著者
山本 慶和 坂場 幸治 渡邉 眞一郎 通山 薫 大畑 雅彦 三島 清司 久保田 浩 西浦 明彦
出版者
Japanese Association of Medical Technologists
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.655-665, 2015

目的:血球形態標準化ワーキンググループ(WG)は日本臨床衛生検査技師会と日本検査血液学会において血液形態検査の標準化を協同で行う方針で結成された。血球形態標準化WGでは日本検査血液学会血球形態標準化小委員会より提唱された好中球系細胞の新分類基準に基づき,健常者を対象にノンパラメトリック法より得られた白血球目視分類の共用基準範囲を設定し,これを全国的に普及させる。方法:基準個体の除外基準は,「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案」(日本臨床検査標準化協議会;JCCLS)を用いた。健常対象者を医療施設における健康診断受診者または臨床検査部に勤務している職員とした。性および年齢が均等に分布するように考慮し936基準個体とし,対象年齢の範囲は18~67才とした。目視分類は認定血液検査技師またはその指導のもと血液検査を担当する技師が好中球系細胞の新分類基準に従い400倍の視野にて200個分類した。目視分類の対象項目は好中球桿状核球,好中球分葉核球,リンパ球,単球,好酸球,好塩基球とした。結果:基準個体値のCBC項目の分布はJCCLSの基準範囲と一致し,基準個体の妥当性を確認した。目視分類項目は性,年齢間差を認めなかった。パラメトリック法およびノンパラメトリック法による基準範囲は一致し,ノンパラメトリック法にて設定した。結論:日本全国で共用するための末梢血液の白血球目視分類の基準範囲を設定した。この基準範囲の普及のため日本臨床衛生検査技師会のネットワークを活用して全国的な普及を行う。
著者
北仲 博光 和知野 純一 荒川 宜親
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.479-485, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)
参考文献数
12

近年,カルバペネム耐性の腸内細菌科菌種(CRE)の存在が,日常の臨床現場において問題となっており,カルバペネム耐性の表現型に基づいたCREの分子機構の解明は極めて困難となりつつある.本研究では,カルバペネム非感性又はセフェム耐性を示すEscherichia coli 3株(NUBL-5310,NUBL-5317及びNUBL-9600),Klebsiella pneumoniae 2株(NUBL-5307及びNUBL-5309),Enterobacter aerogenes 1株(NUBL-5311)及びEnterobacter cloacae 1株(NUBL-7700)について,薬剤感受性の測定や阻害剤試験及びPCRを用いてβ-lactamaseの種類の特定を試みた.一部の株については,接合伝達実験,形質転換実験,クローニング,塩基配列の決定を行った.解析したE. cloacae NUBL-7700においては,PCRによりblaIMPとblaCTX-M-1型の保有が確認された.カルバペネムに低感受性もしくは耐性を示す残りの6菌株からは新規のカルバペネマーゼ遺伝子は検出されなかったが,blaCMYやblaDHA,blaCTX-M-型のβ-lactamase遺伝子が検出された.E. aerogenes NUBL-5311については,アミノフェニルボロン酸によりセフェム系抗菌薬の感受性が回復することやPCRによりプラスミド性のβ-lactamase遺伝子が検出されない事から染色体性のAmpC型β-lactamaseの産生量が増加していることが推測された.解析した残りの6株については,CMY-,DHA-あるいはCTX-M-型β-lactamaseの産生量の増加に特定の外膜蛋白質の減少または欠失が加わる事によりカルバペネムへの耐性度が上昇しているという可能性が考えられた.
著者
土手内 靖 尾崎 牧子 西山 記子 長谷部 淳 谷松 智子 西山 政孝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.60-65, 2015-01-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
7

Levofloxacin(LVFX)により激しい溶血性貧血を起こしたと推測される症例を経験したので報告する。症例は69歳男性。腹痛・発熱が1週間続くため近医を受診,腸間膜リンパ節炎と診断されLVFXが処方された。2日間内服したが症状の改善なく,当院に緊急入院となり,抗生剤をLVFXからCefmetazoleに切り替えた。入院3病日,嘔気,血圧低下,褐色尿および眼球黄染が出現,血液検査で著明な貧血(Hb 6.7 g/dL)と溶血所見を認めた。翌日にはHb 4.0 g/dLと貧血が進行し,直接抗グロブリン試験(direct anti globulin test:DAT),間接抗グロブリン試験(indirect anti globulin test:IAT)強陽性を呈したことより,自己免疫性溶血性貧血と診断された。その後赤血球濃厚液を4単位輸血,ステロイド剤を大量および漸減投与し,貧血は改善,自己抗体は急速に減弱し,IATは13病日に,DATは28病日に陰性化した。43病日に薬剤リンパ球刺激試験を施行したところ,LVFXに対し陽性であり,臨床経過と併せ,本例はLVFXによる薬剤性免疫性溶血性貧血(Drug-induced immune hemolytic anemia:DIIHA)と推測された。DIIHAは稀な疾患であるが抗生物質,降圧剤など身近な薬剤での報告があり,本例のように重症化することもあるため,注意が必要である。DAT陽性例に際しては患者の貧血,溶血の有無に留意し,薬剤が原因であることも念頭に置いた精査が重要である。
著者
大杉 千尋 村上 信司 渡辺 嗣信
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.730-736, 2014-11-25 (Released:2015-01-10)
参考文献数
11

単一クローン性免疫グロブリン(M蛋白)は,免疫生化学検査の測定結果に様々な影響を与えることが知られている.今回われわれは,AST測定時の反応タイムコースの異常から,患者血清とAST第1試薬が反応して混濁を生じた症例を見出した.その症例における混濁の原因はIgM-κ型M蛋白であることを証明した.さらに他8社のJapan Society of Clinical Chemistry(JSCC)標準化対応試薬で患者血清を測定したところ異常反応を生じなかった.そこで,試薬成分の緩衝液に着目し,3種類の緩衝液における様々な濃度での患者血清との反応性を確認した.その結果,本症例の異常反応は現行AST試薬の低イオン強度によるものであると考えられた.
著者
佐藤 英洋 内海 真紀 宮川 英子 山﨑 宏人 安江 静香 高見 昭良
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.22-26, 2015-01-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
12

急性白血病など血液がん患者の一部に血液型A・B抗原の発現低下が認められる。血液型亜型・キメラなどのA・B抗原の発現低下と鑑別するために,フローサイトメトリー(FCM)法でABH抗原に転換するオリゴ糖末端付近にあるI抗原発現動態を解析した。A・B抗原減弱を伴う血液疾患と非血液疾患の発現率と蛍光強度を統計学的に比較したところ,I抗原の発現率が血液疾患のみ有意に低下していた。よって,FCM法によるI抗原解析で,血液疾患によるA・B抗原発現低下と先天性の特殊血液型を鑑別できる可能性が高い。