著者
薬師寺 洋之
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.155-170, 2007-12

Alfred Weberによって1つの学問的体系としてまとめ上げられた立地論は,その後,相互依存的経済体系の中での立地理論あるいは空間経済学として吸収され,発展していった。しかし,かれの意図は,工業立地を,価格現象あるいは相互依存的経済体系から離れ,構造的なものとして捉えることにあった。また,現代経済のグローバル化の進展の下では,貿易理論よりWeberの古典的立地理論の方が,明快に光を当てられる一面がある。そこで,最初の仕事として,Weberの「立地因子」の規定を再検討する。すなわち自然的=技術的計算に基づき,国民経済を対象とするWeber立地論を,批判的に検討し,世界経済的立地論へと翻案する試みに向かって,世界経済の中での立地因子をどう規定すべきかについて,筆者の見解を提示する。
著者
妹尾 俊之
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.79-92, 2010-07

Senoh, Toshiyuki今日, 「地域ブランド戦略」は, 特産品の販売促進と観光地への集客に成果を上げている。これはブランドの「識別機能」の応用である。しかし今日のブランド構築では,「愛着醸成機能」が重んじられる。これを地域に適用して, 地域ブランド戦略の深化を提唱する。 (英文) In these days, Regional Branding Strategy has obtained the result to the sales promotion of a regional specialty and a sightseeing spot. This is a result of applying the Function that Distinguishing of the branding. However, Function to Bring up Attachment is valued in today's brand building strategy. I want to apply this to the region, and to advocate the deepen of the Regional Branding Strategy.
著者
川原 尚子
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-61, 2010-07

本稿はアメリカ証券取引委員会(SEC)によって2010年2月8日に解釈通達された「気候変動関連開示に関する委員会指針」を評価している。本稿では, まず, この解釈通達の背景, 目的, 気候変動問題の開示規則, および解釈通達で示された気候変動開示の項目を検討し, 次に, 10-K様式に代表される公開会社のSEC開示書類での適切な気候変動関連開示を議論し, 最後に, 4つのアメリカ大企業の10-K様式での気候変動関連開示を検討している。解釈通達は公開会社の気候変動関連開示を既存の規則の要請を満たすよう支援することが期待されている。しかし, 公開企業の気候変動関連情報開示の程度は経営判断にゆだねられている。 (英文) This paper critically evaluates the interpretive release ("Release") entitled "Commission Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change" on February 8, 2010 published by the U.S. Securities and Exchange Commission ("SEC"). In this paper, firstly, the main background and the purpose of this Release, the rules requiring disclosure of climate change issues, and the topics of climate change disclosure which are described in the Release are reviewed. Secondly, the appropriate manner of the disclosure related to climate change in public company disclosure documents filed with the SEC represented by Form 10-K is discussed. Finally, the disclosures relating to climate change (Form 10-K) filed by the four largest American companies are examined. The Release is expected to assist public companies to satisfy the required disclosure related to climate change under the existing rules. However, the extent of information related to climate change disclosed by public companies remains a management decision on their part.
著者
岩井 千尋
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.315-337, 2008-03

コーポレート・ガバナンスをどのような形にするかということは,一国の資本主義をどのような形にするかということに繋がるが,その中心に位置する問題が株主重視型ガバナンスか従業員重視型ガバナンスかということである。従来から米国が株主重視であるのに対し日本は従業員重視であったが,法人企業統計から,わが国の大企業は2003年頃から急速に株主重視に舵を切り始めたことが分かる。「失われた15年」を経て,いまや企業は収益力を回復した。しかし,株主重視に寄ったせいで従業員の所得が増えなくなり消費不振を招くなどの悪影響が出始めた。日本がこれ以上株主重視に向かうのは好ましくない。株主のみを重視すべきという主張はさしたる根拠があるものでもなく,日本の終身雇用にマッチしないし,人々の幸せに繋がらない。
著者
永田 誠
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.597-614, 2006-03-31

カントの道徳哲学とドイツ観念論哲学を土台にして,ニックリッシュはかれの組織論を展開している。その組織論はかれの経営経済学の哲学的根底をなしている。かれの組織論の最も大きな特徴は,道徳原理が組織の最も根本的な法則だと捉える点にある。この考えが,今日の経営の諸問題,例えば,企業倫理,コーポレートガバナンス,成果主義賃金制度などの解決にどのような意味を持つのかを論じ,さらに,彼の組織論あるいは経営経済学の持つ学史的意義を明らかにした。