著者
蜂須賀 つや子
出版者
医学書院
雑誌
看護学雑誌 (ISSN:03869830)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.46-48, 1967-10-01

6月8日,世界最大と称するロスアンゼルス郡立総合病院の組織・管理・教育などがどのようになされているか,少なからず期待と好奇心をもって見学した。私たちのバスは,まず出入口をさがして病院を巡り,がっちりした彫刻のある高層建築の玄関についた。案内図のある大机が中央にある。静かな室内である。やがて講堂に導かれて総婦長補佐役の男子看護人の挨拶と本日のスケジュールの説明があった。案内係は5人の日本人看護婦である。 午前10時。まず救急室から一般病棟,分娩室,産科病棟,陣痛室,新生児室,ショックルーム,神経内科,狭心症・糖尿病ユニット,ICU,セントラル・サービスと順にまわり,12時30分職員の食堂で昼食,再び13時25分より外来専門棟,看護学校から精神科病棟,そして最後は,小児病棟をまわった。見学内容について,他の病院と異なり,特に印象に残っている部門を紹介してみたいと思う。その前にこの病院の診療料および病床数と看護単位数を紹介したい。総ベッド数は3085床,総職員数は5,678人。
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
看護学雑誌 (ISSN:03869830)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.446-449, 1994-05-01

はじめに 『リア王』1)(1605年)は,シェイクスピアの4大悲劇の頂点と目される2)など,今日なお高い評価を受けている作品だが,精神医学的には,リア王の言動が痴呆性老人に似ている点で興味深い作品である.もっともリア王痴呆説は別に目新しいものではなく,前世紀末のレールをはじめ,ワイガントやガイヤーも既に唱えている3).ただ,ここで面白いのは,『リア王』という悲劇そのものが,リア王の痴呆に周囲の人々が気づかなかった,あるいは気づいても適切な対策を取らなかったがために起きた悲劇のように見えることである.即ち,『リア王』という物語は,臨床的には周囲が痴呆に対する認識を欠き,その対応を誤った場合に生じる事態によく似ているのである. そこで本論では,リア王の痴呆老人的な言動とそれに対する周囲の対応を中心に,作品冒頭の財産分与の場面と,その後の長女・次女の対応,最後の場面でのコーディーリアの対応という順で,検討を加えてみたい.
著者
野口 裕二
出版者
医学書院
雑誌
看護学雑誌 (ISSN:03869830)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.940-945, 1999-10-01

はじめに 「ナラティヴ」(narrative)という言葉が注目されている.「物語」とか「語り」を意味するこの言葉が,病いや悩み,そして自己や人生とは何かを考える際の重要なキーワードとなりつつある. ナラティヴはもともと文学領域のことばだったが,その後,哲学や文化人類学で注目されるようになり,80年代後半から精神医療や家族療法などの臨床領域でも注目されるようになった.とくに家族療法の領域では,ナラティヴ・セラピーと呼ばれる新しい考え方が90年代以降,中心的な流れとなりつつある.