著者
田村 征洋 黒岩 祥太
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-19, 2009-12

2005年9月11日の衆議院総選挙における自民党圧勝の要因は何か.本論文では『人々にとって最も好ましい公共政策とは何か,その傾向はどのように有権者の政党支持や選挙に於ける投票に影響しているのか』を計量的に位置付けることを考え,政策に対する有権者意識に関する基礎的知見を得る為に,政策全般に対する有権者の選好傾向を調査・分析した.具体的には,政策全般へのコンジョイント分析を用いる.従来の5段階評価などは政党(全体)評価と個々の政策(個別)評価の関係を定量化することが困難であり,「軽い負担で手厚いサービス」という安直な結果に陥りやすい.現実は各政策を個別に評価(投票)するのではなく政党単位(政策の組合せ)で評価する.従って,全体評価から部分(要因)価値を定量化するコンジョイント分析は有効な手法であろう.結果は野党が掲げる理想的な政策(公共事業費の大幅な削減や消費税の現状維持,年金の一元化など)の効用値は高くなるものの政党単位で見た場合(各党の掲げる政策に近い水準を当てはめた場合)では有権者の政策に対する選好傾向にバラツキが生じ,今回の選挙結果を裏付ける有効な知見を得た.
著者
竹原 均
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.507-528, 2002 (Released:2017-06-27)
参考文献数
19

本研究ではダウンサイドリスクモデルのもとでの新たなマネージャー構造最適化モデルを提案する.論文ではまずWaring,Whitney,Pirone,Castilleにより提案されたモデルでの,収益率の正規性,マネージャー間の相関構造などの仮定が,実務上は不適切であることを株式投資信託の収益率を分析することにより示す.その上で既存のモデルでの問題点を解決するために,政策ポートフォリオからのショートフォールを考慮した最適化モデルと,リスク調整をダウンサイドリスクにより行う新しいパフォーマンス評価尺度を提案する.
著者
池田 欽一 時永 祥三
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.18-31, 1999 (Released:2017-06-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

本論文では, まずフラクタル性をもつ時系列のインパルス応答関数をスケール関数により近似的に展開した場合に, 時間軸方向にインパルス応答を伸長することにより予測が行える原理について説明し, 予測誤差などについて整理する. 次に, フラクタル性をもつ時系列について, フラクタル次元が未知である場合に, 時系列をウェーブレット変換係数から計算できる方法を整理する. これらを現実の株価時系列へと適用して, 株価予測誤差の検討, フラクタル性, その次元推定について述べる. 具体的な応用例として株価のオプション取引のシミュレーションをとりあげ, 本論文の予測手法とこれに基づくオプション戦略の有効性について示している.
著者
鳩山 由紀夫
出版者
The Operations Research Society of Japan
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.106-122, 1979 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
1 1

本論文はDerman(1963)によって導入されたマルコフ型劣化を伴なう機械の保全問題の拡張である。拡張は系が閉じたループをなしていること、取替でなく修理問題であること、及び複数の修理施設をもつことに見られる。即ち、系は、有限個の劣化の状態をもち劣化の進行がマルコフ鎖で記述される単一の稼動機械と、同一機能をもつ有限個の予備機械、及び修理の種類毎に異なる複数の修理施設とからなる。各時点において、稼動機械を修理すべきか否かを決定することが問題となるが、その決定の際に、稼動機械の劣化の程度、修理がなされるときに要求される修理の種類、更に各修理施設で修理中の機械の数が情報として与えられる。修理がなされるときには、機械は修理の種類に対応した修理施設に直わに送られ、修理が開始され、同時に予備機械の一つが新たに稼動を開始する。修理時間は修理施設に依存する幾何分布に従うものとし、修理後は新晶同様の状態に戻ると仮定する。予備機械の用意が間に合わないときには、一つの機械の修理が終了する迄稼動は休止せざるを得ず、この間ペナルティが課せられる。その他のコストとしては、作動費用、材料費及び労賃を考慮している。以上のモデルを設定し、割引率を考慮した総期待費用、乃至は平均期待費用を最小とする最適保全政策が如何なる形となるかを考察する。ここで、修理の種類を固定したとき、稼動機械の劣化がある限界を越えたときのみ修理を施し、又稼動機械の劣化の状態を固定したとき、修理の種類がある限界を越えないときのみ修理を施すという二次元のコントロールリミットポリシーを提案し、緩やかな条件の下で最適政策がこの形となることを示す。次にコスト等を一般化し、更に保全員が各修理施設に一人づつの場合にも同様の議論がなされることを確認し、最後に解法に触れている。
著者
藤重 悟
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.189-204, 1978
被引用文献数
1 30

G(V、A^*;V_1、V_2)を、点集合V、枝集合A^*、および、"入口"V_1(⊆V)、"出口"V_2(⊆7)をもつグラフとする。簡単のためV_1∩V_2:φとしておく。グラフGの各枝αには、その容量c(α)と単位流量当りの費用γ(a)とが付与されているとする。さらに、人ロV_1と出口V_2上に、それぞれ、ホリマトロイドP_1(V_1、ρ_1)、P_2(V_2、ρ_2)が定義されているとする。以上の諸量の定義されたグラフをネットワークNと呼ぶことにする。N上の"独立流れ"とは、各枝の容量条件を満たす入口V_1から出口V_2へのG上の流れであり、かつ、V_1への流入ベクトルがP_1の、V_2からの流出ベクトルがP_2の、それぞれ、独立ベクトルであるようなものである。ただし、V_1への流入ベクトルとは、各v^εV_1にvへの流入量を対応づけるベクトルである(流出ベクトルについても同様)。"独立流れ問題"とは、(1)N上の最大独立流れ(すなわち、V_1からV_2への最大流量をもつN上の独立流れ)を見出す問題、および、(2)N上の最大独立流れのうちで費用が最小であるものを見出す問題、のことである。本論文では、与えられた独立流れに関連して定義される補助ネットワークを用いて独立流れ問題を解く算法を提示する。プライマル・デュアルな形の算法は概略つぎのようである。N上のある独立流れから出発して、補助ネットワーク上の最短路を見出し、それに基づいて流れを変更し、流量が増加した新たな独立流れ(問題(2)の場合は同じ流量をもつ独立流れのうちで最小費用の独立流れ)を得る。さらに、得られた独立流れに関連する補助ネットワ-クを構成し、以上の手続きを繰返す。問題(2)に対しては、プライマルな形の算法も提示してある。これらの算法を導出する過程において、最大独立流れや最小費用の最大独立流れを特徴づけるいくつかの命題が、構成的に証明される。複数個の(ポリ)マトロイドが関係するような、今までに提起されている問題のうちの多くは、独立流れ問題として"自然な形で定式化される。ネットワーク流れ問題としての定式化が多くの組合せ的問題に対して有効であったのと同様に、独立流れ問題としての定式化が(ポリ)マトロイド的な組合せ的問題に対して有効である。なお、パラメタc(a)(a^εA*)、ρi(A)(A⊆V i;i=1、2)が可約な場合、本論文で提示した算法は有限回の操作の後に終了し解を与える。一般の独立流れ問題に対し本論文で提示した算法が有限回の操作の後に終了するか否かの問題、有限回で終了するとすればその手間の評価の問題、などは今後に残された課題である。
著者
関口 恭毅
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.67-94, 1981

組合せ最適化問題を解くための代表的手法として、分岐一界値法(Branc-and-Bound Method)、動的計画法、後戻り法(Backtrack Programming)などがあげられる。しかし、これらは、解法というよりは解法開発のための接近法とでも言うのが適当で、具体的な問題に応じた効果的解法を学習しておこうとすると極めて多数のアルゴリズムを習わねばならない。一方で、各接近法の原理だけを学習しても実用的な価値が乏しいという事情がある。しかも、NP完全性の検討によって、このような事態が暫定的たものとは考え難いことが強く示唆されている。この困難を打開する一方策として、原理的解法を問題に応じて具体化する技術を体系化すること、具体的には、各種接近法を包括する統一的枠組を確立し、その特定化の内容と得られる具体的アルゴリズムの効率の関係を明らかにすることが有効と考えられる。そこで本報告では、上記3つの接近法をはじめ、完全列挙法、解析解(例えば、フローショップ問題のジョンソン規則)、整数線形計画の切除平面法などをも含む"木型計画法"なる統一的枠組を提案し、その正当性一有限性と正確性(求められる解の良さ)一の分析を行った。木型計画法は選択則(列挙の順番を定める規則)、分岐則(問題をより易しい問題に分解する規則)、上界関数(列挙の各時点での最善解を判定するための道具)、廃棄則(最善解より良い解を持たない部分問題を発見しその後の列挙の対象からはずす規則)ならびに終了条件の5つの基本要素から構成される。列挙の対象が無限集合であっても良いこと列挙に重複が許されること、廃棄則の定義が包括的であることなどが、この枠組の特色と言える。正当性の分析は最も一般性の高い場合に対して行い、有限性と正確性のための十分条件を明らかにした。結果は、有限性については選択則と分岐則が、正確性については終了条件が支配的要因であることを示している。さらに、完全列挙法、分岐一界値法、動的計画法、加算的陰伏的列挙法および切除平面法を木型計画法として完式化しなおし、提案した枠組の汎用性を例示した。
著者
加藤 直樹 安達 彰裕
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.390-406, 1989-09
被引用文献数
1

本論文ではスポーツの団体戦における勝敗決定方法として採用されている勝ち抜き戦及ぴせんめつ戦においてチームの勝利確率が選手の出場順序に依存しないための必要十分条件をある種の確率モデルの下で導く。本論文では選手1と選手2が引き分けの無い試合を行うとき、1と2それぞれが固有の「強さ」を表す非負の実数aとb(少なくとも一方は零でない)を持ち、1が2に勝つ確率がp(a、b)で与えられるものとする。この仮定の下でAチームとBチームが勝ち抜き戦またはせんめつ戦によって団体戦を行うとき、AチームがBチームに勝つ確率が、Aチーム及びBチームの選手の出場順序によらず一定であるための必要十分条件を示す。そして、その必要十分条件の下では、勝ち抜き戦で勝つ確率はせんめつ戦で勝つ確率と等しいことを示す。さらに、従来スポーツの勝敗の確率モデルとしてよく用いられてきたBradley-Terryモデル(すなわちp(a、b)=a/(a+b))はこの必要十分条件を満たすことを示す。最後に、関数p(a、b)に関するゆるい仮定の下で、その必要十分条件を満たすのは、p(a、b)=f(a)/(f(a)+f(b))に限ることを示す。ここでf(a)はf(0)=0を満たす任意の単調増加関数である。
著者
田畑 吉雄
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.169-184, 1979
被引用文献数
1

取替問題において定期的取替またはブロック取替と呼ばれる政策は、使用中の部品を偶発故障時点および一定期間毎で計画取替する方式であり、部品の使用時間を記録しておく必要がないため、しばしば採用される。ところが、計画取替時点直前に故障した部品を新品に取替ると損失が大きいため、遊休損失を覚悟の上で放置しておく方式が考えられる。この放置期間をアイドル・タイムと呼ぶ。本論文では、アイドル・タイムを考慮し、偶発故障に対しては修理を施すことが可能とする。ある時点で偶発故障が生じた時、総期待費用を最小にするためには。その部品を修理すべきか、または放置しておくべきかを動的計画法を用いて決定する。その結果、計画取替時点までの残り時間と、部品の使用年令とに依存する両決定の境界が誘導される。すなわち、修理とアイドル・タイムを考慮すれば、定期的取替政策の利点である「部品の使用時間の記録不要」が消滅していることがわかる。最後に幾つかの数値例が与えられる。
著者
Konno Hiroshi Inori Michimori
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-158, 1989
被引用文献数
4 64

A variety of bond portfolio optimization problems of institutional investors are formulated as linear and/or bilinear fractional programming problems and algorithms to solve this class of problems are discussed. Our objective is to optimize certain index of returns subject to constraints on such factors as the amount of cash flow, average maturity and average risk, etc. The resulting objective functions and constraints are either linear, bilinear or bilinear fractional functions. T. he authors devised a special purpose algorithm for obtaining a local optimal solution of this nonconvex optimization problem containing more than 200 variables. Though it need not generate a global optimum, it is efficient enough to meet users' requirement.
著者
黒川 泰亨 中村 健二郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.259-272, 1977-12

The forest production greatly relies on nature and variations of the natural conditions related to the production are not small. Then, because of the long production time span, it is necessary to concider the forest management planning as a planning under uncertainty. The purpose of this paper is to present a forest management planning by coordinating the uncertainty and the efficiency of forest production. The theory of stochastic programming is applied. The forest management planning consists of two phases: One is long term and the other is short term. This paper is concerned with the long term planning such as from 60 to 80 years. This planning is how to derive the present forest condition to the objective forest condition and this is one of the most basic requirements in forest management planning. In this paper, the objective forest stand condition is the normal age-class arrangement. A planning method applied here is to minimize the variance of forest yield volume under the condition of keeping its expectation arbitrarily fixed, and the other planning method adopts one of the von Neumann-Morgenstern utility functions. They are formulated as a quadratic programming problem. The methods are applied to a real forest management planning and the unique optimal plan is provided for this case. Our models will be significant in the planning at the divisional forest-office in the national forest.
著者
石川 真 中村 健二郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.225-232, 1979-09

Nは任意のプレィヤーの集合、Ωは任意の選択対象の集合、各プレィヤーiはΩ上の選択対象に好ましさの順位(序数的選好順序)P^iをもつと仮定し、かかるP^i全体をDとがき、NからDへの関数をP^Nとかく。なお、本論文では選出公理を仮定する。いま、Nの部分集合(提携)からなる族Wを与え、Wに一属す提携を勝利提携という。勝利提携はΩの任意の選択対象を決定するパワーをもち、それゆえこのゲームは一般化された多数決ゲームとみなされる。かかるゲームを(序数的選好順序を前提とする)単純ゲームとよび、コア等の解の概念が定義される。中村は、この単純ゲームにおいて、PNがあらゆるパターンをとる時、コアが存在する必要条件は拒否権をもつプレィヤー存在するか、または、このゲームに固有に定まる濃度がΩの濃度より大きいことを証明した。なお、Ωが有限の時、この条件は十分でもある。この定理により、社会選択論における一般可能性定理および種々の拡張等が統一的に尊びかれる。本論文では。上記定理の証明が実質的には単純ゲームだけでなく、一般の特性関数ゲームについても同様の結果を尊びくことが明らかにされる。すなわち、vを提携Sに対し、Ωの部分集合を対応させる特性関数とし、特性関数ゲームG=(N、Ω、v)を考える。選択対象xがv(S)に属す時、提携Sはxに対して有効といい、かかるS全体をE(x)とかく。いま、各xに対して、E(x)の中から任意に提携S(x)を選び、これらS(x)の共通部分がつねに空でない時、この性質を仮に完全交叉性とよぶ。この論文の主要定理は特性関数ゲームGが、PNがあらゆるバターンをとる時、コアをもつならば、Gは完全交叉性をみたすということで、Ωが有限ならば逆も成り立つということを述べている。この性質を単純ゲームにおいて述べれば、既に上述した結果が得られる。また、Nを有限とし、単調・対称ゲームについて述べればPolishchukの結果が得られる。
著者
Komei Fukuda Tamas Terlaky
出版者
The Operations Research Society of Japan
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-61, 1992 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
5 12

A combinatorial abstraction of the linear complementarity theory in the setting of oriented matroids was first considered by M.J. Todd. In this paper, we take a fresh look at this abstraction, and attempt to give a simple treatment of the combinatorial theory of linear complementarity. We obtain new theorems, proofs and algorithms in oriented matroids whose specializations to the linear case are also new. For this, the notion of sufficiency of square matrices, introduced by Cottle, Pang and Venkateswaran, is extended to oriented matroids. Then, we prove a sort of duality theorem for oriented matroids, which roughly states: exactly one of the primal and the dual system has a complementary solution if the associated oriented matroid satisfies "weak" sufficiency. We give two different proofs for this theorem, an elementary inductive proof and an algorithmic proof using the criss-cross method which solves one of the primal or dual problem by using surprisingly simple pivot rules (without any perturbation of the original problem).
著者
田口 東
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.232-242, 1994 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
1 3

東京への一極集中問題に対して、様々な観点からの議論がなされている。その中で、非常に高層のビルを建設して、単なるオフィスとして利用するのではなく、都市の機能も持たせようとする提案がある。このようなビルにおいては、普通の都市のように多くの人がその中で行き来することを想定しなければならない。この交通量は人口に対して2乗またはそれに近い形で増加する。このとき、上下方向の移動にはどうしてもエレベータ等の設備を使わなければならず、予想される交通量に応じた通路の面積を確保する必要がある。ビルの床面積は一定であるから、円滑に移動できるように通路を十分広く確保することと、人や機能をできるだけ多く収容することに対して、両者を満足させるような解答はありえない。本文ではこのようなビルに対して、必要となるエレベータの面積を与える単純なモデルを導く。モデルの解析の結果、ビルが大きくなるほど必要な通路の割合が大きくなり、通路以外に利用できる容積は床面積の平方根に比例して増えるものの、高さにはほとんどよらないということがわかった。このことは、ビル建設に対する投資が有効に生かされないことを意味している。
著者
山嵜 輝 猪原 健弘 中野 文平
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.286-301, 1999
参考文献数
7
被引用文献数
1

党派が形成されるような社会集団での投票による意思決定状況は, 従来, 協力ゲームの特別な形であるシンプルゲームで記述され, 社会選択へのゲーム理論的アプローチとして様々な研究がされてきた. 本論文では, 今まで考慮されてこなかった「意思決定主体の意見の柔軟性」を扱うために「投票者の許容範囲」という概念をシンプルゲームの枠組に導入し, また, 「意見調整ゲーム」や「敗因分析ゲーム」という, 投票状況の新たなモデルを用いることで, 「意思決定主体の意見の柔軟性」が意思決定に与える影響を調べる. 分析の結果, 1)従来のシンプルゲームを用いたモデルは, 本論文で提案する「意見調整ゲーム」の特別な形であること, 2)直接の投票では決定が得られない場面でも, 調整可能な意見が存在しうること, 3)複数の党派の意見の相違は十分な情報交換を行うことで解消できること, そして特に, 4)シンプルゲームの解概念として提案されているコアと決定案の間には「シンプルゲームのコアは各意思決定主体が後悔のない許容範囲を取ったときの安定した代替案の集合である」という関係が成立すること, が明らかになる.
著者
枇々木 規雄 尾木 研三 戸城 正浩
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.42-65, 2012
参考文献数
21

小企業向けの信用スコアリングモデルは主に財務指標から個別企業のデフォルト確率を推定する統計モデルである.デフォルトは固有ファクターだけではなく,すべての企業に共通するマクロファクターの影響も受ける.推定デフォルト確率(推定PD)と実績デフォルト率(実績DR)の一致精度を高めるにはマクロファクターを説明変数に加えることが望ましいが,デフォルトに関する時系列データの蓄積が不十分なため,回帰分析などによって具体的な指標を特定することが難しいという課題がある.一方で,2007年頃から始まった急速かつ大幅な景気悪化によって,実績DRが推定PDを上回る状況が続いており,マクロファクターを加味することの必要性が高まっている.そこで,本研究では日本政策金融公庫国民生活事業本部が保有する約54万件の豊富なデータを用いて時系列データの不足を補い,具体的な指標の選択を行った.その結果,マクロファクターとして前月デフォルト率が有効であり,前月デフォルト率を説明変数に追加した新モデルを構築すると,推定PDと実績DRとの乖離が最大で0.72%ポイント縮小するなど,推定PDの一致精度を改善することができた.
著者
安井 雄一郎 藤澤 克樹 笹島 啓史 後藤 和茂
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.58-83, 2011
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

最短路問題はネットワーク上の経路探索などの多くの応用を持ち,また他の最適化問題の子問題として用いられることも多く,適用範囲の広い組合せ最適化問題である.そのため最短路問題を高速に解くことの重要性は非常に大きくなってきている.最短路問題に対する解法としてはダイクストラ法などの安定的かつ効率的な高速アルゴリズムが存在するが,実問題は非常に大規模になるためさらなる高速化が不可欠である.そこで本論文では大規模最短路問題に対し,計算機のメモリ階層構造を考慮しつつ汎用的かつ効率的に高速化を行うための実装方法を示す.さらに論文中では計算機のメモリ階層構造における律速箇所の特定を行うための汎用的な解析方法を示し,高速化の有用性を検証していく.本手法により実装されたバイナリ・ヒープを適用したダイクストラ法は,実行性能,安定性,メモリ要求量などを他の実装と比較すると総合的に最も優れているといえる.また本実装を用いた大規模最短路問題に対するオンライン・ソルバーについても説明を行う.
著者
池上 敦子 森田 隼史 山口 拓真 菊地 丞 中山 利宏 大倉 元宏
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-24, 2008
参考文献数
41
被引用文献数
4 1

本研究では,運賃設定の異なる複数の鉄道会社を含む鉄道ネットワーク上の運賃計算を正確かつ高速に行えるネットワーク表現とアルゴリズムについて報告する.鉄道運賃は,利用者の乗車経路が明らかであるとき,多くの場合,その経路に含まれる各鉄道会社が定めた運賃を足し合わせることによって得られる.一方,利用者の乗車経路が明確でない場合,利用可能経路の中で最も安い経路を利用したとみなし,その運賃を採用することが一般的である.しかし,鉄道運賃は,基本的には「距離が長くなればなるほど高く」なるように設定されているものの,同じ距離でも,会社によって異なる料金が設定されていることや,乗車区間によって割引ルールや特別運賃が設定されていることなどから,物理的距離に基づくショーテストパスが最も安い経路になるわけではない.よって,与えられた2駅間の正しい運賃を計算するためには,その2駅間の可能経路の運賃をすべて,もしくは,その1部を列挙して比較判断する必要があることがこれまでにも報告されてきた.本研究では,物理的構造に基づくネットワーク上での経路探索を行う代わりに,ダイクストラ法が利用可能な運賃計算用ネットワークを構築し,ダイクストラ法と,少ないケースではあるがK-shortest paths問題用のアルゴリズムを利用することにより,複数社を含む鉄道ネットワーク運賃計算の大幅な高速化に成功した.
著者
Rei Yamamoto Norio Hibiki
出版者
日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.244-261, 2017-07-25 (Released:2017-07-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2

Pairs trading strategy has a history of at least 30 years in the stock market and is one of the most common trading strategies used today due to its understandability. Recently, Yamamoto and Hibiki [13] studied optimal pairs trading strategy using a new approach under actual fund management conditions, such as transaction costs, discrete rebalance intervals, finite investment horizons and so on. However, this approach cannot solve the problem of multiple pairs because this problem is formulated as a large scale simulation based non-continuous optimization problem. In this research, we formulate a model to solve an optimal pairs trading strategy problem using multiple pairs under actual fund management conditions. Furthermore, we propose a heuristic algorithm based on a derivative free optimization (DFO) method for solving this problem efficiently.
著者
Hiroshi Toyoizumi
出版者
日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.101-109, 2017-04-20 (Released:2017-05-02)
参考文献数
19

The particle survival model, which was originally proposed to analyze the dynamics of species' coexistence, has surprisingly found to be related to a non-homogeneous Poisson process. It is also well known that successive record values of independent and identically distributed sequences have the spatial distribution of such processes. In this paper, we show that the particle survival model and the record value process are indeed equivalent. Further, we study their application to determine the optimal strategy for placing selling orders on stock exchange limit order books. Our approach considers the limit orders as particles, and assumes that the other traders have zero intelligence.
著者
久我 清 永谷 裕昭
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.275-305, 1984-12

銀行・証券・郵貯をとりまく競争の激化と企業・家計側の金利選好意識の強まりは我国の金融環境を激変させずにはおかない。アメリカの金融革命においても高利回りの清算総合口座のMMFなどが焦点となったように、我国の金融新機軸の切り札は「総合口座」である。現在、総合口座は銀行・郵貯・農協・労金など凡ゆる金融機関で取扱われており、公共料金その他を清算する普通預金口座と定期預金を担保とする自動貸越契約を連動させるシステムとなっている。金融機関側は家計のメイン・バンク化というテーマから「総合口座」をセールス活動の橋頭窒としているが、翻って、家計側からすれば、このシステムをどのように利用するのが最適であるか。本論文ではこの問題が、銀行については通常の凹計画として郵貯については非凹な折れ線計画として、解き得ることを示し、その最適運用法と日常利用可能な簡易ルールを確立した。結論:普通預金残高の計画期間にわたる流れを正確に予想せずとも、計画期問の凡そ95%の日数が赤字残高になるように定期預金残高を設定するのが最適である。より簡便な方法は、毎月給与振込の3日後ぐらいでの残高がゼロとなればよい。この方法を月収30万円の家計が採用すれば、年凡そ6、000円程度の追加的利息を得る。仮に、全家計が最適運用を始めた場合、金融機関側の追加的総負担額は約6、000億円に昇る。