- 著者
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室津 史子
- 出版者
- 学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
- 雑誌
- 山陽論叢 (ISSN:13410350)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.133-143, 2009 (Released:2018-11-28)
核家族化した現代の育児において,父親の果たす役割は大きく父親への支援について考えることは母子保健分野において重要なことである。それは,母親が主体となる母乳育児においても同様と考える。そこで本研究では,母乳育児における母親と父親の意識について検討した。調査は,1歳6か月児健康診査に来所し,調査に協力の得られた287組を対象として,無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は、対象の属性と先行文献を参考に作成した母乳育児像についての31の質問項目である。母乳育児像については,母親・父親別に因子分析を行った。その結果,母親の母乳育児像においては,『母の満足・幸福』,『母乳育児志向』,『母乳育児の簡便さ・楽しさ』,『母乳の利点』,『母乳育児の方法』の5つの因子が抽出された。父親の母乳育児像においては,『母子を見守る満足』,『母乳育児志向』,『母乳の利点』,『母乳育児の簡便さ』,『妻の満足』,の5つの因子が抽出された。質問項目別に平均得点で比較すると,父親よりも母親の得点が高い項目が多かったが,母乳育児を支えることは夫のつとめであるという意識は母親よりも父親の方が高かった。母乳育児に対する母親と父親の意識は,共通するキーワードをふくみながら、異なる因子構造が示された。母親の意識が,実施者である自分自身と子どもとの相互作用に向くのに対して,父親の意識は,妻への思いやりや子どもへの利益といった拡がりをもつことが示唆された。