著者
杉本 篤信
雑誌
経営情報研究:摂南大学経営学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1・2, pp.1-12, 2021-02

本稿では、金融政策と財政政策の関係を中央銀行と政府の非協力ゲームと協力ゲームの解として考察した。その結果を1990年以降の日本の経済政策において、金融政策、財政政策がどのように実施されたのかを分析して、ゼロ金利政策以前は非協力ゲーム、それ以降は協力ゲームとして解釈できることが分かった。 In this paper, we consider the relationship between monetary policy and fiscal policy as solutions of non-cooperative games and cooperative games of the central bank and the government. We analyzed the results of how monetary and fiscal policies were implemented in Japan’s economic policy since 1990, and found that they could be interpreted as non-cooperative games before the zero interest rate policy and cooperative games after zero interest rate policy.
著者
北 真収
出版者
摂南大学経営学部
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.33-54, 2021-02

本研究では、縮小・衰退に向かう産業集積が再生へと舵を切るための布石をどのように打つべきかについて、社会心理学における集団の行動原理の観点を交えて考慮すべきシナリオを検討した。産業集積の衰退に対してソーシャル・キャピタルからみた視点と集団の行動原理を交差させて論理を組み立てた。つまり、情報入手の限界を社会的創造の側面、関係性の希薄化を互恵性の期待の側面から捉え直して議論を深めた。 結論として、衰退した産業集積が肯定的に意味づけられるときに、再生へ舵を切る行動が促進されるのではないかと推論した。それは次のシナリオに依る。先ず、自集団ひいきのリンケージ企業は多様な外部情報が入手できるネットワークを築く。そのとき、有志による学習のための非公式な共同体が生まれる。共同体では参加メンバーは協力的な行動を通じて衰退した集積を再評価する新たな競争 次元の開発に取り組む。集積を肯定的に意味づけるときにそのアイデンティティがメンバーを介して集積全体に波及する。In this study, we examined the scenario considerate from the perspective of group behavior theory in social psychology as to how the industrial agglomeration toward shrinking and declining should make the stepping stone to steer the revitalization. Logic was constructed by intersecting the viewpoint of social capital and group behavior theory against the declining industrial agglomerations. We tried to deepen the discussion from the aspect of social creation to the limitation of the collecting information and the aspect of expectation for reciprocity to the lack of relationships.In conclusion, it is inferred that when the declining industrial agglomerations are positively given meaning, the behavior to steer the revitalization will be promoted. It depends on the following scenario. The linkage companies leaning toward in-group favoritism build a network to obtain various outside information. Then an informal community for learning is created by volunteers. In the community, participating members work to develop a new competitive dimension to reassess the declining agglomerations through collaborative behaviors. When industrial agglomerations are positively given meaning, that identity will spread to the whole by members.
著者
牧野 幸志
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-11, 2006-07

本研究は,現役の高校生がどれだけソーシャル・サポートを得ているのかと高校生の精神的健康状態について調べ,大学生と比較した。また,高校生を含む青年期のソーシャル・サポートと精神的健康との関係を検討した。ソーシャル・サポートは実際にどの程度サポートを得ているかという機能的ソーシャル・サポートを用いた。精神的健康では,身体症状,不安と不眠,社会的活動障害,うつ状態の4つが用いられた。調査の結果,高校生は大学生と同程度のソーシャル・サポートを得ていた。また,高校生の精神的健康状態はいずれにおいても大学生と変わらず,健康な状態であった。さらに,高校生を含む青年期において,ソーシャル・サポートと社会的活動障害,うつ状態は負の関係がみられ,ソーシャル・サポートが高いほど,社会的活動障害とうつ状態が低いという傾向がみられた。すなわち,青年期におけるソーシャル・サポートは精神的健康の限定された部分に促進効果をもっていた。
著者
大田 住吉 佐々木 公之
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 = Journal of Business Administration and Information (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1・2, pp.19-42, 2018-02

バランス・スコアカード(Balanced Scorecard、以下「BSC」)は、1990 年代に米国で提唱された経営戦略策定ツールであり、現在、多くの企業・団体等で導入されている。しかし、技術開発型企業(とくに、中小・ベンチャー企業)のように、知的財産(以下、「知財」)を企業経営の中核に据える企業にとって、その生命線である知財をBSC の中にどう位置付けるかについては、これまで明確にされなかった。本研究では、技術開発型企業がBSC を策定する際、従来のBSC の4 つの視点に加え、新たに第5の視点として「知財の視点」を加える手法を提案した。技術開発型企業にとって、新たな「視点」を加えるメリットは何か、「知財の視点」を加味する場合としない場合で何が違うのか等について明らかにし、さらに実企業2 社の事例研究により、その有効性について検証した。その結果、技術開発型企業が本研究の提案手法による新しいBSC を活用することによって、①大企業等と実際にビジネス展開する際の戦略ポイント、②自社技術シーズと標的市場ニーズの関係性と強度、③保有知財のうち、権利化を目指すものと社内ノウハウにとどめるものの優先順位の見極め等において、いずれも有効性を示すことが明らかになった。
著者
福田 市朗
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.65-90, 2003-02

本論文は、規範的な意思決定モデルを代表する期待効用理論に対する心理学的な問題点を指摘し、記述的な意思決定モデルとしてカーネマンとタベスキィー(Kahneman & Tversky, 1979)が提示した「見込み理論(prospect theory)」の紹介とその意義について論じている。2つの理論は排他的な関係にあるものではなく、相補的な関係にある。ここで問われていることは意思決定における人々の思考作業の合理性である。規範モデルが批判する"非合理な(irrational)"な私達の意思決定は、状況に応じた価値体系の構成や不確かさに対する心理学的な態度特性を示し、それ自体の目的性を示している。私達の価値体系は決して固定的なものではなく、可変的である。心理学によれば、私達の決定は未完結で開かれた決定であることが多く、公理系によって限定された領域で求められている合理性から逸脱しやすいと考えられる。心理学が問題にする意思決定理論は人間の特性に基づいた理論であり、合理性を前提としている規範的モデルと異なる。選好の逆転やリスクに対する態度変容、決定における信念の主観的な重みづけなどは規範的なモデルの主張する合理性から逸脱しているが、その合目的性は否定できない。意思決定における心理学的なアプローチは規範的なモデルに対する合理性の再検討と私達の決定を導いている思考作業の解明を求めているのである。
著者
山本 圭三
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.35-51, 2013-09

本稿は、学生たちが抱く仕事に対する基本的な価値観を「職業的価値観」と定義し、それに関わる要因を明らかにするものである。具体的には、職業的価値観を地位志向、自律志向、社会的信頼志向、他者志向という4つからなるものととらえ、それぞれと一般的な価値観との関連や、それぞれを規定する要因について検討した。分析の結果、[1]職業的価値観はより根本的な価値観と深く関わっていること、[2]現在所属している集団での経験や関わりのある人の多さといった現在の生活のあり方によって規定されるものもあれば、家庭内での過去の経験
著者
川相 典雄
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.55-73, 2011-02

2003〜2007 年における主要大都市圏を取り巻く人口移動にはこれまでとは異なった様相がみられることを受けて、本稿では、関西圏、東京圏、名古屋圏の各大都市圏がこうした動きを示した背景・要因及びその差異や特徴を各種都市機能の集積状況や産業構造等の観点から考察した。その結果、1.東京圏では金融・国際・情報等の多様な高次都市機能が高度に集中し、名古屋圏では工業機能を中心に集積度が上昇している機能が多いのに対し、関西圏では各種都市機能の集積度は長期的に低下傾向が続いていること、2.2001〜2006 年の各大都市圏の雇用環境について、東京圏では産業構造要因と圏域特殊要因が、名古屋圏では圏域特殊要因がそれぞれ雇用成長を牽引しているのに対し、関西圏では圏域特殊要因が雇用成長を大きく抑制し、2000 年代に入っても大幅なマイナスの雇用成長率が続いていること、3.2001〜2006 年の各大都市圏中心部の雇用環境についても上記2.と同様の状況にあり、特に関西圏中心部では地域特殊要因の著しいマイナスの影響により、他の大都市圏中心部との間に大きな雇用吸収力格差がみられること、等が明らかとなった。こうした要因による各大都市圏間の雇用機会格差や雇用成長格差が、2003〜2007 年における関西圏の転入減・転出超過や東京圏・名古屋圏の高水準の転入超過等の人口移動動向に大きく影響していると考えられる。今後も関西圏が純移動数の改善傾向を継続していくためには、高度情報化やサービス経済化等の環境変化に対応した構造転換、圏域固有の地域資源を活用した特色あるリーディング産業の育成等によって圏域固有のマイナス要因を改善し、関西圏、特にその中心部の雇用吸収力を向上することが大きな課題となる。
著者
牧野 幸志
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-47, 2013-02

本研究の目的は,青年期におけるコミュニケーション・スキルと精神的健康との関係を調べることである。第1 に,同性友人,異性友人に対するコミュニケーション・スキル(以下,CS と表記)と孤独感との関連を検討する。次に,2 つのCS とソーシャル・サポートとの関連を検討する。さらに,2 つのCS と精神的健康との関連を検討する。調査参加者は大阪府内の私立大学(共学)に通う大学生160 名(男性103 名,女性57 名,平均年齢19.34 歳)であった。相関分析の結果,同性友人,異性友人に対するCS いずれも,孤独感と負の相関がみられた。CS が高い人ほど,孤独感は低かった。次に,同性友人,異性友人に対するCS はいずれも,ソーシャル・サポートと正の相関がみられた。特に,同性友人CS において,状況判断スキル,会話スキルとソーシャル・サポートに強い相関がみられた。CS が高い人ほどソーシャル・サポートを得ていた。さらに,同性友人CS の中で,会話スキルと葛藤解決スキルは精神的健康と負の相関がみられ,スキルが高いほど精神的健康状態が良好であった。異性友人CS においても,自己表現スキル,会話スキル,葛藤解決スキルが精神的健康と負の相関がみられ,スキルが高いほど精神的健康状態が良好であった。CSが高いほど,友人関係が良好となり,ソーシャル・サポートが得られやすくなり,精神的に健康であることが示唆された。
著者
小嶋 康生
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.69-97, 2000-02

バブル後、日本経済は恐慌状態に突入したが、中小企業への打撃が大きく、その影響は地方経済にも大きな傷跡を残した。なかでも中小工業の集積度の高い大阪経済は全国で最も事態は深刻である。小論は、いま、大阪の中小工業に何が起こっているか、その実態を究明するとともに先行きの展望を試みた。大阪経済は、袋小路にはいってしまっている。一つは循環的要因で、もう一つは構造的な要因によってである。"平成恐慌"の影響は大きい。バブル後この10年間、局面によって干満の潮の差はあるが、中小金融機関の破綻、相次いだ企業倒産、失業者の増加、地価・株価の急落、消費不振による"縮み現象"が続く。全国で大阪の数値が一番、厳しい。アジア貿易の比重が高いだけに大阪の失速は海外にも波及、アジア各国経済をも揺さぶった。この危機を脱するため政府の一連の緊急経済対策が幾度も出され、財政、金融両面において最大限の梃入れがあった。とりわけ金融再生を眼目にした制度改正の実施、そのなかで相次ぐ日銀特融、史上最低のゼロ金利、全都市銀行への国家資金注入など異例ともいえる措置が連発された。他方、毎年、巨額な赤字国債が組まれ、大型の財政出動が"財政危機"のなかで繰り返された。それら効果もあり、99年年初から潮の目は変わったとされるが、大阪経済は改善の兆候は99年夏現在まだ、でていない。最悪の状態は脱したとしても一本調子に反転、浮揚とはいかない。なぜか。海外市場要因もあるが、構造的な問題を抱えているからである。とりわけ、中小工業の経営者は先行き不透明感を抱く。それは、金融ビッグバンに代表される財界標準への制度移行が絡んでいるからである。自由化、規制緩和などにより、戦後続いた経営の枠組みが変更され、ビジネス環境は様変わりとなりつつある。その路線を、この機に、さらに推進せんとするのが、経済戦略会議の『日本経済再生への戦略』であり、産業競争力会議がまとめた「産業再生」関連法である。日本経済10年の足踏み、この遅れをどう取り戻すか。基本は規制緩和、自由化、国際化とする。この流れに棹さすのが、大企業の多国籍化、グローバルな展開である。それは世界的な潮流になりつつあるとはいえ中小企業にとっては敵対的路線である。バーゼル協約が銀行の貸し渋りを生み、企業倒産が相次いだ事例を見ても明らかである。このような状況の中で大阪の中小工業は二重、三重の負荷を背負わされる。一つは傾向的に進む円高による輸出不振。為替レートが大企業の貿易レートで決まっていることを見れば、その被害者といえる。二つ目は、大企業の工場の海外移転に伴う産業空洞化現象。三つめは"大競争時代"とはやし立てられているが、途上国からの製品流人、Uターン流入。要素資源格差で敗退を余儀なくされている。四つめは大企業の内製化が進んできており、発注減に。五つめには親会社の製品多角化についていくための技術的、資金的な困難である。このような難題が相次ぎ産地企業、下請け企業を問わず、倒産、廃業が急増している。間違いなく産地は崩壊、また下請け企業が集積したクラスターも瓦解寸前にある。この事態はいずれは大企業にも跳ね返り、このままでは大阪経済は縮小し、地域社会にも甚大な影響をもたらすであろう。方向転換が求められている。これまでの大企業追随のあり方を清算、オルタナティブな道の模索なくして、明日の中小工業はない。
著者
吉野 絹子 山岸 みどり
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.211-237, 1997-07

保有資源に格差のある社会で,個人目標,集団目標,社会全体の繁栄という3つの異なるレベルの目標連成にむけて,他者と交渉しあいながら,個人利益と集団目標の調整,集団間の競争と協力,個人利害と社会全体の福祉とのジレンマなどの問題に直面するSIMSOC(模擬社会ゲーム)を大学生に2事例実施し,援助や協力といった社会的態度の変化とゲーム展開の関連について検討した。ゲーム体験前,ゲーム体験直後,2ヶ月後の3時点で測定された社会的態度の変化のパターンは,ゲーム展開が友好的であったか敵対的であったかによって異なっていることが認められた。以前に実施された5事例を含めた分折からも同様の結果が得られた。
著者
堀井 千夏
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.13-24, 2011-02

大学教育において学生が習得する専門分野は,基礎から応用へとその範囲は幅広く設定されている.また,近年は,従来からある専門分野と他の分野を融合させた複合分野が増えるなど複雑な学問体系になっている.これらの点から,大学生が学部4年間で習得する専門分野の位置づけや関連性を適切に把握することは非常に困難であり,専門分野の知識を深める上で大きな障害となっている.こうした問題を解決するために本論文では,教育現場で利用されている教科書や参考書といった専門図書に着目して各専門分野を階層構造として可視化し,学生が学習領域を効果的に確認できる学習支援システムを提案する.本システムは,学習分野や未学習分野の関連性を目視で確認することができることから,学習への動機づけを強めることが期待される.
著者
有馬 善一
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.93-106, 2011-02

本研究の目標は、ハイデガーの芸術論を手がかりにしながら、芸術の本質、つまり、芸術とは何か(Was)という問いに対して、芸術作品はいかに(Wie)あるかという問いを対峙させ、さらにここから、芸術作品の創造とその享受を、単に比喩としてではなく、根源的な意味において「世界の開示」として捉える道を開くことである。そのために、『存在と時間』の世界論における被投性と気分の意義を再確認した上で、世界とは存在者の存在のあり方(Wie)として理解されるべきこと、進んで「芸術作品の起源」における芸術と世界との連関を明らかにした。芸術作品は、ある気分において世界を開示する。そして、それはまさに存在者のあり方を具体的に描出することによるのである。
著者
朱 紅 岩坪 加紋
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-45, 2010-11

現在、地域経済・社会にとって不可欠な存在としてNPO 法人の重要性が益々増大している。一方、NPO 法人も営利企業と同様にその設立や運営に資金が必要であるが、法人の特殊性や経済環境に起因する要因により資金調達環境は極めて厳しい。本研究では、NPO 法人の先行研究の調査・研究結果による現状認識とともに、資金調達難の原因を分析し、昨今注目されつつある中間支援組織の役割について論じた。その結果、課題は残るものの中間支援組織はNPO 法人の資金調達の問題を緩和しうる有効な組織と結論付けられる。