマダニ咬傷回避の指導が重要である。【目的】マダニ咬傷回避の指導による α-Gal syndrome 患者の予後を解析する。【方法】α-Gal syndrome 患者 13 例(初診時年齢 38~81 歳,平均 66.8 歳,男性 8 例,女性 5 例)について,診断と同時にマダニ咬傷回避の指導を行い,その後定期的に牛肉特異的 IgE 値を測定し,臨床的予後を検討した。【結果】13 例中 9 例が,定期的な経過観察中に牛肉特異的 IgE 値が陰性化した(マダニ咬傷回避の指導開始から牛肉特異的 IgE 陰性化までの期間 11~78 カ月,平均 41.1 カ月)。このうち 5 例が獣肉全般の摂取が可能となり,2 例が豚肉のみ摂取可能となり,2 例が恐怖心から獣肉摂取を回避している。【結論】α-Gal syndrome はマダニ咬傷回避の指導によって多くが治り得る。ほとんどの患者がマダニ咬傷には気付いていないため,日常生活上の徹底的な回避の指導が重要と考える。
著者
橋壁 道雄 大塚 俊 原 典昭 山蔭 明生 山崎 雙次
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.296-302, 2001-06-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
23

当科における全身性強皮症(以下SSc)患者62例に閉口時および最大開口時に顎関節単純X線検査を行い,関節可動域を見ることにより開口障害の有無について検討を行い,SSc 62例中24例(38.7%)に開口障害を認めた。病型別,検査所見などにっいては,diffuse type,抗Topoisomerase I抗体(以下Topo I)陽性例,開口度40mm未満の症例,橋本病合併例に有意に開口障害を伴うことが多く,また,pitting scar(+)例に開口障害を伴う割合が高い傾向がみられた。開口障害(+)例は開口障害(-)例に比べ有意に顔面のスキンスコアが高値であり,トータルスキンスコア高値,罹病期間長期,血漿エンドセリン高値,血清トロンボモジュリンが高値の傾向であった。SSc患者に顎関節単純X線検査を行うことは,関節可動域や下顎頭の形態変化を観察でき,SScの重症度を評価する上で有用な方法であると思われた。
著者
藤川 愛咲子 竹尾 直子 中田 京子 安西 三郎 福田 晴香 岡田 憲広 竹中 隆一 坂本 照夫 米津 圭佑 油布 邦夫 波多野 豊
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.99-102, 2020-04-01 (Released:2020-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

山間部在住の 74 歳,男性。猟犬の飼育歴があり,獣肉アレルギーの既往はない。1 年前,鼠径部のマダニ刺症後に鼠径から大腿部にかけて瘙痒性皮疹を生じ,マダニ脱落後に自然消退した。4 月,草刈り後に下肢に瘙痒性皮疹が出現し全身性に拡大した。腹部にマダニを発見し,自己除去した直後に呼吸困難感,胸痛が出現し救急搬送された。1 カ月後,陰囊部の瘙痒を自覚し同部にマダニを発見し,搔破にてマダニが脱落した直後に全身性の瘙痒,呼吸困難,胸痛を自覚した。Galactose-α-1,3-galactos(eα-Gal)特異的 IgE 抗体は class 2 であり,いずれのエピソードもマダニアナフィラキシーと診断された。自験例は自己除去や搔破などのマダニへの刺激により,唾液中の α-Gal が大量に皮内に注入されたことで発症したと考えられ,マダニアナフィラキシーの既往のある患者にはマダニ刺症時にマダニを指でつまむ,引っ張るなどの刺激を加えないことの啓発が必要と思われた。
著者
馬場 まゆみ
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.196-200, 2019-06-01 (Released:2019-08-06)
参考文献数
26

奄美大島には Leptoconops nipponensis Tokunaga(トクナガクロヌカカ)の亜種である Leptoconops nipponensis oshimaensis が生息しており,毎年春には吸血被害に遭い強い痒みを訴える患者の受診が増える。2011 年 4 月 18 日から 2018 年 5 月 31 日までの 8 年間に当科を受診し,医療記録をもとにヌカカ刺症と診断した患者 64 例について,①年齢,②性別,③受診した月,④被害にあった場所,⑤受傷部位,⑥治療内容,⑦各年毎の患者数,⑧加害昆虫の同定,の 8 項目について検討した。結果として,①患者の年齢は 50∼79 歳が 73%を占めた,②患者の性別は男性 14 例,女性 50 例で,男女比は 1:3.6 で女性の方が多かった,③患者が受診した月は 4 月から 5 月前半に集中していた,④場所はほとんどが海岸で刺されていた,⑤受傷部位は頚部,衣類で覆われた前胸部や上背部が多くを占めていた,⑥治療を行った 42 例(66%)の症例でステロイド内服薬を処方した,⑦各年毎の受診者は 2011 年から 2016 年までは 7 例以下であったが,2017 年に 15 例,2018 年に 21 例で,この 2 年間で半数以上を占めていた,⑧加害昆虫は,その形態的特徴からクロヌカカと同定した,などの特徴がみられた。
著者
高橋 祥子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.141-144, 2001-04-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

28歳,女性。化粧品による接触皮膚炎を生じ,半年後異なる化粧品を使用しても再度接触皮膚炎を生じた。接触皮膚炎の度に化粧品のパッチテストを行い,2度とも数種の化粧品において陽性を呈した。化粧品メーカーの協力で,陽性であったクリームについて成分パッチテストを施行したところ,1,3-ブチレングリコール(以下,1,3-BG)で陽性を呈した。検索した結果,パッチテストで陽性を呈していた化粧品には全て1,3-BGが含有されていた。また,自験例においては同成分の接触皮膚炎の最低惹起濃度は0.1%aq.であった。1,3-BGを含有しない化粧品の使用により皮疹の再燃はない。1,3-BGはその防腐効果と適度な保湿性により年々需要が伸びている保湿剤であり,化粧品には5~10%以上の濃度で含有されていることが多い。多種の化粧品で接触皮膚炎を起こしている可能性のある時は,稀ではあるがL3-BGによる接触皮膚炎を考える必要がある。
著者
中山 英俊 中村 佐和子 島雄 周平 石原 政彦 木村 秀一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.542-544, 1993-06-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
5

帯状疱疹患者27名(外来11名, 入院16名)に対しアシクロビルを投与し, 帯状疱疹後神経痛に対する治療効果について検討した。外来患者にはアシクロビル500mgの1日1回点滴静注を, 入院患者には250mg/回, 1日3回の点滴静注を行った。発症後6ヵ月後に疼痛が残存している症例は外来18.2%(2/11名), 入院31.3%(5/16名)であり, 総合すると25.9%(7/27名)であり, すべて60歳以上の症例であった。疼痛の程度としては弱い痛みが続くもの1名, 弱い痛みが時々あるもの6名と軽度であった。今回の結果からはアシクロビルは帯状疱疹後神経痛の発症率を下げることは困難であるが, 疼痛の軽症化という点からは有効な薬剤であると考えられた。
著者
御子柴 甫 武井 峯男 高瀬 吉雄 二條 貞子 下里 文子 野本 昭三
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1101-1104, 1985-12-01 (Released:2012-03-15)
参考文献数
6
被引用文献数
14 8

トラネキサム酸(TA)内服による肝斑の治療を報告した。40例にTA1∼1.5g/日投与したところ著効9例, 有効24例, やや有効5例であり無効は2例のみであつた。また効果発現までの期間が4週間以内の例が33例あり比較的短期間のうちに臨床効果をあらわした。肝斑に対する内服療法として, TAの投与は最初に試みられるべき治療法と考えた。試験管内においてTAはメラニン生成を阻害した。しかしTAが肝斑に対して有効な理由にはなお不明の点があり, 肝斑の発症に局所線溶活性(plasminogen-plasmin)が関与している可能性を指摘した。
著者
御塚 加奈子 尾形 美穂 井上 卓也 中房 淳司 三砂 範幸 成澤 寛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.259-262, 2007 (Released:2007-07-06)
参考文献数
13

70歳,男性。初診の4ヵ月前より背部にそう痒を伴う紅斑が出現した。膝関節,手背にも紅斑が拡大し,下肢の筋力低下も伴うようになった。臨床所見及び病理組織学的所見より皮膚筋炎と診断した。初診時血液検査にて汎血球減少と異型リンパ球を認めたため,造血器悪性腫瘍を疑い骨髄穿刺を施行し,急性骨髄性白血病と診断した。皮膚筋炎に悪性腫瘍を合併することが多いことは知られているが,急性骨髄性白血病を合併する症例は非常に稀であり,国内外併せて自験例を含め3例のみであった。悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎について若干の考察を加えた。
著者
末永 義則
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.230-236, 1979-04-01 (Released:2012-03-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

白癬にたいするステロイドの影響を臨床例をもとに報告した。白癬病巣はステロイドによつて, 初期には一過性に炎症症状が減退するが, 拡大し, 非定型的となる。時には深在性白癬となる例もある。報告した深在性白癬は白癬性毛瘡3例, チェルズス禿瘡1例, 白癬性肉芽腫1例であり, 組織学的に白癬性毛瘡, チェルズス禿瘡では毛嚢内に, 白癬性肉芽腫では真皮内に豊富な菌要素がみられた。
著者
宮井 恵里子 山本 格 秋山 純一 柳田 満廣
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.439-443, 1996-06-01 (Released:2011-07-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 4

アスコルビン酸の新規安定型誘導体であるascorbic acid 2-O-α-glucoside(AA-2G)の人工紫外線照射によるヒト皮膚色素沈着への影響を検討した。紫外線(UVA+UVB)照射後に上腕内側部の2%(w/w)AA-2G配合クリームと対照クリーム塗布部位を肉眼判定で比較したところ, AA-2Gの配合により有意な(P<0.01, by Wilcoxon matched pairs signed-ranks test)紅斑抑制効果と同時に, 有意な(P<0.05)色素沈着抑制効果を認めた。そこでAA-2Gの作用機序を詳細に検討するため, 培養細胞のメラニン合成能及び紫外線照射によるモルモット皮膚炎症に対するAA-2Gの作用を調べた。その結果マウスメラノーマ培養細胞(B16(F10))のメラニン合成は, AA-2Gにより濃度依存的に抑制された。AA-2G 2.5mMにおいてメラニン合成は約26%抑制され, 同時にDOPA反応も顕著に低下した。細胞から調製した粗酵素液によるチロシナーゼ酵素活性もAA-2Gにより抑制された。また, UVB照射モルモット背部の紅斑は0.5%, 2%(w/w)AA-2G配合吸水軟膏の外用塗布により有意に抑制され, 病理組織学的にも対照と比べて明らかな抗炎症作用が認められた。AA-2Gの紅斑抑制率は試験に供した数種のアスコルビン酸誘導体の中で最も高いものであった。これらの結果からAA-2Gは紫外線による皮膚色素沈着を抑制し, その作用機序としてメラニン合成系の直接的な抑制だけでなく皮膚炎症軽減作用の関与が強く示唆された。
著者
古井 良彦 遠藤 桃子 副島 清美 片山 一朗 西岡 清
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.555-558, 1995-06-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
8

I. はじめに: われわれはlidocaineの経口アナログであるmexiletine hydrochlorideを, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛の疼痛を除去する目的で使用し, 有効であったので報告する。II. 対象ならびに方法: 対象は帯状疱疹患者97名と帯状疱疹後神経痛の患者8名で, 全例を無作為に次の3群に分けた。第1群: 基本処方+mexiletine(150mg/day), 第2群: 基本処方+vidarabine(300mg/day)+alprostadil(60μg/day), 第3群: 基本処方[naproxen(300mg/day)+mecobalamin(1500μg/day)]のみ。III. 結果: 帯状疱疹において, mexiletineを投与した第1群では内服開始の次の日には疼痛が約半分に, 4日目には約1/5に減少した。また全例が約9日で疼痛が消失し, 他群に比し除痛効果が優れており予後も良好であった。他群では疼痛消失までの期間がより長く, 疼痛が残った症例がみられた。帯状疱疹後神経痛についても同様の傾向がみられた。IV. かんがえ: mexiletineの経口投与はiontoforesisと同程度の有効率を示し, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛に伴う疼痛の治療に有効であると考えられる。
著者
高野 美香 西村 正幸 林 紀孝 利谷 昭治 曽爾 彊 久野 修資
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.276-280, 1992

症例は40歳の福岡県出身の主婦で初診の1年前, 躯幹に紅色丘疹を生じ, 2ヵ月前より同様の皮疹が全身に播種状に認められるようになった。組織学的に真皮上層から中層に異型性のあるリンパ球様細胞の浸潤がみられ, 表皮内にも異常リンパ球が認められた。浸潤細胞の大半はT cellの表面マーカーを有し, cutaneous T cell lymphomaと診断した。初診の2年後, 全身倦怠感と著しい皮疹の増悪, 表在リンパ節腫脹とともに末梢血に異常リンパ球13%を認めるようになった。化学療法(VEPAMなど)を開始したが効果なく, 初診後3年半(白血化してから1年半)の経過で死亡した。
著者
柴山 律子 須永 知子 芹川 宏二 鈴木 秀美 下田 祥由
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.890-893, 1989
被引用文献数
1

顕症梅毒の1例を報告し, 当教室における顕症梅毒について統計的考察を加えた。21才男子。陰部潰瘍を主訴として来院。ソープランドにおいて数回感染機会があつた。陰茎冠状溝に無痛性の潰瘍を2個認める。梅毒血清反応ではガラス板法16倍, TPHA 40倍, FTA-ABS陽性。組織所見では真皮の毛細血管増生, 血管内腔拡大を認め, 血管周囲にリンパ球様細胞の浸潤を認めた。電顕所見では, 真皮結合織中にスピロヘータとおもわれる糸くずようのものを認めた。バイシリン内服により, ほぼ2週間で色素沈着を残すのみとなつた。昭和53年&sim;63年3月までの当教室における梅毒患者の全症例数は45例であつた。そのうち顕症梅毒は29例, 潜伏梅毒は16例であつた。年令別症例数では10才&sim;70才代と幅広く広範囲に分布した。全体的な流れのなかでは昭和58年以降に急激な増加を認めた。
著者
原 知之 金澤 伸雄
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.321-326, 2018-08-01 (Released:2018-11-09)
参考文献数
15

自己炎症性疾患とは,自己免疫応答や感染症を伴わないにもかかわらず炎症病態が反復持続する疾患であり,病態として自然免疫の制御異常が関わる。インフラマソーム異常症がその代表であるが,自己免疫疾患との境界に位置する I 型インターフェロン異常症の存在が近年注目を集めている。本稿では精神発達遅滞と凍瘡様皮疹を呈した兄弟例を紹介し,鑑別すべき疾患として I 型インターフェロン異常を伴う自己炎症性疾患である中條-西村症候群とその類縁疾患を挙げ,解説した。中條-西村症候群ではプロテアソームの誘導型サブユニットである PSMB8 遺伝子に,エカルディ・グティエール症候群では TREX1 遺伝子など核酸の処理や認識に関わる遺伝子に,スタンキーヴィッツ・イジドール症候群ではプロテアソーム調節因子の構成成分である PSMD12 遺伝子に変異を認める。プロテアソームはユビキチンにより標識された蛋白質を分解する巨大な酵素複合体であり,細胞周期制御,免疫応答,シグナル伝達といった様々な細胞機能にかかわる。その機能不全により,メカニズムは不明であるが,核酸応答シグナルが異常活性化した場合と同様に I 型インターフェロン異常を来し,2-5AS 活性を上昇させる。凍瘡様皮疹という特徴的な臨床症状からインターフェロン制御異常を想起し,有効な遺伝子解析によって患者の病因を明らかにすることにより,重要な創薬ターゲットとなる分子を発掘することが期待される。
著者
濱田 学 行徳 隆裕 佐藤 さおり 松田 哲男 松田 知子 絹川 直子 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.213-218, 2008
被引用文献数
8

アトピー性皮膚炎(以下:AD)にとってかゆみはきわめて重要な臨床症状であり,掻破による皮疹の増悪が問題となる。そこで今回,精製ツバキ油100%のツバキ油スプレー(アトピコ<SUP>&reg;</SUP>スキンヘルスケアオイル)を用いて,AD患者のかゆみに対する即時的な軽減効果,及びその保湿効果を副次的に検討した。AD患者39例を対象にツバキ油スプレー(以下:ツバキ油)または対照製剤として精製水スプレー(以下:精製水)を各々2週間使用させ,二重盲検&middot;クロスオーバー比較試験を実施した。その結果,ツバキ油使用群は精製水使用群と比較して有意にかゆみを軽減する効果が認められた(p<0.01)。また,ツバキ油使用群は精製水使用群と比べ,有意な保湿効果が認められた(p<0.01)。使用感アンケートでは,スプレータイプの使用しやすさについて,両群ともに「使用しやすい」が73.0%で両群間に差はなかった。しっとり感が「ある」についてはツバキ油使用群が61.5%,精製水使用群が23.1%であり,ツバキ油スプレーはしっとり感があり,使用感にすぐれた保湿&middot;保護剤であることが示唆された。副作用は全症例で1例もなかった。重症度,副作用,使用アンケート(止痒効果,保湿効果,使用感)を総合評価した有用性では,やや有用以上がツバキ油使用群で71.8%,精製水使用群で41.0%と両群に有意な差を認めた(p<0.01)。以上から,ツバキ油スプレーはAD 患者の有するかゆみに対して即時的な軽減効果及び保湿効果が期待でき,日常のスキンケアにおいて安全に使用できるスキンケア剤であると考えられた。
著者
清永 千晶 松田 光弘 吉村 和弘 大畑 千佳 古村 南夫 名嘉眞 武国
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.243-247, 2016

77 歳,女性。初診の 15 年前より本態性血小板血症の診断で加療を行っていた。1 年前より体幹に紅色皮疹が出現し,1 週間前より全身に紅斑,鱗屑,膿疱が生じてきた。病理組織学的に角層下に膿疱形成を認め,角層下膿疱症と診断した。また血中の TNF-α が上昇していた。本態性血小板血症に対しヒドロキシカルバミドで加療をされていたが,増悪を認めたためブスルファンが追加投与となった。その後血小板は速やかに低下し,それに伴い TNF-α は低下し皮疹も改善を認めた。角層下膿疱症とは壊疽性膿皮症,Sweet 病などと共に好中球性皮膚症とされている。皮疹の成立には TNF-α による好中球の活性化作用の関連が示唆されている。本態性血小板血症は骨髄増殖性疾患である。JAK2 や MPL などの遺伝子変異によるサイトカインのシグナル伝達の亢進により発症するとされており,TNF-α が上昇することが知られている。本態性血小板血症と角層下膿疱症の合併は稀であるが,皮疹の増悪時に TNF-α が上昇しており,TNF-α の低下に伴い皮疹が改善したことから,病態形成に TNF-α が関与している可能性が推測された。
著者
阿部 貞夫 和泉 秀彦 嶋田 明子 中村 洋一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.559-567, 1974
被引用文献数
3

抗ヒスタミン剤を中心とした抗アレルギー剤治療にて調節しえない蕁麻疹症例はかなりの数にのぼる。今回, それらの難治性のあるいは遷延化した蕁麻疹症例にたいして使用したHistaglobinの効果を明らかにする目的で100治験例の治療経過の分析を試み, 治療の目安ともいうべき2, 3の集計結果をえたので報告すると同時に, Histaglobinの作用機序についてもいくらかの考察を試みた。結果1) 明かな改善がみられた92症例中88例(95.7%)に4本以内の注射で効果がみられた。2) 93症例について調べた総注射使用本数は, 39例が5本以内, 30例が6~10本以内であつておよその必要本数が明らかにされた。3) 以上を総括すると有効90例, やや有効4例, 無効0, 経過不明6例であつた。4) 忌むべき副作用はまつたくみられなかつた。