著者
竹居 セラ
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.509-512, 2011-07-01 (Released:2012-07-01)

本研究は,平成22(2010)年度日本農芸化学会大会(開催地 東京)での「ジュニア農芸化学会」において“優秀ポスター賞”に選ばれた.花に生息する野生の酵母・花酵母を分類し,その分布と花の種類との関係を調べ,さらには酵母の生態から花粉の媒体である昆虫の生態を観察しようとするユニークな発想と,実験に用いられている遺伝学的解析手法の完成度の高さから多くの研究者の注目を集めた.
著者
山形 裕士
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.104-110, 2018-01-20 (Released:2019-01-20)
参考文献数
27

サイクリックGMP(guanosine 3′,5′-cyclic monophosphate; cGMP)はサイクリックAMP(cAMP)とともに動物細胞の二次メッセンジャーとしてよく知られている環状ヌクレオチド(cyclic nucleoside monophosphate; cNMP)であるが,植物でも形態形成,ホルモン作用,ストレス応答などを仲介するシグナル分子として機能している.動物では,cGMPの合成,代謝,作用機構などが解明され,一酸化窒素(NO)の二次メッセンジャーとしてのcGMPの働きもよく理解されているが植物では不明な点が多い.本稿では,動物と対比しながら植物におけるcGMPの働きを概説する.なお,植物におけるcAMPの機能についても多くの研究報告があるが,ここではcGMPを中心に述べる.
著者
戸田 安香
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.115-120, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

味覚は,食物を摂食可能であるかを決定するうえで重要な化学感覚である.味は甘味,旨味,苦味,酸味,塩味の五基本味からなり,それぞれの味は口腔中の味蕾に発現する受容体タンパク質により受容される(1).近年20年の間に,味覚受容体分子とその関連分子が次々と明らかになり,培養細胞を用いた機能解析技術により味物質の探索や味覚受容の分子メカニズムの解明が行われてきた.本稿では味覚受容体の機能解析技術に関する解説と,私たちヒトを含む動物の食性(食べ物の種類や食べ方)と味覚受容体のかかわりについて紹介したい.
著者
竹下 典男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.809-820, 2013-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
59
被引用文献数
1

糸状菌は,菌糸の先端を伸長させることで生長する.その生長様式は,極性生長の解析に適したモデルであり,糸状菌の病原性や高い酵素分泌能にも関連している.菌糸生長には,菌糸先端での持続的な極性の維持が必要である.その極性を制御するため,菌糸先端の形質膜における位置情報を介して,微小管とアクチン細胞骨格が協調的に機能することが明らかとなってきた.本稿は,糸状菌の細胞骨格と形質膜ドメインの役割を概説するとともに,極性の維持・確立・焦点化・再構築という各々の現象に着目し,極性生長の総合的な理解を目指すものである.
著者
沖村 光祐 中山 友哉 吉村 崇
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.369-376, 2021-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
29

冬季うつ病は日照時間の短い冬に,気分の落ち込みや社会性の低下などの抑うつ症状が現れる季節性の精神疾患である.欧米の高緯度地域では罹患率が人口の約10%とされ,社会問題になっているが,発症機序は不明である.うつ病は統合失調症や双極性障害に比べて遺伝率が低く,環境因子とともに多数の遺伝子が関与しているため,従来の順遺伝学や逆遺伝学を用いたアプローチには限界があった.近年,精神疾患のモデル動物としてゼブラフィッシュやメダカなどの小型魚類が注目を集めているが,メダカにケミカルゲノミクスのアプローチを適用することで,冬季のうつ様行動を制御する分子機構が明らかになってきたので紹介する.
著者
牟田口 祐太 大森 勇門 大島 敏久
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.18-26, 2014-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
21
被引用文献数
6 3

近年,多くの生物細胞にさまざまなD-アミノ酸が遊離や結合状態で存在し,L-アミノ酸とは異なる生理機能を持つことがわかってきている.加えて,多くの食品素材にもD-アミノ酸が見出されており,その食品機能の解明と食品産業への応用展開が注目されている.本稿では食品中D-アミノ酸の分析方法,代表的発酵食品である食酢中のD-アミノ酸分析によって明らかとなった乳酸菌のD-アミノ酸生産への関与,および乳酸菌から見出されたD-アミノ酸代謝関連酵素の酵素学的特徴について紹介する.
著者
中川 智行 三井 亮司 谷 明生 河合 啓一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.744-750, 2015-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

「産業のビタミン」とも呼ばれる希土類元素(レアアース)は,さまざまなエレクトロニクス製品などの性能向上に必要不可欠な金属であることから,私たちの生活とかかわりが深い重要金属元素に数えられる.しかし,これまでレアアースが自然界において生態系や生物の生命活動にどのように関与するか,その生物学的意義はほとんど研究されていない.このようななか,近年,メタノールを唯一の炭素源として生育できるMethylobacterium属細菌がレアアースを要求する新規なメタノール代謝系をもつことが見いだされ,そのメタノール代謝の鍵酵素がレアアースを補因子とする新規なメタノール脱水素酵素(MDH)であることが明らかとなった.またレアアースを要求するMethylobacterium属細菌が自然界に普遍的に生息すること,さらにはMethylobacterium属細菌のみならず,根粒菌やメタン酸化細菌などからもレアアース依存的MDHの存在が報告されていることなど,レアアースを要求するC1代謝系は単なる一部のメチロトローフ細菌群に限った性質ではなく,広く自然界に分布する一般的かつ基盤的代謝系である可能性が示されている.本解説では,この新規なレアアース依存的なメタノール代謝系についてM. extorquens AM1株を中心に解説し,鍵酵素レアアース依存型MDHの機能と新規なメタノール代謝系の生物学的意義について説明する.