著者
石川 明彦
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.130-150, 1984-06

待ち時間に関するこれまでの研究は、平均待ち時間EWの近似式に関する研究が多いが、この論文では、待ち行列系GI/Ek/mについて、先着順サービス規律の下で、行列内待ち時間分布Fq(x)および系内待ち時間分布F(x)の具体的な式を導いた。複数窓口系における待ち時問分布に関する解析は、サービス時間分布が一定分布Dまたは指数分布M以外の場合、大変厄介である。この原因の一つは、客の系への到着時点と、サービス終了時点の両方に注目する必要があるからである。この研究では、到着時の平衡確率と推移確率行列とを用いることにより、この難点を克服している。さらに、代表的な系El/Ek/m、Ul/Ek/m、D/Ek/m等に対し、Fq(x)およびF(x)を、具体的に数値計算し、表やグラフに示した。その際、到着分布の影響を調べるため、その変動係数の値も同一にしF(x)のパーセント点を比較した。そして、F(x)の性質について考察した。
著者
柳井 浩
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.249-281, 1982-09

我国の医療保険制度に於ける薬価基準の改訂法は、今期の実勢取引価格分布の90%点を以って、次期の薬価基準とする、いわゆる90%バルク・ライン法を中心としている。筆者らはすでに、薬価基準の推移を記述する数学モデルーうまみ巾ーモデルーを提起したが、本研究はこれを基礎として、さらに、2薬業者間の入札競争によって、納入価格が定まるモデルを構成し、一連のシミュレーションを行なって、その結果を検討したものである。すなわち、2薬業者は各々自社内で、はり値の下限ー限度価ーを設定し、薬価基準を上限として、この区間である分布にしたがってはり値を定め、これを医家に提示する。これに対し医家は、薬価基準とはり値の差額ーつまり医家の利益ーを2薬業者について比較し、その大なる方を購入するというモデルである。このモデルによって、180通りの条件の組合わせの各々について、5期間にわたって、薬価基準、市場占有率、粗利益等々を追跡した。特に、薬業者にとって、最も関心があるものと思われる、粗利益の累計に対して、各々の初期のうまみ巾(=初期薬価基準-(原価+流通経費))や限度価が、どのような影響を与えるかを、シミュレーションの結果から調べ、これを中心に薬業者が、営利企業として、どのような行動をとるのかについて推論を展開した。また、初期うまみ巾で不利な立場に立ったものが、値下げによって利益をふやそうとする行動の効果についても検討した。
著者
田口 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.398-408, 1995-12
被引用文献数
9

都市の交通渋滞の問題を考える指針を得るために次のような問題を考える。すなわち、渋滞のない理想的な条件の下で発生する可能性のある交通需要を円滑に通過させるためには、都市の面積のどの位の割合を交通に配分すればよいのであろうか。そのために、前提とする現実をできるだけ単純化してモデルを導く。対象は都市内の人が互いに行き来するという交通である。任意の対が行き来する確率は都市全体で一定であり、ひとりあたりの交通量は都市の人口に依存して増加すると仮定する。このモデルから、都市が大きくなるにつれて道路の割合が大きくなり、とくに中心部では居住に使える面積が著しく少なくなることが導かれる。実際には大量輸送機関が発達しており、また、交通需要の発生のしかたは本モデルの上限よりも緩やかであると考えられる。しかし、交通機関の発達が移動距離の抵抗を小さくし、それが都市の拡大と人の集中をうながし、その結果、便利なはずの交通機関の渋滞を招いているという連鎖のひとつの側面を、本モデルは的確にとらえており、パラメータの同定を行って、実際の問題への適用を試みることは十分価値があるものと考えている。
著者
今井 浩
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-83, 1983-03

枝に容量制約が与えられたネットワーク上で相異る2点間の最大流量の流れを求める最大流問題は、最短路問題と並んでネットワーク・フロー理論の基礎を成している。そして、実際に最大流を求めるための算法は、交通流。通信網解析等に直裁的に応用されるばかりでなく、他のネットワーク問題の部分問題として頻繁に現われるという意味で重要である。最大流算法としてはFordとFulkersonがラベリング法を与えて以来、理論的に計算の手間を改良した様々な算法が発表されてきた。特にここ数年の進展には驚くべきものがあり、現在では、最悪の場合でもO(|A| |V| log |V|)の手間で最大流を求める算法がSleatorとTarjanにより与えられている(|A|:枝数、|V|:点数)。しかし、実用に際してどの最大流算法が最も役に立つかという問題に関しては、あまり研究が成されていなかった(理論的に最悪の場合力)かる手間のオーダが低い算法が、実用に際して最も役に立つというわけではない)。最近、この問題に対してCheung、またGlover et al。が計算機実験による興味深い結果を得ているが、Cheungの計算機実験にはデータ構造。試験ネットワークの点で問題があり、Glover et a1。は全体として優れているもののKarzanovの算法を試していない点など不十分なところもある。本論文では組織的かつ大規模な計算機実験に基づいて、各種最大流算法の実用に際しての有用性を評価する。そのためにまず、各種算法をプログラム化する段階でそれらの効率化を図る。一般に論文での算法と現実のプログラム上の算法との問にはかなりの隔りがあるが、この"効率化"はそれを埋めるものであり、具体的には如何に最適のデータ構造を選び、用いるかという議論が中心になる。そして実際の計算機実験における試験ネットワークとしては、単にランダム・ネットワーク、格子状ネットワークといった人為的なものだけでなく、他に現実の道路網を用意し、それを"加工"したネットワークも用いる。この方法は、ネットワーク算法の有用性を計算機実験により評価する際には非常に有効である。他にも試験ネットワークとして特殊構造を持つものを考え、各算法の特徴をより明らかにすることも行う。上記のような綿密な計算機実験の結果から、本論文では次のような結論を得ている。(結論)実用上、最も役に立つのはDinicの算法とKarzanovの算法である。Dinicの算法は簡単(プログラムのし易さはラベリング法と変らぬ程)であり、通常の場合ではこれで十分である。Karzanovの算法は最悪の場合の保証という点でDinicの算法より優れているが、記憶領域をより多く必要とする。
著者
石井 博昭 塩出 省吾 西田 俊夫 井口 克郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.233-256, 1979-09

この論文では、ランダムな線型不等式制約と通常の線型不等式制約をもつあるE一モデルについて考察し、その解法を与える。この様な、確率的制約条件をもつ問題はこれまであまり考えられていない様であり、解法に関してはさらに少ない様に思われる。最初に、元の確率計画問題Pは対応する決定的等価問題P'に変換される。次に、P'を解く為に、パラメータμをもつ補助問題P(μ)が定義され、P'とP(μ)の双対的関係が明きらかにされる。この関係及びP(μ)に対して示すパラメトリック二次計画手法に基づくアルゴリズムを十分利用して、主アルゴリズムを構成する。最後に、この双対的関係の他の非線型計画問題への適用可能性を議論する。