著者
山岸 みどり 小杉 素子 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.33-42, 1996-08-15 (Released:2016-12-06)
被引用文献数
2

A new method of detecting and controlling for acquiescence response biases in questionnaire studies was developed and applied to a cross-national survey data on trust collected by Yamagishi & Yamagishi (1994). Instead of including a set of balanced items or a large number of mutually unrelated questions as was common in conventional methods for assessing acquiesence, the proposed method uses multiple, mutually independent sets of items selected based on a principal component analysis. A relatively high correlation (r=.56) between two independent indices of acquiescence (obtained from two independent sets of items) suggests validity of the proposed method. No statistically significant differences in acquiescence were found between American and Japanese respondents suggesting that the results of Yamagishi & Yamagishi's results were not due to crossnational differences in acquiescence responses.
著者
MILLER Alan・S 山岸 俊男 大坪 庸介 山岸 みどり 大沼 進 ミラー アラン
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の主要な成果は、以下の4点にまとめられる。(1)信頼と社会的知性との関連について。囚人のジレンマ(PD)における他者の行動予測の正確さが、共感4因子のうちの、想像性因子とのみ関連しており、他の因子とはほとんど関連していないことが明らかにされた。PDで協力行動を取った人物の顔写真と、非協力行動を取った人物の顔写真の再認において、後者の写真の再認率が前者の写真の再認率を上回ることが明らかにされた。(2)集団所属性に基づく信頼について。集団所属性にもとづく内集団成員に対する信頼が、内集団成員に対するポジティブなステレオタイプによって支えられているのではなく、集団内部に一般的互酬性が存在するという直感的な集団理解により支えられていることが明らかにされた。(3)信頼関係形成プロセスにおけるリスクテイキングの役割について。信頼関係形成に際して、リスクの程度が外的環境により決定される状況と、リスクの程度を自分で決定できる状況とを比較することで、リスクテイキングのオプションが信頼関係の形成を促進することが明らかにされた。(4)情報の非対称性が存在する社会関係での信頼行動を支える評判システムの役割について。情報の非対称性が存在するインターネット・オークション市場を再現した実験を実施し、適切な評判システムが存在しない限りレモン市場化が確実に発生することが明らかにされた。更に、単純な評判システムではレモン市場問題の有効な解決をもたらされないことが確認され、適切な評判システムを支える条件についての示唆が得られた。これらの研究成果は、リスクテイキングを中核とする信頼行動を生み出す心理的プロセスと、社会制度の両面から、信頼社会形成のための条件を明確にしている。
著者
山岸 俊男 山岸 みどり 高橋 伸幸 林 直保子 渡部 幹
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-34, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
10 12

人間性の善良さに対する信念として定義される, 他者一般に対する信頼である一般的信頼と, コミットメント関係にある特定の相手が, その関係の中で自分に対して不利な行動を取らないだろうという期待として定義される個別的信頼との間で, 理論的区別が行われた。社会的不確実性に直面した場合, 一般的信頼が低い人々は, そこでの不確実性を低減するためにコミットメント関係を形成する傾向が強いだろうという理論に基づき, 売手と買手との関係をシミュレートした実験を行った。実験の結果, 社会的不確実性と被験者の一般的信頼の水準が (a) 特定の売手と買手との間のコミットメント形成および (b) 個別的信頼に対して持つ効果についての, 以下の仮説が支持された。第1に, 社会的不確実性はコミットメント形成を促進した。第2に, コミットメント形成はパートナー間の個別的信頼を促進した。第3に, 上の2つの結果として, 社会的不確実性は集団内での個別的信頼の全体的水準を高める効果を持った。第4に, 人間性の善良さに対する信念として定義される一般的信頼は, コミットメント形成を妨げる効果を持った。ただし, 第2と第4の結果から予測される第5の仮説は支持されなかった。すなわち, 一般的信頼は個別的信頼を押し下げる効果は持たなかった。
著者
山岸 俊男 渡部 幹 林 直保子 高橋 伸幸 山岸 みどり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-216, 1996-03-30 (Released:2016-12-04)
被引用文献数
2

An experiment was conducted to test three hypotheses concerning effects of social uncertainty and general trust on commitment formation, hypotheses derived from Yamagishi & Yamagishi's (1994) theory of trust. First two hypotheses were supported, while the last one was not. First, increasing social uncertainty facilitated commitment formation. Second, low general trusters formed mutually committed relations more often than did high trusters. Finally, the prediction that the effect of general trust on commitment formation would be stronger in the high uncertainty condition than in the low uncertainty condition was not supported. Theoretical implications of these findings for the theory of trust advanced by Yamagishi and his associates are discussed.
著者
白川 友紀 鈴木 敏明 鴫野 英彦 佐藤 博志 長澤 武 武谷 峻一 加茂 直樹 山岸 みどり 夏目 達也 渡辺 公夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では各大学における教育目標、教育方針、アドミッションポリシーと中等教育の多様性の適合度を明らかにしたいと考え、入学者受入方針等に関する調査を行うとともに、AO入試の実施状況、オープンキャンパスにおける高校生に対する情報提供の現状と課題、専門高校および総合学科高校出身者の大学受入の現状、ならびに入学者の志望動機等に関するアンケート調査などを実施した。また、専門高校、総合学科高校、SSHと高大接続、総合的な学習と高大接続などの高校での学びの多様化と大学入試について研究会を開催し、話し合った。モデル化も行う予定であったが、この数年でAO入試実施大学が急激に増加し、そのアドミッションポリシーも新たに独白性を持ったものが増えており、今後さらに増加すると予想されるため、静的なモデルではあまり意味がないと考え現状分析を行った。今後、時代の変化に応じた新しい入試や大学進学を扱う、環境適応能力を表現できる動的なモデルを考える必要があると思う。アドミッションポリシー、入学試験や合格者への調査は本研究のメンバーによって大変精力的に行われ、大きな成果があったと考えている。一方、入学後ある程度の時間を経た学生や大学側の満足度のような指標の調査はあまり広く実施できなかった。複数の大学で共通のアンケート調査を実施して卒業研究評価を試み、幸い九州大学と筑波大学の2大学で実施した結果を平成18年度の入研協で報告できることとなったが、このような共同研究は大学間の調整の困難さだけでなく、アドミッションセンターと学部や学科との間の調整がかなり困難であるらしいことも分かった。海外調査はSARSの影響で平成16年度以降に行った。欧州の調査は行えなかったが本研究メンバーが他の研究費で行ったフィンランド等の調査結果について本研究のミーティングで知ることができた。本研究では米国、オーストラリア、中国、台湾の調査を行い、各国で入試の多様化が進んでいることが分かった。「理科離れ」について、理科教育を熱心に行っている教員や学芸員、SSHの教員との研究会を開催してAO入試との関連について話し合った。総合的な学習で理科が好きになる、総合的な学習の時間を減らして理科の時間を増やすべき、などの意見があった。しかし、私見であるが、実践されている授業内容に大きな違いは無いように思われ、また、理科離れは科学振興という社会の要請と生徒や学生の個人の幸福が結びついていないというところにも問題があると思われた。さらなる研究が必要である。本研究の成果は、平成15、16年度中間報告書とシンポジウム論文集ならびに成果報告書の4部に収録した。
著者
山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、高大連携の期待と現実のズレに注目し、日本における高大連携の事例を収集し、質的および数量的分析を行った。成功事例の特徴、実施体制やプログラム内容の実態などの分析結果から、「高大連携」を促進する要因と阻外する要因を明確にすることができた。日本の高大連携活動の大半は、高校と大学が対等に共通の問題の解決に取り組む「共働」ではなく、それぞれの必要に基づく「協力」関係であることが明らかになった。高大連携活動についての組織間関係論的な視点からの考察は、今後の日本の高大連携を有効に機能させるための組織・運営や環境条件など明らかにするために重要であることが示唆された。
著者
山岸 みどり 山岸 俊男 結城 雅樹 山岸 俊男 大沼 進 山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、まず第1に、インターネットを通した国際共同実験システムを構築し、そして第2に、そのシステムを用いた国際比較実験を実施する中で、現在予想される困難への対処法を関発すると同時に、予め予想困難な新たな問題の所在を明らかにすることにある。この目的を達成するために、平成11年度には、実験システムの基本プラットフォームの作成に向けた作業が進められ、基本プラットフォームの原型版が作成された。平成12年度には、この基本プラットフォーム上で実行する国際比較社会実験の具体的計画を進め、いくつかの実験が試験的に実施された。まず、時差の少ない日本とオーストラリア間で最初の実験が実施され、インターネットを通しての同時参加型実験の実施に伴う多くの困難な問題の存在が明らかにされた。最も困難な問題は、インターネットを通したコミュニケーションの不安定性に関する問題であり、瞬時の反応を必要とする同時参加型実験の実施に際しては様々な工夫が必要となることが明らかとなった。今回の実験は瞬時の反応を必要としないため、実験はそのまま実施されたが、コミュニケーションの安定性を増すためのいくつかのプログラミング上の工夫・改良が進められた。またオーストラリア側の研究グループがプログラミングに関するサポートを十分に有していないためにいくつかの問題が生じたが、日本側のグループが現地に出向くことで問題は解決された。今後国際共同実験システムを拡張するに際して、現地でのプログラミングサポートの体制を作っておく必要があることが明らかとなった。この点は今後の課題である。平成13年度には、アメリカのコーネル大学との間で、瞬時の反応を必要とする共同参加型の実験が実施され、複数の研究室を結ぶ国際実験の完全実施が実現した。
著者
吉野 絹子 山岸 みどり
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.211-237, 1997-07

保有資源に格差のある社会で,個人目標,集団目標,社会全体の繁栄という3つの異なるレベルの目標連成にむけて,他者と交渉しあいながら,個人利益と集団目標の調整,集団間の競争と協力,個人利害と社会全体の福祉とのジレンマなどの問題に直面するSIMSOC(模擬社会ゲーム)を大学生に2事例実施し,援助や協力といった社会的態度の変化とゲーム展開の関連について検討した。ゲーム体験前,ゲーム体験直後,2ヶ月後の3時点で測定された社会的態度の変化のパターンは,ゲーム展開が友好的であったか敵対的であったかによって異なっていることが認められた。以前に実施された5事例を含めた分折からも同様の結果が得られた。
著者
山岸 俊男 渡部 幹 林 直保子 高橋 伸幸 山岸 みどり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-216, 1996
被引用文献数
2

An experiment was conducted to test three hypotheses concerning effects of social uncertainty and general trust on commitment formation, hypotheses derived from Yamagishi & Yamagishi's (1994) theory of trust. First two hypotheses were supported, while the last one was not. First, increasing social uncertainty facilitated commitment formation. Second, low general trusters formed mutually committed relations more often than did high trusters. Finally, the prediction that the effect of general trust on commitment formation would be stronger in the high uncertainty condition than in the low uncertainty condition was not supported. Theoretical implications of these findings for the theory of trust advanced by Yamagishi and his associates are discussed.
著者
山岸 俊男 山岸 みどり 高橋 伸幸 結城 雅樹 石井 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

実験室に設定された「実験社会」を用いて、関係の固定化による「安心」の提供が不可能な状況を作り出し、関係の固定化を媒介しない形での自発的な社会秩序の形成を可能とする原理を明らかにすることをめざした。そしてこの最終目的を達成するために、一連の実験研究を通して、まず第1に、機会主義的関係の信頼関係への変換に際してリスクテイキングが不可欠の役割を果たすこと、そして更に、この変換のために必要とされる社会関係的および社会制度的な条件を明らかにすることを明らかにした。具体的には、以下の諸点を明らかにした。◆信頼関係の形成に際してはリスクテイキングが重要な役割を果たす。◆信頼関係形成においては、信頼行動と協力行動とを切り離し、信頼に伴うリスクを最小限に抑えつつ協力行動をとる戦略が極めて有効である。◆情報非対称性が生み出すエージェンシー問題の解決に際して評判が果たす役割は、社会ないし市場の開放性・閉鎖性に応じて異なってくる。閉鎖的社会ではネガティブ評判が、開放的社会ではポジティブ評判が有効である。◆相互協力を達成するための集団内での非協力者に対する罰行動と、他集団の成員に対する罰行動は、異なる心理メカニズムに基づいている。◆1回限りの囚人のジレンマにおける協力行動の説明原理としての効用変換モデルの限界を克服するためには、ヒューリスティック・モデルが有効である。◆内集団成員に対する協力行動は、集団内部での一般交換に対する期待が欠かせない。この証拠は、最小条件集団においても国籍集団においても存在する。ただし、集団内で相互作用が存在する場合には、この期待は内集団成員に対する協力行動にとって必要ではない。◆集団主義的社会制度の経験は、集団主義的(ないし相互協調的)自己観と原因帰属(すなわち集団主義的信念システム)を顕在化する。