著者
島崎 義孝
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.93-105, 2007

現代のわが国では,若い世代になるほど生と死との明確な見境が失われつつあるように見受けられる。自分たちの日常生活の周辺で,死に直接かかわる機会が減少しているからであろう。たしかに現代は若い世代の人たちも含めて,以前であれば誰しもが嫌でも経験せざるを得なかった生死の現実をいよいよ見ない社会に生きている。欧米社会はキリスト教の強い影響下で,伝統的に生死を明確に分けて捉える伝統の中に身をおいてきた。しかし,わが国では通俗的な生死の観念が色濃く作用し,仏教移入後も,むしろ仏教の教説をたくみに換骨奪胎させながら独自の,連続性をもった生死観を形成してきた。ありていにいえば死の世界の仮説や物語は実証方法がないため,あらゆる憶測や伝承,仮説が生き続け,それが巧妙かつ乱麻のごとく長年にわたって人々の観念の中に定着してしまっている。それが現代に至って,以前からある生死観を引きずりつつ,同時に現実の死の実感を希釈させてしまい,それらをない混ぜにした非連続性のある広汎な「生死感」のようなものが形成されつつあるようだ。しかしながら,それはいよいよあやふやな,かつ感覚的・無感動で底の浅い生と死の内容しかもたなくなってしまったのではないだろうか。
著者
緒方 巧 田中 静美 原田 ひとみ
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.53-62, 2002
被引用文献数
3

看護基礎教育において,背景の異なる学生集団を対象に基礎看護技術の習得レベルを一定の水準に向上させることを目的とした研究を行った。ジグソー学習法を用いた結果,「看護技術の習得度」が前年度のクラス平均よりも15.1点/100点満点と向上した。さらに,この学習法は,「責任感」,「主体的な学習行動」,「コミュニケーションによる人間関係の形成」など,看護師としての資質を高めることにも有効であることが認められた。
著者
近藤 元治
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.147-155, 2006
著者
荒井 光治
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-8, 2007

荒井らのガンマヒドロキシ酪酸の先のレポートは,タイトル,データその他の数ケ所で間違っていた。今回の報告は前回の訂正版である。ガンマヒドロキシ酪酸は薬理学的に重要で興味ある物質である。人脳脊髄液中のガンマヒドロキシ酪酸の存在は始めて荒井らが証明した。前回のレポートでは血清中のガンマヒドロキシ酪酸の存在について否定した。そして人脳脊髄液中のガンマヒドロキシ酪酸の濃度を間違って報告した。人血清中のガンマヒドロキシ酪酸の存在は著者のデータでは明確でない。しかし今日では血液中のガンマキドロキシ酪酸の存在が明らかにされている。今回の報告で人脳脊髄液中のガンマヒドロキシ酪酸の濃度は約6.22〜36.36nmol/mlと訂正した。
著者
西村 美里 大町 弥生 中山 由美
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.11-21, 2008

本研究の目的は, 臨地実習で認知症高齢者を受け持った看護学生がどのような感情を抱いたのかを明らかにすることである. そして, 認知症高齢者を受け持つ看護学生の指導や支援の一示唆を得ることである. 8名の看護学生に対して臨地実習で認知症高齢者を受け持った際に感じたことについてインタビューし, KJ法を用い分析した. その結果, 【予期しない言動にびっくりする】【思いが通じなく, もどかしい】【受け入れてもらえて嬉しい】【一緒にいることが楽しい】【ケアのポイントに気付けて, 充実感がある】【認知症高齢者は可哀想】の6カテゴリーが抽出された. 認知症高齢者に攻撃的発言や拒否反応を示され, 困惑しながら看護学生は感情のコントロールをしていた. そのような学生には, まず感情を表出・認知させるような関わりが教員には求められる. そして感情が生じた根源や, 高齢者の心身の状態について学生と共に考える時間を持つことが必要であると考えた.
著者
大島 永子 米村 真砂美 牟田 博行 松尾 康宏 増谷 瞳 豊田 有紀 蓑輪 咲子 長野 亜紀子 Eiko Ooshima Masami Yonemura Hiroyuki Muta Yasuhiro Matsuo Hitomi Masutani Yuki Toyota Sakiko Minowa Akiko Nagano わかくさ竜間リハビリテーション病院 わかくさ竜間リハビリテーション病院 介護老人保健施設竜間之郷 わかくさ竜間リハビリテーション病院 介護老人保健施設竜間之郷 わかくさ竜間リハビリテーション病院 わかくさ竜間リハビリテーション病院 わかくさ竜間リハビリテーション病院 Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital Geriatric Health Services Facility Tatumanosato Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital Geriatric Health Services Facility Tatumanosato Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital Wakakusa Tatuma Rihabilitation Hospital
雑誌
藍野学院紀要 = Bulletin of Aino Gakuin (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
no.14, 2001-03-31

当院では,2年前より入院患者の「訓練室でできる日常生活動作(以下,ADL)」と「病棟でしているADL」の差を最小限にすることを目標に作業療法士(以下,OTスタッフ)の病棟担当制を導入している。OTスタッフが「できるADL」と「しているADL」の差の原因を見極め,病棟職員(以下,病棟スタッフ)へ分かりやすく伝達し,患者の能力を把握し「できるADL」の能力を「しているADL」へ近づけることが重要であると考え,病棟業務内にスタッフとの情報交換の場を設けた。具体的には,食事と入浴時間に病棟内での訓練を設定し,病棟スタッフとの申し送り時間を設け情報の共有を実施した。OTスタッフと病棟スタッフが認識する患者のADL能力の差についてFIM (Functional Independence Measure)を用い検討した。その結果,「できるADL」と「しているADL」の差を近づけることができた。
著者
岸田 秀樹 足利 学 木下 泰子 江副 智子 飯田 英晴
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.119-130, 2007

自殺現象は複雑であり,自殺のタイプに対応した多様な自殺予防戦略が必要である。そこで本稿でわれわれは,まず自殺をめぐるジレンマに起因する自殺予防の困難性を確認する。第2に,自殺者の意志や動機に基づく定義の問題を示しつつ,行為とその痕跡に基づく定義の必要性をうったえる。第3に,我が国の自殺認定が行為論的定義に基づいて,個々の死因を分類していることを示す。第4に,行為論的定義に基づいた,デュルケームによる自殺の社会的タイプ,自己本位的自殺,集団本位的自殺,アノミー的自殺,宿命論的自殺に基づいて,自殺予防のための個人への介入の可能性を探求する。最後に,地域住民自身によるヘルスプロモーションに貢献するため,予防医学モデルに基づく精神医学による自殺予防と社会政策的な社会学的自殺予防を概観しつつ,われわれのうつ病についての啓発活動と地域社会に潜在する対自殺抵抗資源の発見を目指した地域研究に言及する。
著者
山科 百合子 柴田 真理子 小倉 寿美
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47-51, 2001

大阪市は日本一結核の罹患率の高い都市と言われている。ことに,日雇い労働者の多く集まるあいりん地区の結核罹患率は10万人あたり1,636.7と全国平均の47倍の高率である。その対策として,大阪市はあいりん地区の結核患者を対象に,継続治療のためDOTS(直接服薬確認による短期化学療法)を採用し,治療の中断を防ぐことにした。その結果,平成13年3月末日,DOTS療法を初めて行った22名のうち,平成13年9月末日にDOTS療法を完了した者は19名(86.4%)で,中断したものは3名(13.7%)であった。この値は,東京,川崎などとほぼ同じ数値であった。なお,これら22名のうち,過去に結核治療の中断歴のあるものは6例で,そのうちDOTSを中断したものは僅か1例にすぎず,残りの5例はDOTSを完了した。これらの事実から,DOTSが継続的な結核治療として有効なものであることがわかった。なお,DOTSの成功率の高い患者は,受診時に自分の経歴や,身の上話をしていく者が多く,このことはDOTSナースの存在がDOTS治療のために必要であることを示唆していた。