著者
伏見 正則
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.350-359, 1981-12
被引用文献数
2

本論文は、吉典的ないわゆる秘書選びの問題(secretary poblem、以下SPと略す)に対する解が、雇用がある種の競合状態にある場合にはどのように変わるかについて考察したものである。基本的なモデルは次のとおりである。二つの会社がそれぞれ1人の秘書を採用しようとしている。n人の応募者が、ランダムな順番で毎朝1人ずつ現われ、各社は他社と独立にこの応募者と面接する。採否の決定は、その日の午後応募者に伝えられる。採用通知を出した会社は、残りの応募者の面接は行なわない。一社だけから採用通知を受けた応募者はその会社に採用されるが、両社から採用通知を受けたものは、等確率でいずれか一方を選んで就職する。両社の目標は、n人の候補者の中の最良のものの採用に成功する確率を最大にすることである。この問題は、二人非零和非協力ゲームの一種である。SPをゲーム論的に扱ったモデルは従来いくつかあるが、それらに対するNash均衡解は、どのプレーヤーの戦略も同じで、SPの場合よりも早めに採用を決めようとするものである。われわれのモデルにおける均衡解は、これらと対照的に、一社はSPの場合よりも早めに採用を決めようとし、他社はSPの場合よりも遅めに採用を決めようとする戦略である。雇用が競合する状態になると、各社が競って早期に採用を内定しようとする、いわゆる青田買い競争の現象がしばしば見られるが、本論文の結果は、そのような競争が必ずしも得策でないという教訓を含んでいる。最後に、他社の採否の情報が伝わる場合についてのモデルについても論じている。
著者
森田 隼史 池上 敦子 菊地 丞 山口 拓真 中山 利宏 大倉 元宏
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-22, 2011-12

鉄道運賃は,基本的に乗車距離が長くなればなるほど高くなるように設定されているが,同じ距離でも,会社によって,さらには同じ会社内でも地域や路線によって異なる料金が設定されている.さらに,乗車区間によっては割引ルールや特定の運賃が設定されていることなどから,最短経路の運賃が最安になるわけではない.運賃計算では,利用者の乗車経路が明確でない場合,乗車可能経路の中から最も安い運賃となる経路を利用したとみなし,その運賃を採用するルールが設定されている.そのため,与えられた2駅間の正しい運賃を計算するためには,その2駅間の乗車可能経路の運賃を全て,もしくはその1部を列挙して判断する必要があると考えられてきた.これに対し,我々は2008年,複数の鉄道会社を含む鉄道ネットワークにおける最安運賃経路探索用ネットワークFarenetと探索アルゴリズムを提案し,これを利用した自動改札機用運賃計算エンジンの実用にいたった.本論文では,Farenet構築の基盤となった1会社内の運賃計算,具体的には,首都圏エリアで利用可能であるICカード乗車券Suica/PASMOの適用範囲に含まれるJR東日本510駅の全2駅間(129,795組)に対して行った運賃計算について報告する.4つの対キロ運賃表と複数の運賃計算ルールが存在するこの運賃計算において,異なる地域・路線を考慮した部分ネットワークとダイクストラ法を利用することにより,多くの経路を列挙する従来の運賃計算方法において数時間要していた計算を,約1秒で処理することに成功した.論文の最後では,アルゴリズムの効率を示すとともに,対象ネットワークが持つ運賃計算上の特徴についても報告する.
著者
石井 博章
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.469-476, 1978-12

Kthバス問題は、バスとしてループを含むことを認める場合と認めない場合、さらに負の距離を考える場合と考えない場合などに、分類される。それらの解法も、最短路からなるツリーを利用する方法、最短路アルゴリズムを繰返し適用する方法、DPによる方法そして経路代数による方法など、いくつか存在する。しかしそのほとんどが、パスとしてループを含むことを認めるものであり、J、Yenの最短路アルゴリズムを繰返し利用する方法が現在唯一のループを含まないパスを求める方法と考えられる。ここでクラブ理論でよく知られている結果、P_1を始点_sから終点_tまでのループを含まないパスをするとき、s、t間のループを含まないパスの集合{P}は{P}=min{P_1[○!+]E;E∈{E}}によって表わされる(Eはオイラーグラフ)、を利用することにより、非負の距離を仮定したグラフ内の任意の2点間のループを含まないKthパスを求めるアルゴリズムを提案する。(ただしK番目パスの長さはK-1番目のパスの長さに等しくてもよいとしている)まず最短路アルゴリズムにより、最短路からなるツリーをつくり、そのツリーを利用してツリーに含まれない枝を正確に一本含むサーキット、C_1、C_2、…、C_<m-n+1>をつくる(m、nはそれぞれグラフ内の枝と点の数)。R_1={P_1}、Q_1=P_1として、一般にk〓2にたいしR_k=(R<k-1>-{Q<k-1>})∪{Q<k-1>[○!+]C_i}となる集合R_kをつくる。ここでC_iはQ<k-1>をつくるために使われていないものとする。次にR_kの中で最小の長さをもつサブグラフの1つをとり出しQ_kとする。このようにして順にQ_1、Q_2、…Q_k、…を求め、この中でパスとなるものを順次取出すことによりK番目のパスを求める。この方法はグラフの構造により効率が大きく変化するが、鉄道のネットワークなどには実用性が確かめられた。
著者
毛利 裕昭 久保 幹雄 森 雅夫 矢島 安敏
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.372-388, 1996-09
被引用文献数
6

配送路問題(Vehicle Routing Problem -VRP-)は、「デポ(配送拠点)から配送先のノードに商品等を配送する最小コストのルートを求める」という問題である。この問題は古くから研究がさかんに行なわれており、標準的VRPの基本的な条件としては、以下のものが挙げられる。第1に1つのルートでの積載量が車両の容量を超えないこと、第2に車両数(ルートの数)が上限を超えないこと、第3に配達先のノードは1台の車両で1度だけ配送が行なわれること等である。本論文ではVRPの基本条件である第3の条件を緩和した「分割配送路問題」と呼ばれる複数の車両によるノードの配送を許す問題を考える。このような条件を考えることにより車両の積載効率が上り、必要な車両の数(固定費用)を減少させる可能性が高まる。この分割配送路問題に関する研究は少なく、本論文では新たな定式化を行ない、Fisher and Jaikumarのアイディアにしたがって問題を、車両が配送を行なうノードおよびその配送量を決定する問題と担当ノードが決定した段階で各車両の配送経路を決定する問題に分解することにより数理計画べースの新たな解法を与えている。
著者
Yannan Hu Hideki Hashimoto Shinji Imahori Takeaki Uno Mutsunori Yagiura
出版者
日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.110-129, 2016 (Released:2016-02-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

This paper focuses on a two-dimensional strip packing problem where a set of arbitrarily shaped rectilinear blocks need be packed into a larger rectangular container without overlap. A rectilinear block is a polygonal block whose interior angles are either 90∘or 270∘. This problem involves many industrial applications, such as VLSI design, timber/glass cutting, and newspaper layout. We generalized a bottom-left and a best-fit algorithms to the rectilinear block packing problem in our previous paper. Based on the analysis of the strength and weakness of these algorithms, we propose a new construction heuristic algorithm called the partition-based best-fit algorithm (PBF algorithm), which takes advantages of both the bottom-left and the best-fit algorithms. The basic idea of the PBF algorithm is that it partitions all the items into groups and then packs the items in a group-by-group manner. The best-fit algorithm is taken as the internal tactics for each group. The proposed algorithm is tested on a series of instances, which are generated from benchmark instances. The computational results show that the proposed algorithm significantly improves the performance of the existing construction heuristic algorithms and is especially effective for the instances having large differences in the sizes of given shapes.
著者
山田 善靖 松井 知己 杉山 学
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.158-168, 1994
被引用文献数
16 57

事業体の経営効率を評価するには、その優れている点に焦点を当てて分析する方法とその劣っている点に焦点を当てて分析する方法が考えられる。DEA(Data Envelopment Analysis)は事業体の優れている点から効率性を評価する方法であり、一般に広く利用されている。これに対して本論文では、事業体の劣っている点に焦点を当てて非効率を分析する方法として"Inverted DEA(Inverted Data Envelopmen Analysis)"を提案する。Inverted DEAは、従来のDEAモデルと同じ仮定を用いるが、目的関数にDEAとは逆の関係を与えて事業体の経営に対する非効率の度合いを評価する手法である。次に、ここで提案したInverted DEAが有効に利用される例として、Inverted DEAと従来のDEAを用いて事業体を分類する方法を論じる。この方法は、Inverted DEAとDEAによる評価を組み合わせて用い、事業体の良い所と悪い所を総合的に把握し分類する方法である。この方法は、DEAを単独に用いる場合にしばしば指摘される問題点である、特異な活動をする事業体の評価が高く出る傾向がある点と、大部分の事業体のDEA効率値が1に近い場合、評価が困難である点を補うことができる。最後に実際のデータを用いて、事業体の経営効率の評価分析を行う。
著者
中西 昌武 木下 栄蔵
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.560-571, 1998-12
被引用文献数
10

本論文は, 集団意思決定を効果的に行うために, 新しい手法「集団意思決定ストレス法」を提案し, Analytic Hierarchy Process (AHP)への適用を検討する. この手法は, 評価者の原始データ(見解)を操作することなく, 各評価者の不満の総和(集団意思決定ストレス)を最小化する評価者格付けを行う. 参加者の合理的な格付けの結果, 類似見解が多い見解の持ち主の重みは大きくなり, 孤立した見解の持ち主の重みは小さくなるが, それぞれの重みが不当に重んじられたり軽んじられたりすることはない. この手法を用いることにより, 類似見解グループの探索や, それに基づく集団案の収斂が行いやすくなる.
著者
中川 覃夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-27, 1980-03

この論文では、予備ユニットから成り立つシステムの点検方策について議論する。例えば、停電したとき、もし予備発電機が故障していたならば、病院とか大きなビルでは非常に危険な状態を招くであろう。他の例として、敵の攻撃から守るための軍用機器をあげることができる。このように、要求されたとき、そのシステムが故障している状態をできるだけ避けるために、日頃から点検しておくことは重要である。ここでは、予備発電機を例にとって、停電が起るまでの点検方策を考える。すなわち、一定時間間隔古t_0で点検し、もし故障を発見したならば、修理する。修理終了後、点検はまた一定時間問隔t_0で行われ、停電が起ったとき、この過程は終了する。このモデルは有限状態をもつマルコフ再生過程を形成し、再生型方程式を作ることによって、平均点検回数、平均修理回数、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率、を求めることができる。ここでは、とくに、停電が指数分布に従って起ると仮定する。そのとき、ある適当底費用を導入し、前の結果を利用することによって、停電までの期待費用を求め、それを最小にする最適方策を決定する。ある簡単な条件のもとでは最適点検時間が方程式の解として一意的に定まる。更に、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をできるだけ小さくするための点検方策も求める。すなわち、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をある与えられた小さい値よりも小と底る点検時間を求みる。最初のモデルでは、点検によって発電機は新品同様になると仮定しているが、点検によって故障率は変化しない場合も考えることができる。この場合、停電が起るまでの期待費用と有限な点検時間が存在するための十分条件を与えるが、一般に解析は難しい。しかし、期待費用は点検時間t_0の関数として与えられているので、それを計算することは容易であろう。更に、予備発電機が停電で稼動中のとき故障する場合も考え、前と同様な方法でこの場合の期待費用も求める。数値例として、点検によって予備発電機が新晶同様になる場合と故障率が変化しない場合の最適点検時間を求め、比較する。更に、停電時間をxとしたときの最適時間も求める。
著者
平岡 和幸 吉澤 修治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.509-530, 1998-12

心理学において, 「慣れ」や「飽き」のように, 同じ選択を続けると効果が悪くなる現象を記述する, ロブ-パス問題と呼ばれるモデルがある. Abe and Takeuchiは, この問題をオンライン学習問題として定式化し, それがmulti-armed bandit問題の拡張とみなせる事を指摘した. 古典的なbandit問題との違いは, プレイヤーの選択が環境自体に影響を与え, 環境を変化させてしまうという点にある. 学習問題としてのロブ-パス問題に対してこれまでに提案された戦略は, すべて基本的に, 「未知環境からの反応をもとに, その環境に対する最適"定常"戦略を推定し, その戦略に従って選択肢を選ぶ」ということを繰り返すものである. また, 戦略の評価には, 環境が既知だった場合の最適"定常"戦略と比較して, 実際には環境が未知な事によるロスが, どの程度におさまるかを基準としている. このような方針が妥当かどうかを判断するためには, 環境が既知だった場合の(定常とは限らない)最適戦略を知っておく必要がある. 本論文はこれを導出する. その系として, 従来研究で仮定されていた「マッチング条件」が, 最適戦略が打ち切り時刻によらないための必要十分条件となっている事を指摘する. これにより, 目標として"定常"戦略のみを考えることの正当性が保証されることになる. マッチング条件自体の意味や妥当性に関する議論も行う. さらに, 漸近最適性を定義し, 忘却ありの相手なら定常戦略が漸近最適となるが, 忘却なしなら漸近最適戦略は存在しない事を示す.
著者
篠原 章宏 山下 英明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.82-102, 2009-12

本稿は,各工程のカンバン枚数と基礎在庫量を決定する生産計画と,この生産計画に必要な資金を除いた余剰の資金を運用する運用計画を同時に策定し,運用で得られた利益を組み込んだ次期の資金をもとに,次期の生産計画と運用計画を同時に策定する多期間計画問題を考える.一般にこの問題の実行可能解の数は膨大で,最適解を求めることが難しい.一方,生産計画問題と資金運用計画問題を分離して,独立に解こうとすると,問題間のトレードオフによって,精度の良い近似最適解を得られない可能性が高い.そこで,本稿では共進化GAの考え方を用い,比較的精度の良い近似最適解が得られる解法を提案する.
著者
大沢 義明 鈴木 敦夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.368-395, 1987-09
被引用文献数
2

本研究では、最近研究されてきた計算幾何学の一分野である地理的最適化問題の手法を用い、グループ利用施設の最適配置問題について、都市施設計画という見地から考察を加える。グループ利用施設とは、会議室、結婚式場、テニスコートのように、"複数地点の利用者から成るグループ"と"施設"とが対応するような施設で、その配置問題は、"一地点の利用者"と"施設"との対応に注目した既存の配置問題とは、根本的に異なる。本研究では、まず第一に、グループの移動費用が距離の二乗和に比例する場合、グループ利用施設の最適配置問題が地理的最適化問題に帰着することを示す。第二に、グループ利用施設の最適配置の特徴とその頑健性について論じる。具体的には、単位正方形上での一様な人口分布と、現実の都市地域での人口分布(宇都宮市、日立市、諏訪地区)とを考え、地理的最適化問題の解法プログラムを用いて、最適配置などの計算を行う。そして、数値結果から、グループ利用施設の最適配置では、施設が中央に集中するという事実を例証する。さらに、"アクセシビリティ"、"施設容量"という二つの観点から、グループ利用施設の最適配置のグループ構成人数に関する頑健性について考察を加える。
著者
中井 暉久
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.113-122, 1986-06

戦火で焼け出された難民が敵襲を避けながら安全地帯へ移動するとき、彼等はどのように行動すべきか?一刻も早く安全地帯へ進むべきか、それとも移動すると発見されやすいので、原地点に留まるべきか留まるべきか、あるいは後戻りして滴の目をくらましながら戦争終結を待つべきか?離散型の逃避-探索逐次ゲーム論文は極めて少ないが、本論文では上のような問題を次のような2人0和逐次ゲームとして定式化する。箱0、1、2、・・・が、この順序で一列に並んでいる。逃避者(player I)は、ある箱からスタートし各期で、(i)現在の箱に留まる、(ii)右隣りの箱に移る、(iii)左隣の箱に移る、の三つの決定から1つを選ぶ。探索者(player II)は、各期で0以外の任意の箱を探索する。箱0は逃避者にとっての安全地域でありゴールである。逃避者は直前の期に隣りの箱から移ってきた場合と、続けて同じ箱に留まっている場合の二通りの条件付き発見確立が与えられている。また、各期の終わりに逃避者の位置が探索者に分かるものとする。利得関数は、定められた期間内に逃避者が発見されない確率である。論文では、この逐次ゲームを再帰関係式で表わし、k期間逐次ゲームの解が次々と計算可能である。解の特徴としては、逃避者の位置がコールに極めて近い所では、彼は全速力でゴールへ飛び込み、ゴールから少し離れた場所では、ゴールに近づくか、現位置に留まるかであって、後戻りはしない。これに対し、ゴールから遠く離れた所では、あたかもゴールがないかのようにかくれ、従って逃避者の最適戦略は完全混合型となり、後戻りする正の確が存在する。探索者の最適戦略も、それ等に応じたものとなる。
著者
須永 照雄 近藤 英二 ビスワス シャマン・カンティ
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-44, 1978-03

待ち行列問題に対し、理論と応用のギャップを埋めるため、いくつかの近似手法が発表されている。ラッシュアワー問題など、長い待ち行列を有するシステムに対し、連続モデルを利用する方法がすでに試みられている。こゝでは必ずしも長い待ち行列を有しないいくつかの典型的な問題に対し、連続モデルを利用する手法を提案し、厳密解と近似解の比較よりその有効さを示した。まづ、単一窓口待ち行列問題を扱っている。到着率をλその分散を△iとし、サービス率をμその分散を△_0とするとき、入力を平均入分散△iの正規確率過程と考え、出力を平均μ分散△_0の正規確率過程と考える。次に系内客数Xの確率密度関数f(X)に関する拡散方程式を立て、指数型の解を得る。系内平均客数Lの近似式はf(x)の平均で与えられることは知られているが、これは待ち行列が充分長くシステムが殆んど空にならないことが前提となっている。一方、厳密解の特性としてL=ρ≡λ/μ(ρ<<1)が知られている。そこで近似式に補正項を加え前記の特性を持たせた。すなわち[numerical formula]なる式を提案している。M/G/1(∞)の場合、近似式はヒンチン・ポラチェックの式と一致している。他の数値例としてE_2/E_2/1(∞)およびE_<10>/M/1(∞)を扱っている。単一窓口で系内客数に制限mが課せられているとき、系内平均客数はL≒∫^m_0 xf(x)dxで与えられる。この場合も厳郁解の特性L=ρ(ρ≪1)およびL=m(ρ≫1)をもつように、適当な補正項の追加と積分の上限mの変更を行っている。複数窓口を有する待ち行列問題に対しては、上記のような厳密解の特性を利用することができないので次の手法を用いた。入力として平均μ分散△iの正規確率過程を考え、出力として、系内客数Xが窓口数sより小のとき、平均xμ分散x△_0なる正規確率過程を考える。このときの拡散方程式の解をf_1(x)とする。xがsより大なるとき、出力は平均sμ分散s△_0となり、拡散方程式の解をf_2(x)とする。解f_1(x)とf_2(x)はx=sで連続的に接続させ、これを用い待ち行列の長さL_qは、[numerical formula]と計算される。数値計算例としては、M/M/S(∞)、M/D/S(∞)、D/M/S(∞)およびE2/E2/S(∞)を扱った。また、この方法は単一窓口(S=1)の場合にも有効なことを示した。
著者
木俣 昇
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-87, 1987-03
被引用文献数
1

われわれは、大震時避難計画のための情報システムとして、浜田らの経験的な延焼速度式に基礎を置く火災の延焼シミュレーション・システムの開発を行ってきた。このシステムは、メッシュ型の視覚的なシミュレーションであり、同時出火を取り扱うことができる。本論文では、このシステムの計画情報システムとしての検証を行っている。まず第一に、その実火災に対する再現性の検討を行い、福光大火の場合にも、酒田大火の場合にも、延焼の形状、延焼の速度ともに比較的良好な再現在を示すことを明らかにしている。第二に、本システムの出力を規定している要因の影響について検討している。要因としては、WD(風向)、WV(風速)、R(建ペイ率)。P(本造建物混成比)、β(防火木造率)、およびM(メッシュ・マップ)の6個とし、それぞれに2水準を設定し、直交表L_<16>(2^<15>)によるシミュレーション実験を実施し、分散分析を行っている。そして、木造建物混成比が最も重要な要因で、その寄与率は48。5%で、第二にはメッシュ・マップがきて、その寄与率は41。6%となっていること、風速は第三位の要因で、6。1%の寄与率をもつが、しかし、5%の水準でのみ有意となっていること、風向、建ペイ率、防火木造率は、5%水準でも有意とはなっていないことを明らかにしている。
著者
田村 隆善
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.101-113, 1987-03

性能の異なるm台の機械の段取りを1人の作業者が担当しているシステムにおいて、段取りの優先規則を操作して実現できる最大生産率の領域が、どのような性質を持つかについて検討する。最大生産率は、一部もしくは全ての機械でのジョブの待ち行列長さが無限のときのジョブのアウトプット・レイトと考えられるが、ここでは特に、全ての機械での待ち行列長さが無限のときに限定して解析を行う。この場合の生産率は、機械毎に故障率と修理率の異なる故障・修理モデルにおける単位時間当たり修理回数と見なすことができる。ここでは、加工時間と段取り時間は各々独立な指数分布で、それらは機械毎に異なった平均を持ち、割り込み優先は認めないと仮定される。本稿の主な目的は、優先規則を操作して実現できる生産率の領域が生産率ベクトル空間上の凸多面体となり、その頂点が確定的規則によるときの生産率からなること、ならびにその稜線が隣接した確定的規則を用いたときの生産率を結ぶ線分によって構成されること、を示すことである。
著者
河原 靖
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-98, 1982-06

ある市場において、競合する2つの会社が製品の広告を実施するにあたり、広告計画期問(たとえば1年)中の各期(たとえば各月)にどのように広告予算を配分するかの問題を2人零和ゲームとして取扱い、その解を求めた。ところで、ある期に配分された広告費の効果は、その期のみにあらわれるのではなく、その期が過ぎた後の期にも存続する。いわゆる繰越効果が存在するので、上の問題を解く際にこの効果を考慮に入れた。ただし、繰越効果の型としては次のようなものに限定した。すなわち、ある期に配分された広告費の大きさをaとしたとき、その期よりk期経過後の繰越効果はar^k(0≦r≦1)の大きさの広告費の効果に相当する。
著者
川村 秀憲 大内 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.48-65, 2005-12
被引用文献数
6

本論文では, ネットワーク外部性の働く製品市場のモデル化とプレゼント戦略の評価を行う.エージェントベースモデルを用いることにより, 消費者間の相互作用ネットワークを明示的にモデルに取り込むことが可能である.本モデルは, 消費者間のネットワークの構造とネットワーク外部性の効果の関係について明らかにすることが出来る点に特徴がある.シミュレーションでは, 企業の視点に立つことにより, 競争が重要な意味を持つネットワーク外部性を有する製品の市場において, 企業が独立に操作可能なマーケティング変数であるプレゼント戦略を導入し, その有効性の検証を行う.実験結果より, ネットワークの構造と有効なプレゼント戦略には密接な関係があり, 同じ数のプレゼントを行っても構造に応じて効果的な戦略が存在することを示す.
著者
栗栖 忠
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.326-340, 1980-12

次のような射撃コンテストの問題を考える。m人のプレイヤー1、2、…、mがいて、各プレイヤーは一発づつ弾丸の入った銃を持っており、時刻0から1までの間に各自の標的をめがけて弾丸を発砲するものとする。プレイヤーiが時刻xで発砲した時、弾丸が標的に当たる確率はA_i(x)である。A_i(x)はプレイヤーiの精度関数と呼ばれ微分可能な増加関数でA_i(0)=0、A_i(1)=1を満たすものとする。各プレイヤーは全てのプレイヤーの精度関数を予め知っており、m人のプレイヤーのうちで最初に標的に当てたプレイヤーの利得を+1とし、他のプレイヤーの利得は0とする。このゲームでは各プレイヤーは精度がよくなるように発砲時刻をできるだけ遅らせようとするが、同時に他のプレイヤーが標的に当てるよりも先に発砲した方が有利であり、両者のバランスをとることが重要である。この問題は、連続型ゲームとして代表的な決闘ゲームの非零和m人ゲームヘの拡張になっており。行動を起すタイミングをどのようにとればよいかという現実に多く存在する状況をモデル化したものである。決闘ゲームと同様にこのゲームでも1人のプレイヤーが発砲したことが他のプレイヤーにわかるかわからないかが重要である。あるプレイヤーが発砲すれば直ちにこれが他のプレイヤーにわかる時、コンテストはnoisyであるといい、プレイヤーが発砲しても、他のどのプレイヤーもこれがわからない時、コンテストはsilentであるという。決闘ゲームについては既に種々の研究がある。又、射撃コンテストについてもm…2の場合およびmは一般でA_i(x)=xのsilentについては研究されている。本論文ではm=3のsilentコンテストについて考察する。一般の精度関数に対して各プレイヤーの均衡戦略と、均衡戦略による各プレイヤーの期待利得を求めた。均衡戦略の形はA_1(x)/A_2(x)A_3(x)、A_2(x)/A_1(x)、A_3(x)、A_3(x)/A_1(x)A_2(x)が単調減少であるか。あるいはこのうちの1つが単調増加であるかによって変化することがわかる。最後に、種々の精度関数に対して各プレイヤーの均衡戦略と期待利得を求め結果を例示した。
著者
山田 善靖 末吉 俊幸 杉山 学 貫名 忠好 牧野 智謙
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.381-397, 1995-12
被引用文献数
5

本論文は、日本的経営の為のDEA(Data Envelopment Analysis)法を提案する。提案の理由は、従来のDEAがアメリカ型の経営評価を基礎にしたものであり、その応用だけでは日本的経営評価の本質的特徴を表現しきれない点にある。より詳しく述べると、日本的経営評価の本質的特徴は、評価される事業体全体の相対的バランスを常に考慮に入れた評価を行うところにあると言われている。しかし、従来のDEAでは事業体の効率性評価をする場合、事業体全体との相対比較を効率性の高い事業体に対してのみ行っており、上記の様な日本的経営評価の特徴を含む評価を行うことはできない。そこで本論文は、この様な特徴を含む日本的経営にDEAをどの様にうまく組み入れて行くかを論じる。まずはじめに、日本とアメリカの経営体質の違いがDEA情報の使い方にどの様な影響を与えているかを考察する。その上で、日本的経営により合致したDEAの使い方を提案する。最後に、新しく提示されたDEA法を用いて政府の公共事業投資に関する効率性分析を行い、その実用性と有効性を示す。
著者
馬場 裕
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.12-32, 1983-03

集団到着や集団サービスの待ち行列は、今までに数多く研究されているが、そのほとんどは到着間隔分布があるいはサービス分布を指数分布としたものである。本論文では集団到着待ち行列PH^<〔x〕>/PH/1(ただし、到着集団のサイズは共通の確率分布{g_i}^<K>_<i=1>に従う)と集団サービス待ち行列モデルPH/PH^<〔Y〕>/1(ただしサーバーはK人一緒にサービスできるが、サービス終了後の待ち人数がK人未満ならば全員一緒にサービスする)について定常ベクトルや種々の特性量を得るアルゴリズムを提案する。記号PHはNeutsによって考えられた相型分布を表わす。相型分布は(O、∞)における確率分布のクラスの中で楯密であり、待ち行列理論でよく現われる重要な分布、例えば、指数分布、一般アーラン分布、超指数分布等を含んでいる。また相型分布は数値計算を行ううえでも扱いやすい。Neutsは無限次元確率行列のある重要なクラスが行列幾何的な定常ベクトルをもつことを示した。本論文で扱うモデルは待ち行列の状態遷移が連続時間マルコフ連鎖に従い、その無限小作用素の形は状態の組みかえによって行列幾何的な定常ベクトルをもつことが示される。この性質を用いて定常分布やそれから得られる種々の特性量、例えば、待ち行列長の平均、分散、平均待ち時間、待ち率等が得られる。これらの特性量は簡単な計算式で求められることが示される。またいくつかの数値例を示した。これらより集団待ち行列の種々の興味深い特性が得られた。