著者
山本 俊哉 持田 耕平 今井 剛 土師 岳 八重垣 英明 山口 正己 松田 長生 荻原 勲
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, 2003-03-01

17種類のマーカーを用いて,交雑育種で育成されたモモ9品種,枝変わり2品種,偶発実生由来5品種の合計16の日本のモモ栽培品種の親子鑑定を行った.交雑育種により育成された9品種では,すべてのSSR座において親の対立遺伝子が矛盾なく子供に伝達されていたことから,親子の関係が確認された.枝変わり品種の「暁星」は,原品種の「あかつき」と全く同じ遺伝子型を示したことから,枝変わりであることが示唆された.一方,枝変わり品種とされる「日川白鳳」では,原品種の「白鳳」と比較して,12ヶ所のSSR座で異なる遺伝子型を示した.このことから「日川白鳳」は「白鳳」の枝変わりではないことが明らかとなった.偶発実生由来と考えられている4品種「阿部白桃」,「川中島白桃」,「高陽白桃」,「清水白桃」では,各SSR座で推定親の「白桃」の対立遺伝子の一方を持っていた.これらの結果から,この4品種は,枝変わりではなく,「白桃」の子供であることが示唆された.以上のことから,SSRマーカーは,限られた遺伝資源に由来しているとされる日本の栽培モモ品種の親子鑑定に有効に利用することができた.
著者
石川 貴之 石坂 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, 2002-03-01

Alstroemeria ligtu L. hybrid(LH, 2n=2X=16), A. pelegrina L. var. rosea(PR, 2n=2X=16)およびそれらの雑種(2n=2X=16,3X=24,4X=32)について,花粉母細胞の染色体対合とギムザCバンドパターンを調査した.LHおよびPRの花粉母細胞減数分裂の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ0.04I+7.98IIと0.08I+7.96IIであった.花粉母細胞は正常に分裂し,それぞれ98.4%,94.9%と高い花粉稔性を示し,自家受粉により成熟種子を形成した.LH×PR(2n=16)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は低く,平均対合数は11.18I+2.41IIであった.この雑種では,花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,0.6%の低い花粉稔性を示し,自家受粉および両親種への戻し交雑により成熟種子を形成しなかった.一方,LH×PRの複二倍体(2n=32)の花粉母細胞の第一中期における二価染色体対合頻度は高く,平均対合数はO.82I+15.59IIであった.この複二倍体の花粉母細胞は正常に分裂し,86.3%と高い花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHとの正逆交雑により成熟種子が形成された.また,二基三倍体(2n=24, LH×複二倍体およびPR×複二倍体)の花粉母細胞の第一中期における染色体の平均対合数は,それぞれ8.24I+7.85II+0.02IIIと8.58I+7.66II+0.03IIIであった.これらは花粉母細胞の第一後期,第二後期および小胞子の一核期初期において,高頻度で染色体橋や小核が観察され,それぞれ14.8%と13.0%の花粉稔性を示した.自家受粉により成熟種子は形成されなかったが,LHにLH×複二倍体による二基三倍体を交雑した場合のみ成熟種子が形成された.ギムザCバンド法により,LHでは花粉母細胞減数分裂の第一中期の8本中7本の二価染色体,第一後期の8組中7組の染色体からCバンドが観察されたが,PRでは観察されなかった.これらのCバンドを有する染色体は,種間雑種,複二倍体および二基三倍体でも認められた.