著者
西山 豊
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, 2019

2016年6月18日,広島大学附属三原中学の運動会で組体操の技である「騎馬」を実施していた同中学3年(当時)の男子生徒が小脳出血により,運動会の2日後の6月20日に死亡した。当該校では小学5年生~6年生は通常の騎馬(4人で構成,2段)を,中学1年生~3年生は「3段騎馬」(9人で構成,3段)を実施しているが,まとめて「騎馬」と呼んでいる。事故が起こったのは「3段騎馬」の方である。 2017年11月1日,男子生徒の遺族らは,広島大学に対して約九千万円の損害賠償を求め,広島地方裁判所尾道支部に提訴し,2018年9月現在裁判中である。原告は「騎馬」の崩落が原因で死亡したとしているが,被告は「騎馬」の崩落はなかったとして死亡との因果関係を否定している。ここでは,原告,被告の双方から独立して,科学的な検証を加えてみる。「3段騎馬」は「最下段起立ピラミッド」「肩上ピラミッド」「移動ピラミッド」などの名前で呼ばれているが,非常に危険な技であるので全国の小中学校では実施例がほとんどない。ここでは,当該騎馬の動画およびコマ送り画像を参考にして,3段騎馬の解体が正常に行われたかどうかを考察するとともに,最上段(H君)の膝が2段目(X君)の後頭部にあたったと仮定した場合の2つのケースについて衝撃度を計算した。
著者
黒坂 真
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.27-41, 2014-09

金日成はかつてスターリンとソ連,中国を礼賛していた。金日成の著作ではその後この部分が削除,修正されていった。本論はこの史実と金正日の「社会政治的生命体論」「革命的首領観」の関係およびその資源配分上の意味を考察する。金日成のチョサクの記述修正は金正日による何らかの決済を経てなされたと考えられる。映画や音楽に造詣のあった金正日は,金日成を首領とする「社会政治的生命体」の一員として首領と一体化しているという陶酔感に人々を浸らせることが独裁体制を強固にするために重要であると考えていた。金正日は「革命的首領観の確立」により,崇拝労働の効率を向上させようとした。モデル分析により崇拝労働結晶物の効率が向上すると,財の生産労働を減らし,崇拝労働を増やす場合があることがわかった。財の生産が減少すると,独裁体制を支える層の消費が減少し独裁体制の存続が困難になりうる。金正日による「贈り物政治」が困難になる。
著者
置塩 信雄
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-11, 1993-05-15
著者
三村 寛一 / 野中 耕次 / 安部 惠子
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.9-20, 2007-07-16

23~68歳の初マラソンに挑戦する一般市民ランナーを対象にホノルルマラソンレース中の心拍数変動、レース前後の体重ならびに自覚的疲労感を測定した。参加した38名全員が無事完走することができ、レースタイムの平均は男性が5.4±1.3時間、女性が5.7±0.7時間であった。レース中の心拍数は対象者により様々な変動を示した。また、体重は男女ともレース後に有意な減少が認められた。疲労自覚症状の訴え率はII群を除き、レース後に上昇することが認められた。以上により、マラソンは各自の適切なペースを維持することにより初心者でも完走することが可能であり、健康を維持するための適切な運動であることが明らかになった。
著者
吉川 富夫
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 = Journal of Osaka University of Economics (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.117-137, 2017-05

ミクロ経済学では市場取引のみならず,時間と所得の制約の中で効用を最大化するという疑似市場を想定しながら,人間の行動を解明することができる。本論は,戦後日本経済の大きな担い手であった,団塊の世代が人生の各局面(学歴社会,会社社会,家族形成社会など)でどのような価値観をもって,人生を選択してきたか,そして世代を超えて今を残そうとしているのかを,分析対象としたものである。ここで論理構成の礎としているのは,ミクロ経済学の前提であるが,もちろんそこには「情報の非対称性」とか「限定合理性」といった完全市場からのかい離要因が存在し,それが理論上の市場均衡(予想した人生の「帰属意識」)と結果としての市場成果(総括すべき人生の「帰属意識」)のかい離を生み出し,それがそれぞれの人の人生の自己評価に現れてきているという認識がある。新卒一括採用・長期雇用・年功賃金というパッケージが,日本的雇用慣行として日本経済の成長を支えてきたのであるが,今日,技術革新要因,人口要因,市場拡大要因の変化によって大きな転換を迫られている。こうしたなかで,団塊の世代という日本経済高度成長期の労働力の主たる担い手が,どのように人生を総括しているのかという社会現象を,ミクロの経済理論(労働経済学)を適用して解き明かしてみたい。