著者
藤井 広重
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.107-119, 2016-11-04 (Released:2020-03-12)
参考文献数
36

2011年にスーダンから独立した南スーダンは、2013年12月に政府側と反政府側との間で大規模な衝突を経験する。この衝突は、民族紛争の様相を呈し、政府および反政府の両者が、市民を巻き込む大規模な人権侵害に関与したと言われている。国際社会は、国際的な刑事裁判所の必要性を訴えるが、通常、政府の関与が疑われる中、人権侵害を捜査・訴追することを目的とした国際的な刑事司法のメカニズムを設置することは困難である。しかし、南スーダン政府は、2015年8月、南スーダンハイブリッド刑事法廷設置に言及した「南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書」に署名する。本稿ではハイブリッド刑事法廷をめぐる、国際社会と南スーダン政府のそれぞれの論理を紐解くことで、2015年8月合意文書にハイブリッド刑事法廷の設置が含まれ、アフリカ連合が同法廷の設置を主導していることの背景を明らかにする。
著者
飛内 悠子
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.5-17, 2023 (Released:2023-02-17)
参考文献数
15

クク人(Kuku)は南スーダン最南端、ウガンダとの国境地帯を故地とし、植民地化や内戦等、さまざまな要因により移住を繰り返してきた。とくにウガンダへの移住は1930年代から行われ、ウガンダ国籍を持つクク人も多い。本稿は2005年の第2次スーダン内戦終結後のウガンダからのスーダン(現南スーダン)人、とくにクク人の移住の実情を示し、彼らの移住史のなかにそれを位置づける。そして彼らにとって、第2次スーダン内戦終結後、国際機関とウガンダ政府の主導によりなされたウガンダから南スーダンへの「帰還」は、いかなる意味を持ったのかについて検討する。さらにそれをとおし、定住を前提として帰還支援を行うこと、ならびに「持続可能な帰還」を提唱することの問題を指摘する。
著者
網中 昭世
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.56-66, 2016-04-27 (Released:2020-03-12)
参考文献数
23

モザンビーク社会は2000年代を通じて高いマクロ経済成長率を記録する一方で、2008年、2010年、2012年には経済的困窮に対する都市部住民の不満が暴動という形で表出した。モザンビーク人の雇用が促進されず、貧困率の悪化を伴うような経済成長は「雇用なき成長」と非難されてきた。近年の暴動の主体は、経済成長を実感できぬ貧困層であった。彼らは野党の支持者となりうるだけに、FRELIMO政権は、貧困層に対して、いかに雇用を提供するかという課題を抱えている。本稿では、FRELIMO政権による雇用政策について次の3つの観点から考察を加える。第1に、近年の経済成長をもたらすことになった経済政策を振り返る。第2に、経済成長にも関わらず、雇用を通じた貧困状況の改善がなされない要因を探るため、経済活動人口の教育水準を確認し、低就学歴者層を対象とした政府の雇用政策に焦点をあてる。第3に、低就学歴者に対する雇用政策の実績と意義について検討する。