著者
加藤 直子 国分 一郎 金子 史男 大河原 章 目黒 高志
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.794-800, 1987-10-01 (Released:2012-03-10)
参考文献数
9

Disseminated DLEとして発症し, SLEへの移行を示し急性膵炎を併発した1例を報告した。患者は41才女子, プレドニソロン60mg投与で加療中, 心窩部痛後, 急激な左腹部痛が出現した。検査上, 血清および尿アミラーゼの上昇がみられ, 腹部エコーおよびCTにより膵臓の腫大と腹腔内の浸出液を認めたことから急性膵炎と診断した。ただちに膵床ドレナージ術を施行したが回復せず死亡した。剖検所見から急性出血性膵炎, 急性多発性胃潰瘍, 肺アスペルギルス症, 肝細胞変性などが確認された。
著者
荒田 次郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.226-229, 2000-04-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2
著者
安野 洋一 前田 基彰 佐藤 みち子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.573-578, 1975-08-01 (Released:2012-03-24)
参考文献数
12

Dermadromeとしての脂漏性皮膚炎を検討するために京都府立医大皮膚科外来患者(昭和42~46年)で統計的観察をおこなつた。脂漏性皮膚炎は全体で3.32%にみられ, 疹型別(安田の分類に準ず)ではscalp type, facial type, flexural type, localized typeの順に多かつた。多発型と限局型の比は1:2.7であつた。つぎに全身性疾患との関係を糖尿病, 前糖尿病状態, その他の全身性疾患の3つに分けて検討した。全身性疾患を合併した脂漏性皮膚炎は18.9%にみられ, 40才以上で著明に増加した。高率にみられた疹型はflexural type, psoriasiforme, facial type, scalp typeの順で, とくにflexural typeは糖尿病, 胃腸疾患, 肝疾患で多い傾向がみられた。また全身性疾患を伴う症例では多発~汎発型が増加した。
著者
大熊 守也 栗本 圭久 高橋 喜嗣 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.794-796, 1981

6才男児の右頬部,外陰部,右下肢に生下時よりみられたリンパ浮腫で,<SUP>131</SUP>I·RISA組織クリアランスは患側下腿で155時間,健側で9時間と半減時間の延長がみられた。blue dyeテストも患側足背のリンパ管は認知できなかつた。脳波,染色体検査も異常はなかつた。治療は,波動型マッサージ,弾性靴下着用,メリロート草製剤内服により2年6ヵ月経ているが,安静にすると下肢の太さが一時減少するのみである。また,包皮のcircumcisionにより排尿障害が解消された。
著者
飛田 礼子 千貫 祐子 野上 京子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.579-583, 2015-12-01 (Released:2016-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

36 歳,女性。カルボシステイン(SCMC),ジメモルファンリン酸塩服用開始数日後,背部,頚部,臀部の色素沈着に気付いた。SCMC の固定薬疹を疑い,薬剤リンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ陰性で,SCMC そのものの貼布試験も陰性であったが,SCMC の中間代謝産物であるチオジグリコール酸(TDA)の貼布試験は陽性反応であった。SCMC 内服試験にて,内服開始 3 日後に瘙痒を伴う紅斑の誘発がみられたことから,SCMC による固定薬疹と診断した。SCMC の固定薬疹では,発現機序に SCMC の中間代謝産物である TDA の関与が指摘されており,その診断においては TDA を用いた貼布試験が有用であるという複数の報告例がある。自験例でも TDA の貼布試験で陽性反応を認めたが,健常人での貼布試験でも同様に陽性反応を認めた。このため,SCMC による固定薬疹の診断における TDA 貼布試験の有用性を検討する目的で,自験例と健常人 5 名を対象として,種々の濃度に調整した TDA の貼布試験を行い,反応性を評価した。その結果,患者,健常人ともに濃度依存性に強い反応が認められ,TDA 水溶液の pH を確認したところ強酸であることが判明した。このことから,TDA の貼布試験による浸潤性紅斑は刺激反応である可能性があり,その判定には注意を要する。
著者
中村 猛彦 小野 友彦 丸尾 圭志 荒尾 龍喜
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-23, 1989

掌蹠膿疱症の姉弟例を経験した。姉: 56才, 約3ヵ月前より発症し, 慢性扁桃炎と仙腸関節部の疼痛が認められた。弟: 44才, 約3年前に発症し, 慢性扁桃炎と左鎖骨部の疼痛が認められた。弟に対しては骨シンチを施行し疼痛部への異常な取り込み像を認めた。また扁摘術も施行し, 経過を観察中である。掌蹠膿疱症において骨関節症状(pustulotic arthro-osteitis)の合併頻度は高く, その病態は慢性扁桃炎などの病巣感染の関与と考えあわせると, 強直性脊椎炎のようなHLA関連疾患としての可能性が考えられるが, 姉弟間にHLA抗原検索の結果共通性はなく, 疾患との関連性も認めなかつた。いずれにせよ本症において家族内発症の報告はきわめて少く, 今後の検討が待たれる。
著者
芦田 美輪 藏岡 愛 西村 香織 芦塚 文美 牛島 信雄 本間 喜蔵 西本 勝太郎 岩田 貴子 竹中 基 佐藤 伸一
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-47, 2010-02-01
被引用文献数
1

15歳(中学生),地元相撲クラブの男子。体幹,四肢の鱗屑を伴う紅斑と左側頭部のBlackdot ringwormにて2007年3月に当科を受診した。<I>Trichophyton tonsurans</I>(<I>T. tonsurans</I>)を分離し,塩酸テルビナフィンの3ヵ月間内服にて治癒した。高校の相撲部に入部後も再発を繰り返し,その都度治療により治癒した。再発のたびに頭髪のhair brush法にてコロニー数を確認した。部内における皮膚の症状を認める部員は,試合や遠征合宿の後に増加する傾向にあった。アンケートによる調査で,顧問教官の指導がなく,<I>T. tonsurans</I>感染症の認識に乏しいことが分かり,再発を繰り返す原因として無症候性キャリアーの存在が考えられた。小・中学生の相撲クラブとの交流もあり,さらなる感染の拡大を防止するためにも,継続的な集団検診,指導者への啓発,治療の徹底が重要と考えた。
著者
牧野 健司
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.270-273, 2016-06-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12

十味敗毒湯は化膿性皮膚疾患,湿疹,蕁麻疹などの適応を持つ医療用エキス製剤であり,皮膚疾患に幅広く用いられる処方として知られている。今回,炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡患者(42 例 83 部位)に対し外用薬と併用して十味敗毒湯を 4 週間以上投与したところ,皮疹重症度スコアは投与 2 週後より有意に改善した。また,部位別(額部・頰部・口周部・顎頚部・胸部・背部・躯幹)に検討したところ,額部および頰部の皮疹重症度スコアは投与 2 週後より有意に改善し,胸部,背部においても改善傾向を認めた。以上の結果から,尋常性痤瘡患者における十味敗毒湯の併用は顔面だけではなく,躯幹における炎症性皮疹を早期より改善することにより,QOL の向上に寄与しうる薬剤と考えられた。
著者
一ノ宮 愛 芦田 美輪 芦塚 文美 小川 文秀 宇谷 厚志
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.27-30, 2012

17歳,男子。頭部~頚部に水疱が多発しカポジ水痘様発疹症の診断で入院した。4日後,頭部~額部に散在する水疱と38度台の発熱を主訴に同級生が受診し,さらに10日後,頭部に水疱を認める同級生が2名受診した。いずれも同じ柔道部員であり部活動を通して頭部に単純ヘルペスウイルスが感染,濃厚な身体接触をきたすスポーツ選手内で拡がる herpes gladiatorum と考えた。格闘技選手の単純ヘルペスでは,指導者などと連携を図り,罹患者の練習禁止や,他選手の症状出現の有無確認など,部活動全体で治療と予防を行う必要がある。<I>Trichophyton tonsurans</I> 感染症と同様に herpes gladiatorum についても啓蒙していくことが重要であると考えた。
著者
栗林 典代 永山 博敏 遠藤 秀治 新海 浤
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.642-643, 2000
被引用文献数
1

30歳の男性。市販の鎮痛薬ニューカイテキZ<sup>®</sup>を内服後に口唇·手指·陰茎に紅斑が出現。固定薬疹と考え,患者の同意を得て内服テストを施行した。成分の一つであるアリルイソプロピルアセチル尿素で皮疹が再燃。薬疹カードを手渡したが,数ヵ月後近医で同成分を含むトーワサール<sup>®</sup>顆粒を処方され内服した。前回よりも紅斑が重症化し,口腔粘膜疹も出現し,潰瘍化。ステロイド内服にて2週間後に略治。再投与により重症化した固定薬疹の1例を報告した。
著者
西岡 和恵 瀬口 得二 村田 雅子 石川 武人
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.520-523, 1998

平成3年7月から平成8年12月までの5年6ヵ月間に山口赤十字病院皮膚科で薬疹と診断した症例のうち, 原因薬剤が再投与試験, 皮膚反応, DLSTのうちの1種類以上の方法で確認できた確実例について検討した。薬疹と診断した全症例は121例あり, うち65例が確実例であった。このうち多剤に反応を示した例が2例あり, 皮疹型, 原因薬剤および皮膚反応陽性例の検討に際してののべ症例数は68例となった。皮疹型では播種状紅斑型が37例と最も多く, ついで蕁麻疹型が8例, 紅皮症型および固定疹型が各7例, 光線過敏症型4例, その他5例であり, また原因薬剤としては, カルバマゼピン6例(播種状紅斑型および紅皮症型), アモキシシリン(播種状紅斑型および紅皮症型)およびアリルイソプロピルアセチル尿素(固定疹型)各5例が多かった。確実例のうち, 再投与試験施行例は68例中42例(61.8%)であり, 皮膚反応の陽性例は63例中34例(54.0%)であった。
著者
平野 京子 安田 和正 降矢 けい 堀川 博朗
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.922-927, 1984

現在までにわれわれはハトムギ種皮熱水抽出物がウイルス性疣贅に対し効果のあることを臨床的に確かめた。今回この活性物質の分離を試みた。活性は<SUP>51</SUP>Cr-labeled K-562をターゲットとするdirect cytotoxicity testで測定した。まずハトムギ種皮熱水抽出物をメタノール:クロロホルム(1:2v/v)溶液で抽出し, その可溶成分を濃縮した。これをシリカゲル薄層クロマトプレート(Merck Art5745)を用い, 展開溶媒として石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)を用いて一次元上昇法によりクロマトグラフィーを行つたところRf値0.18の位置に活性物質が認められた。さらにこの部分をIR, ガスクロマトグラフィー, GC-MSにて分析した結果, 主にC<SUB>16:0</SUB>のpalmitic acidとC<SUB>18:1</SUB>の不飽和脂肪酸の塩であることが同定され, またC<SUB>18:0</SUB>のstearic acidおよびC<SUB>18:2</SUB>の不飽和脂肪酸の塩が少量含まれる混合物であることが判明した。
著者
野本 真由美
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.265-269, 2015-06-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
15

従来の痤瘡治療は毛包漏斗部の角化異常および皮脂分泌の亢進に対する薬剤やアクネ菌に対する抗菌薬が中心に用いられている。しかし,再発を繰り返す難治性の患者は,治療に十分満足しているとは言い難い。また痤瘡は顔面に好発することから患者の心理負担も大きく,短期での治療効果がより一層求められる疾患と考える。十味敗毒湯に配合される桜皮には皮膚線維芽細胞からのエストロゲン産生誘導作用が報告されており,従来治療とは異なるアプローチが期待される漢方薬である。そこで従来治療では難治な尋常性痤瘡患者 122 例を対象に,短期治療を目的として,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時から通常量の 1.5 倍量 (9.0 g/日)で 3 週間投与し,有用性を検討した。評価方法は患者の満足度を重視して,3 つの項目「①皮疹数の減少,②再発率の低下,③再発しても治癒までの期間が短い」のいずれかが確認された場合を「改善」とし,「改善」「不変」「悪化」の3 段階で判定した。その結果,79.5%の改善率が認められた。また他の漢方薬から変方した患者の改善率は 78.4%であった。なお本剤に起因すると思われる副作用は認められなかった。以上のことから,難治な尋常性痤瘡に対し短期間での治療効果を期待するには,薬剤の適正量を考慮することが重要であり,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時に高用量で投与し,症状の改善に応じて適宜減量することが有用であると考えられた。
著者
土肥 孝彰 上田 勇輝 石井 律子 赤塚 正裕
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.48-56, 2012
被引用文献数
4

アトピー性皮膚炎(AD)治療時にスキンケアとして用いられる保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,白色ワセリン,尿素製剤)および炎症の鎮静に使用されるステロイド外用剤(プレドニゾロン製剤)ならびにタクロリムス製剤の皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討した。実験的モルモットドライスキンモデルを用いて,経表皮水分蒸散量(TEWL)および電子顕微鏡により表皮の角層/顆粒層境界域を観察した。ヘパリン類似物質含有製剤は基剤塗布と比較して有意にTEWL が低下し,皮膚バリア機能回復作用が認められ,尿素製剤,白色ワセリンおよびプレドニゾロン製剤と比較して皮膚バリア機能回復作用は有意に優れており,タクロリムス製剤と同程度であった。また,ヘパリン類似物質含有製剤塗布により,角層/顆粒層境界域で層板顆粒の分泌が盛んになり,層状構造物が多数認められた。さらに,<I>in vitro</I> にてラメラ液晶構造の形成促進作用を検討した。ヘパリン類似物質は著しく強いラメラ液晶構造形成促進作用を示し,タクロリムスも有意な促進作用を示した。以上,ヘパリン類似物質の皮膚バリア機能回復作用にはラメラ液晶構造の形成促進が関与しており,優れた水分保持機能と合わせ,乾燥症状主体のADにおいて,有用性は高いと考えられた。また,タクロリムス製剤はプレドニゾロン製剤と異なり,抗炎症作用だけでなく,皮膚バリア機能回復作用を有し,ADの寛解導入および維持療法に有用であることが示唆された。
著者
菊地 克子 小澤 麻紀 相場 節也 森田 栄伸
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.65-71, 2013

2009 年 11 月から 2010 年 5 月の間,東北大学病院および島根大学医学部附属病院を定期的に受診し外用ならびに内服治療によって症状が安定している 20 歳以上のアトピー性皮膚炎患者 40 例の顔面に対し,スキンケア指導とともにスキンケア剤を 8 週間使用した。担当医師は,試験開始時に患者に対し洗顔や保湿方法を指導し,スキンケア剤として乾燥性皮膚に対し開発された「ノブ <sup>®</sup> シリーズ」を使用させるとともに皮膚生理機能と QOL への影響を検討した。全例において 8 週間の継続使用ができた。1 例において塗布部位での紅斑と乾燥の軽度の悪化を認めたが,試験品との因果関係は不明であった。試験開始時および終了時に担当医師による皮膚所見を得て,さらに角層水分量,経表皮水分喪失量,皮表脂質量,テープストリッピングにより得た皮表角層細胞の細胞面積,角層中のセラミドおよびロリクリンなどを測定し,皮膚疾患特異的 QOL 尺度である Skindex-16 とともにそれぞれに有意な差を認めた。これらの結果から,医療治療によって症状が安定しているアトピー性皮膚炎患者に対し,適切なスキンケア (スキンケア指導およびスキンケア剤) が皮膚生理機能と QOL を改善することが明らかとなった。
著者
矢作 榮一郎 赤坂 江美子 加藤 正幸 生駒 憲広 馬渕 智生 田宮 紫穂 小澤 明
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.599-603, 2012
被引用文献数
1

症例 1 : 62 歳,女性。1990 年頃から顔面,前胸部に皮疹が出現した。臨床および病理組織学的所見から,汗管腫と診断した。サリチル酸ワセリン,活性型ビタミン D<sub>3</sub> 誘導体,アダパレンのそれぞれの外用により臨床的治療効果を比較した。そのうち,アダパレン外用部位では,約 4 週間後に皮疹の平坦化と個疹の減数を認めた。症例 2 : 70 歳,女性。2009 年頃から外陰部に皮疹が出現した。徐々に個疹は増数し,疼痛が出現した。臨床および病理組織学的所見から,汗管腫と診断した。ステロイド外用療法では改善がなく,アダパレンの外用療法を試みた。その結果,皮疹の平坦化と疼痛の改善を認めた。両症例で外用療法開始約 1 ヵ月後に再度生検を施行したところ,病理組織学的に管腔構造の減少を認めた。汗管腫に対する治療の一つとして,アダパレン外用療法の臨床的有用性が示唆された。
著者
竹尾 直子 大石 正樹 佐藤 俊宏 馬場 真澄 関川 紀子 三浦 芳子
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.15-18, 2005-02-01

症例は26歳,女性。第1子出産前より両腋窩に皮疹を生じ徐々に悪化したため,出産から1ヵ月後の1998年7月に当科を受診した。初診時,両腋窩に鱗屑を有す米粒大暗赤色丘疹が環状に配列し,前腕屈側にも粟粒大暗赤色丘疹が多発していた。その後,皮疹は粟粒大の膿疱を伴うようになり,病理組織検査では規則的な表皮突起の延長を伴う表皮肥厚及び角層下膿疱を認め,当初我々は汎発性膿疱性乾癬と診断した。皮疹はさらに多発したためプレドニゾロン25mg/日の内服,PUVA療法を開始したが効果に乏しくプレドニゾロンは漸減した。1999年6月歯周囲炎に罹患し歯科治療後,皮疹の新生は止まり,2000年5月プレドニゾロンの内服を中止した。2001年8月躯幹,上肢に皮疹が再燃。2002年8月第2子妊娠後より皮疹は膿疱を伴うようになった。治療はステロイドの外用のみを行い,皮疹は軽減した。患者は2003年5月に低出生体重児を出産し,3ヵ月後には皮疹は完全に消退した。このため我々は本患者を疱疹状膿痂疹と最終診断した。低出生体重児を出産した原因として第2子妊娠時では妊娠初期から本症を発症しており罹患期間が長期に及んだためと考えられた。
著者
竹内 藍子 菅野 重
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.597-600, 2008
被引用文献数
1

69歳,女性。初診の8ヵ月前より右耳輪下部に強い疼痛を伴う紅色結節を自覚していた。初診時,右耳輪部に小豆大で熱感のある,中心に痂皮を伴った紅色硬結を認めた。数回の切除を施行するも明確な病変の病理組織所見は得られず,切除後も再出を繰り返していたが,4回目に切除した病理組織所見で,真皮のリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤と毛細血管の拡張・増生,フィブリノイド壊死を認め,chondrodermatitis nodularis chronica helicis(CNCH)と診断した。自験例では右側臥位で寝ることが多く,持続的な圧迫がかかり,本症の誘因になったと考えられる。また,治療方法について文献的考察をふまえて報告する。